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掘削現場での天候待機の過ごし方

わたしが洋上の掘削現場とオフィスを行き来しながら働いていたころ、現場の業務は不定期で、一度掘削リグに乗ると、長い時では4週間ぐらいリグに乗り続けることもありました。

一年のうちの1/3は掘削現場、1/3はオフィス勤務、1/3は代休や年休消化のため休みというような時期もありました。

会社のルール上、掘削現場には連続して最長4週間までしかいられなかったので、長くても4週に一度はオフィスに戻されるのですが、現場が忙しい時には1日か2日オフィスに通って、また4週間リグに乗るということもありました。

南国に赴任してきて、家族も帯同してきているのに、長い期間掘削現場に滞在しなければならなかったときには、まだ子供が小さかったこともあり、妻には大変苦労を掛けてしまいました。

掘削現場は、問題なく掘り続けていたりデータを取っているときには、とても忙しくて寝る暇もないぐらいなのですが、例えば天候不順で、安全のために現場作業が中断したり、サプライボートの運航が止まってしまって資材が現場に届かなかったりすると、天候待機となって現場作業が止まってしまうことがあります。

長い時には1週間ぐらい、私の現場での作業がなくなってしまい、しかも、いつ天候が回復するかわからないため、現場からも離れられないということも起こりました。

そのような天候待機のときの時間のつぶし方といえば、、、

まずは寝れるときには寝ることです。作業が始まるとまたいつ眠れるか分かりません。くたくたに疲れた体を休めるためにもまず寝ます。

しかし人間、それほど寝続けることはできず、一日以上天候待機が続くと、寝て時間をつぶすのにも限界が来ます。

わたしは現場に何冊か本を持っていくことが多いです。時間ができたときは持って行ったこの貴重な本を何回も読み直します。一度読んだ本を、今度は違う登場人物の気持ちになって読んで見るとか、視点を変えながら読み直します。

読み込んだ本の一冊に、ブルーノー・アーピッツさんが書いた「裸で狼の群れの中に」という小説があります。戦時中ドイツの強制収容所に紛れ込んだ小さな子供の命を、自分の命の危険も顧みず守ろうとする囚人たちの話です。わたしなんかよりもずっとずっと厳しい状況で、命がけで子供を守ろうとする囚人たちの勇気にずいぶん励まされました。

そしてそれでも時間が余ると、ヘリデッキをうろうろしたり、コンピューターでソリティアなどのゲームを飽きるほど繰り返したりしました。

天候待機は、長く続くと本当につらいです。

一度、南国国民の新人エンジニアたちを、指導のために現場に何人かまとめて連れて行ったことがあります。その時もたまたま約1週間の天候待機が起こってしまいました。

しかし、この時は、この新人エンジニアのために何問も演習問題を作っては解いてもらい、とても充実した時間を過ごせました。新人さんたちがいてくれて本当に助かりました。暇つぶしに演習問題を永遠とやらされた新人さんたちは気の毒でしたが。


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