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肉塊の転生者10【短編小説】サクッとショートショート!

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私は窪みに入れた舌を、ちょうど肉塊の歯に引っかかるようにして自分の方へと引き寄せてみた。

すると肉塊が軽いのか、私の舌の力が強いのか、ほんの少しづつではあるが肉塊を私の方へと引き寄せることに成功した。

目の前の肉塊が私と同じような形状からすると、きっとかなりの重さはあるだろう。

そうなると後者の考え方のように、きっと私の舌は私と同等の大きさの肉塊をも引き寄せるだけの力を持っていることになる。

自分の舌の尋常ではない力に戸惑いながら、私は近づいてくる肉塊の誘惑に勝てなくなっていた。

肉塊が私の近くに近づけば近づくほど、醜いと思われる口からは、止めどなくヨダレが垂れてくる。

ネバネバと気持ちの悪いだろうヨダレが、まるで滝のように垂れているのだとすると何と私は醜悪な存在なのだろうか。

しかし、そんなことはどうでも良い、早く目の前の肉塊を頬張りたい。

私は近づいた肉塊を、舌で容赦なく自分の口の方へと近づけた。

体の上の方にある口まで、重たい肉塊を持ち上げるのはキツく、私の舌はさすがに限界がきているのか、プルプルと震えだした。

しかし、私の食への欲望は無限であるかのように、自分の力の限度など関係なく、ただただ目の前の肉塊を力任せに自分の口の方へと近づけた。

その距離は口まであと10センチというところまで来ていた。

私の肉塊となった体のいたるところから、汗のようで汗ではないような、唾液とは違った粘ついた液体がジワジワと溢れ出す感覚を感じる。

この液体は何だろうか?

そして、この生理現象は何だろうか?

人間でいるときは経験したことのない、困惑するような現象が私の肉塊の体から起き出した。

だがやはり、その奇妙な生理現象に私は戸惑いを見せているのだが、目の前の肉塊が愛しいほど早く喰らいたいと自分の中で懇願しているのがわかる。

私は更に舌への力を入れて、肉塊を自分の口まで到達させた。

その瞬間、私の口は私の意志とはまるで無関係かのように、目の前の肉塊にまるで血に飢えたハイエナのように喰らいついた。

上の歯と下の歯は、万力のように肉塊を締め付け、そしてギロチンのように勢いよく、肉塊を切り裂き引き千切った。

口の中には、元は人間であろう肉塊の、肉の一部が私の口に飛び込んだ。


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