肉塊の転生者9【短編小説】サクッとショートショート!
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これは歯だ。
しかもこの形状は人間の歯だと思う。
人間であったときの、舌で歯を触る感覚にすごく似ている。
他の動物の歯は見たことしかなく、触ったことはないが、やはり人間の歯だと思う。
そうなると目の前にある、美味しそうな物体は、人間の肉塊ということになる。
私は同種である人間に、たまらなく喰らいたいという感情に芽生えてしまったのだ。
自分が肉塊になったから、人間を喰らいたいと思ったのだろうか?
それとも私という人間は、もともと人間を喰らいたいと思っていたのだろうか?
いや、人間として生きていたときには、自分と同じ人間を喰らいたいなどと思ったことは一度もない。
確かにないはずだ……。
私がこんな肉塊の姿になったから、人間を喰らいたいと思っているのだ。
肉塊になったことにより、きっと思考も変わってしまったのだろう。
きっとそうだ。
人間でいたときの私は真っ当な人間のはずだ。
それに目の前の肉塊は、人間の歯はあるが、もう人間とは言えない姿になっている。
ただの肉の塊だ。
それを美味しそうと思うのは悪いことはない。
人間でいたときも、ミンチになった肉を食べていた。
それが牛・豚・鶏だとしても、ミンチになってしまえば元がなんだかは見た目では解りずらい。
たとえ人間のときに、狂った食肉店があり、ミンチにした人間の肉をミートボールとして売っていたら、何も知らない私は買っていたかもしれない。
それを食べて美味しいと思っていたかもしれない。
そうなのだ。
肉塊になってしまえば、元が何の生物かはわからない。
だから私が、目の前の美味しそうな物体の肉塊を、ヨダレが出るくらい喰らいたいということに、何の不思議もないのだ。
そう吹っ切れた私は、ますます目の前の美味しそうな肉塊を食べたくて我慢ができなくなっていた。
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