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黄色に導かれて、老子を読む。

「黄色」と言われて、何を思い浮かべるだろうか。
この一文が浮かんだ数分後、「マジカルバナナかよ」とセルフツッコミした自分はなんて寂しい人間なのだろう。

バナナをはじめとした果物には、黄色が多い。ビタミンとか、身体に良さそうな黄色を纏っている。
夏の季節は、向日葵がよく目立つ。植物たちの彩りにも、黄色は一役買っている。

一方で、私が思い浮かべた黄色を書いておきたいと思う。
『ティファニーで朝食を』の冒頭に出てくるFordのタクシー。Yellow Magic Orchestra。あ、小学校の金管バンド部のTシャツは黄色だったな、など。

ちなみに、『ティファニーで朝食を』は1961年公開の映画。
Yellow Magic Orchestra (通称:YMO)は、1980年代に活躍した音楽家たち。
小学校の記憶は10年前くらいなので、上に挙げたものよりは新しいか。

どうしてこんなにも、最近のことに結びつかないのだろう。『ティファニーで朝食を』については数日前に観たばかりだから、最近のことと呼んでもいいだろうか…

そんな独特な連想ゲームにおいて、私の脳内に真っ先に現れたのはこの男だった。

香港のアクションスター、ブルース・リーである。
『死亡遊戯』の中で彼が着ていたのは、黄色のジャンプスーツだった。

彼のことを初めて知ったのは、小学2年生か3年生の頃だった。
そのころ空手を習っていた私に、父が『ドラゴンへの道』を観せてくれた。

そこから立て続けに『ドラゴン危機一髪』『ドラゴン怒りの鉄拳』『燃えよドラゴン』『死亡遊戯』とイッキ見した。
ブルース・リーは、間違いなく私のスターだった。

先日、テレビで香港の歴史を特集している番組を観た。
その中で久しぶりに彼を目にした。やっぱりかっこよかった。

この時ばかりは、何度か聞いたことのある言葉が少し違って聞こえた。

Empty your mind, be formless, shapeless, like water. 
Now you put water into a cup, it becomes the cup. 
You put water into a bottle, it becomes the bottle. 
You put it in a teapot, it becomes the teapot. 
Now water can flow, or it can crash. 
Be water, my friend. 
心を空にするんだ、型を捨てて、形も持たない、水みたいにね。
コップに水を注げば、コップの形になる。
ボトルに注げば、ボトルの形に。
ティーポットに注げば、ティーポットの形に。
水は自在に動けて、何かを壊すこともできる。
友よ、水になるのだ。

Bruce Lee - The "Lost" Interview より (訳は筆者)

彼はワシントン大学の哲学科で東洋思想を学び、その影響は彼の生き方や技術に大きく顕れている。大学で哲学を学ぶ私には、彼が違ったように見えた。
カンフースターは、先を行く哲学者として、改めて私の目指す人になった。

彼が影響を受けた思想家の1人として挙げられるのが、老子である。
「道」という概念を提唱し、道教の始祖としても知られる老子は、荘子や淮南子らに大きな影響を与えている。

道教、老荘思想を学んだら、ブルース・リーみたいになれるかな。
何かを始めるきっかけなんて、これくらいの程度でいいと思う。
大学の図書館で『老子』を借りて、読んでみることにした。

『老子』という書物は、すべての根源に在る「道」を通じて、自然思想や倫理思想だけでなく、政治思想、養生思想などについても説かれている。

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