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私の中でうずめくもの

2020年秋のこと。

分厚いセーターやトレーナー、靴下をスーツケースパンパンに詰め、颯爽と家を出た。

これから一ヶ月間、ちょいと実家を離れて働き、暮らしてみる。
場所は雪がたくさん降る地方にある旅館だ。

働くこと、親から離れ一人で遠出すること。
私にとっては全てが初めてだった。
だから、大丈夫な様子をきどりながらも、心の奥底でドキドキしていた。

"うまくやっていけるかな”
そんな何気ないことが私の頭を埋め尽くす。

バスと電車を乗り継ぎ、
緊張で凍りついた心をほぐしながら、
長い道のりを一人、静かに過ごした。

着いた頃には緊張は解けていた。
無事に着けてホッとする気持ちの方が大きかった。

初めに出迎えてくれたのは、背の低い小柄な女将さんだった。
親切に旅館を案内してくれる。
"ここで、一ヶ月働くのか"。
初めは実感が伴わなかった。
だが、少しして、
本当に働くのだと理解した時には、
本当に私に仕事が務まるのかという不安が溢れてきた。

だが、仕事が始まるとそんなものはどこかに行ってしまった。
初めてなりにできる限り全力で取り組んだ。
そのおかげで、仕事もスムーズにいった。

だが、ふと思うことがあった。

”楽しく働く”ということはどういうことなのだろう。

私は、ここで働かせてもらっていながら、
”お金”がどうしても先に来てしまっていたからだ。

当時の私の働くことへのイメージは、
ひたすら働くことが当たり前。
働かなきゃ生きていけない。
そんな観念的なイメージがこびりついていた。

でも、本当にひたすら働かないと生きていけないのだろうか。
私は何をしている時が楽しく働けるのか。
また、何のために時間を使っていきたいのだろうか。

少なくとも、
お金を得るためだけに働くことはやめたいと思った。
お金があって幸せな人もいれば、
お金がなくても幸せな人がいると思ったからだ。

でも、生活していくためには最低限のお金は必要。
じゃあ、それを私はどんなことをして作っていきたいだろうか。

これらは、”人生は何のためにあるか”という、
私の根源的な問いにつながるものでもある気がした。

露天風呂の中、一人。
満点の星空を見ながら考える。
これから続いていく未来に希望の眼差しを向けて。



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