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#読書感想文

『令和元年の人生ゲーム』を読んで考えたことなど

麻布競馬場さん著『令和元年の人生ゲーム』を読んでみました。今回は作品の内容そのものよりも、私が読んで考えたことについて書いてみます。 Z世代の苦悩がわかるという触れ込みだったので手に取ってみました。触れ込み通り現代の若者の悩みの一端は見えたかなという感じなのですが、それ以上に印象的だったのは、どの世代も抱える悩みや迷い、欲求の根本は変わっていないという点です。Z世代の苦悩も、時代や社会の変化に合わせて表面的なディテールが変わっているだけで、ベースとなる部分はそれより上の世代

2024年6月に読んだ本まとめ

今月は数は少ないものの、小説、タレント本、哲学者が書いた本、実用書とバランス良く読めたなぁという印象です。まぁ、バランス取る必要あるのか?という疑問もありますが、個人的にはあまり偏ると飽きてくるので、このぐらい雑多な方が良いなと思います。 浅倉 秋成著『家族解散まで千キロメートル』 以下にまとめました 永野著『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』 逆張りしがちなので、J-POP全盛の時代に私は洋楽ばかり聴いていた。 そんな青春を送って

2024年3月に読んだ本まとめ

3月は『ピアノマン 『BLUE GIANT』雪祈の物語』が印象に残りました。丁度BLUE GIANT本編の単行本でも雪祈が再登場した辺りでよいタイミングで読めたなぁと思います。また、橘玲氏の『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』は、シリコンバレーのテック企業をリードしている人たちがどういった信条や、パーソナリティを持っていることが多いのかというのをうかがい知ることができたので、興味深かったです。 読んだ本の数が少ないのは別に構わないのですが、就寝前の読書習慣が無く

『起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』の感想等

虚業と言われれば、私も虚業で糊口を凌いている。自分がものづくりをしていないからこそ思うのかもしれないが、日本のものづくりは素晴らしい。ただ、現代はこの本で虚業と呼ばれた情報を扱う企業にお金も人も集まる時代になっている。日本のものづくりは素晴らしい、それだけにその成功体験を忘れられず、虚業に軸足を移せずに国自体が儲けられない体質になっているのではないだろうか。 著者はリクルート事件こそが日本がものづくりから脱却できなかった原因だと書いていたが、個人的にはリクルート事件は、日本

賢さについて書かれた本を読んでみた2

『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』と言う本を読んでみました。 20代の頃に5年程ショッピングモールで警備員をしていたのですが、警備員って意外と暇なんですよね。特に平日の昼間なんかは駐車場からの出庫も少なくボーっとしている時間が結構あります。そういったときに私は色々と妄想して楽しんでいたのですが、そんな妄想の中でも一番時間がつぶせたのは頭の良さの定義を考えることだったりします。そんな経緯もあって、普通の人よりは頭が良いというのがどういうものなのかに興味

2023年下半期に読んで印象深かった小説をご紹介

下期は比較的文芸書をよく読んでいたので、印象深かった小説も多かったです。今年はタワマン文学が世間的にも私的にも話題になったなぁという印象です。上期に読んだ『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』もよかったんですけど、主人公を介してそういった人を観察する『君が手にするはずだった黄金について』も非常に良かった。もしかしたら都市部に住んでいるからこそ楽しめる文学なのかもしれないけど。そういった境遇にある人には一読の価値がある本だと思います。 同じ小川哲さんの『ユートロニカのこち

2023年下半期に読んで印象深かった本をご紹介

上期と比べると読んだ数がかなり減っているので、印象に残った本も少なかったです。残念。 22冊ほど読んで印象に残ったのが4冊なので1/5ですね。もうちょっと印象に残る本の率を増やせるといいなぁなどと思っています。まぁ、そのためには数をこなす必要があるんでしょうけどね。 橘 玲著『世界はなぜ地獄になるのか』 キャンセルカルチャーや、ネットの炎上の背景を紹介することによって、平穏な人生を歩む一助になることを目指して書かれた本(多分) インターネットによって誰でも発信できるよう

2023年12月に読んだ本まとめ

ちょっと早いのですが、年末進行なので今月読んだ本をまとめます。今月は『信長の原理』と、『光秀の定理』が印象深かったです。特に『信長の原理』は、主人公、信長の目線が学者のように一歩引いた感じで面白かったです。 文芸書垣根 涼介著『信長の原理 下』 原理を理解した信長がそれに溺れて本能寺の変が起こるというのが面白い。仕事が出来て権力があるだけでは、それぞれが子会社社長な武士の社会では、トップに立ち続けられないということなんだろうなぁ。 光秀がコトを起こさざるを得なかった織田家

2023年11月に読んだ本まとめ

今月は全然本読めてないなぁと思ったので、読んだ冊数をグラフ化してみました。 意外なことに当たりが多くてテンションの上がった先月の倍、今月は本を読んでいることが分かりました。時間は有限なので今以上に本を読むためには何かやっていることを削らなくてはなりません。ただ、時間の確保と同等かそれ以上に何を読むかってのも大事そうですね。今月は紹介しようと思えない本が多かった気がします。。。時間を増やすのは難しいので、事前に情報を集めて厳選してから読むことで質を上げる必要がありそうです。

小川哲著『君が手にするはずだった黄金について』を読んでの感想

表題作の『君が手にするはずだった黄金について』がかなり刺さりました。私にはなんやかんやあって神を自称するに至った同級生がいるのですが、そのなんやかんやにはこの話に出てきた片桐のように、自分の価値を外からの認識に頼り過ぎたというか、外に意識が向き過ぎていたことが関係してるんじゃないかと思ったりしています。 彼は、薬効の怪しい歯磨き粉を同級生に売りつけようとしたり、イカしたホテルライフ()をインスタに投稿したり、神を名乗ったりしていて、控えめにいって誤認で飯を食っているわけです

小川哲著『ユートロニカのこちら側』を読んで

ニートという生き方にも、向き不向きがあると私は感じています。私は比較的ニートに向いているので、社会に出てから特に理由もなく合計3年半ほど働かず、学ばず、何かを修めることもなく過ごしていたことがあります。 私は他人とコミュニケーションすることで疲れやすいタイプです。例えば、ある言葉に対して持っている概念が違うからそこからすり合わせするのは面倒くさいなぁと感じたり、この人の見ている世界ではそうなのであろうなと思って何も言えなくなったり、私の言い方が悪く伝わってないなぁとか、さっ

2023年9月に読んだ本まとめ

9月は何と言っても、17年振りに発売された百鬼夜行シリーズ新作『鵼の碑』が非常に印象に残りました。いやぁ、最高でしたよ。さらに、伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズの最新作『777 トリプルセブン』もエンタメしていてよかったです。10月には小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』が発刊されるので非常に楽しみです。 また、今週末で試験勉強にひと段落が付くので実用書や、人文書なんかも読んでいきたいところです。読書の秋なので。 文芸書京極 夏彦著『邪魅の雫』 陰摩羅鬼もそ

2023年7月に読んだ本まとめ

文芸書小川 哲著『ゲームの王国』 グロテスクな表現が多いですが、泥の戦闘後の解放よりも、どんどん処理されていく、ロベーブレソンの住民よりも、秘密警察による拷問の数々よりも、描かれている出来事の多くががルール設計によって起こっているってのがグロテスクだと思うわけですよ。私は。 記憶力が悪いからなのか、自分の記憶をあまり信用していないところがあります。反芻した記憶は勝手に改竄されてしまっているんでしょうし、実際のところ、反芻していない記憶はどんどん消えていってると感じています

2023年上半期に読んで印象深かった小説をご紹介

2023年上半期は19冊の小説を読みました、その中から特に印象深かった10冊をご紹介させていただきます。本半期は小川哲さんの作品と出会えたというのが良かったです。現在も『ゲームの王国』を読んでますが非常に興味深い作品です。 そんな関係もあり、最も印象に残っているのは『地図と拳』になります。電子書籍で読了したので、書店で見かけた際に分厚さにちょっと引きましたが、その分厚さだけの時間をかけて読む価値のある小説だと思いました。『ゲームの王国』でも感じていることですが、小川さん自身