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リグの上でのハードワークのお供に読書。「鋼鉄はいかに鍛えられたか」

もう少し若い時、洋上の掘削リグの現場と南国のオフィスを行き来しながら働いていた頃、リグの上で重要な作業が始まると3日間ぐらいベッドに入って寝ることができないことがありました。

そんな眠れないプレッシャーの中での楽しみの一つというか、気がまぎれる時間は食事と作業の合間の読書の時間です。

南国の社宅には、会社が購入してくれる日本の書籍のほかに、赴任者や出張者が帰国する際に置いて行ってくれた本がストックされていました。そこから何冊か見繕ってリグに持って行くのですが、結構手当たり次第適当に持っていくので、自分にとっての当たり外れもありました。

しかし、結局読むものがそれしかないので、現場作業がアクシデントや天候待機などで延びると、否応なく何度も読み込むことになります。

上の記事で書いた、ブルーノー・アーピッツさんの「裸で狼の群れの中に」も、ずいぶんと読み込み、励まされた一冊です。

荒俣 宏さんの「帝都物語」シリーズ。このシリーズも、もう飽きるほど繰り返し読む羽目になりました。でも何度読んでも面白かったです。

広瀬 隆さんの「赤い楯」。ロスチャイルド家がいかに世界に影響をあたえているか、膨大な資料と系図で説明されていて、読み解くのに根性がいりました。リグで読み込むのにぴったりの本でした。しかしいまだに読み解けたとは言えません。

そんなリグ上の読書で大変お世話になった本の一つに、ニコライ・オストロフスキーさんの自伝的小説「鋼鉄はいかに鍛えられか」があります。

読み込んだと言えばこの本以上にリグの上で読み込んだ本はほかにないかもしれません。

不屈の精神で困難に立ち向かう主人公コルチャーギンの姿に、リグで徹夜を繰り返していた私は、随分と励まされました。

ロシアの話ですし、ロシア革命、ソビエト建設の頃の話ですので、それだけで抵抗感のある方もいるかもしれませんが、この本を読む限り、革命前夜のロシアでは、人々は相当苦しい生活を強いられていたのだなと思います。

作者、オストロフスキーさんは32才でなくなりました。小説のコルチャーギン同様、ソビエト建設に重い病気を抱えながら強い精神力で取り組んだようですが、亡くなる前にはソ連の体制に批判的だったようです。

小説を読む限り、長く生きていれば、もしかしたら後のソ連の粛清を受けることになっていたのではないかと思われるような、とがった生き様だったではないかと想像してしまいます。

それにしても、その後のソ連や中国を見ても、それこそ資本主義国家をみても、権力が集中し、国民の目が行き届かなくなったりすれば、いつの間にか政府に対してものが言えなくなったり、簡単に民主主義は形骸化していってしまうのだなと思います。

作者のオストロフスキーさんは私が思うような社会を目指していたのかは分かりませんが、民主主義を守る「不屈の精神」を、小説のコルチャーギンから学びたいと思います。とても真似はできそうにありませんが。


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