Glass Beamsが、音楽で語りかけてくるから、僕はコミュニケーションを考えてみる。
台風のせいで振り回されている。
大学の講義は中止になり、バイトも無くなった。ここ数日の予定が一気にキャンセルされてしまった今、私は部屋の中で茫然と時間を持て余している。
ああ、暇だ。暇になってしまった自分がとても怖い。
高校生の時に担任から「忙しいことって幸せなことなんですよ」という言葉は、暇になって初めて実感できる。忙しい時はストレスフルでそんなことは信じられなかったけれど、やらなきゃいけないことの存在って大事なのかも。今になって、先生の言葉が理解できた気がします。
雨の日は調子が上がらない。映画でも観ようかと思うけれど、そんな体力はない。1時間くらい画面を見続ける集中力は台風に吸い取られてしまった。
読書でもしようかと思うけれど、活字を見続けられない。
これもきっと、台風のしわざなのか。
となると、音楽を流してぼーっとするに限る。あー、これこれ。
なんだか「休日」という感じがする。こういう時に聴くのは、ジャズやアンビエントなど、歌詞が少ない曲がほとんど。
ぼーっとしすぎて、誰にも見せられない。恥ずかしいくらいに、魂を抜いている。
ときどき、YouTubeのアルゴリズムを褒めちぎりたくなる。
「こんないい曲を、よくぞ私のおすすめに載せてくださった…!」
Men I Trustとか、L'Impératriceは、おすすめで流れてきたことで聴くようになった。
そして今日も、褒めちぎりたい。
「Glass Beamsに出会わせてくれて、ありがとぉぉ!!」と。
実を言うと、前々から名前だけは知っていたのだが、ちゃんと楽曲を聴いたことがなかった。この動画では、Glass Beamsが実際に演奏している様子を見ることができる。覆面の3ピースバンドというのも、惹かれる要素の一つになっている。
彼らはメルボルンを拠点としながらも、「東洋と西洋を融合した音楽」と言われる独特なサウンドを持っている。ビジュアル面でもアラビアンな雰囲気を纏い、彼らの姿をより艶立たせている。
そんな彼らの音楽は、独特な喋り方をするなぁというのが、聴いた後の率直な感想である。しかもその独特さは身に染み付いていて、彼らがいい味を出すための最高の材料になっている。
やっぱり音楽もコミュニケーションだよなぁ、と思うのである。
そう思うきっかけは、およそ2週間前にあった。
音大へ進学した中学の同級生がコンサートをすると連絡をくれたので、家族と聞きに行った。「さすが音大生だなぁ」と感じる一方で、少し物足りなさを感じる自分もいた。
綺麗な音が耳に届いているけれど、訴えかけるものが少ない気がしたのだ。
言葉でコミュニケーションをとるときに「よし、いい声で話をしよう」という目標を立てても、話の内容がなければ会話はなかなか続かない。話し手自身が何を言いたいのか、そしてそのためにいい声であることは重要なのかを考える必要があると思う。
もちろん、良い発声であれば聞きやすいだろう。
でも、相手の反応が微妙だと感じ取ったら、話のトピックや口調、表情など、何かしら変える必要があると思う。
これは、音楽を使ってコミュニケーションをとるときでも、同じだと思う。
「いい音で演奏しよう」と思うことは大切だ。しかし、演奏会には観客がいて、彼らは演奏者のメッセージを受け取ろうとする聞き手である。「その音で何を伝えたいのか」に対するアンサーを音で表現することが大事なのでは、と思うようになった。
その考えが頭の中で浮かんでいる状況で聴いたGlass Beamsは、とても面白い話し手に感じた。彼らが醸し出すアラビアンな雰囲気は、自分の知らない文化で、視覚と聴覚を使って丁寧に魅せてくれる。
彼らから感じ取るメッセージは人それぞれ違うと思う。
話している相手は何を伝えたいのだろうか?と、相手の世界に入ろうとする聞き手側の努力も必要だと思う。言語よりも曖昧な輪郭でしか捉えられないから、色々な解釈が生まれるのも音楽の醍醐味ではないだろうか。
最後に、Glass Beamsでも聴いてみようと思ったきっかけのアルバムを貼っておく。興味がある方はぜひ聴いてみてほしい。
彼らのサウンドは、何を伝えたいのだろうか。
この記事が、音楽の聴き方に少しでも刺激を与えられたら嬉しい。
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