見出し画像

「クリーニング店とわい たまにワイシャツのボタンが割れて帰ってきた店」最速でオシャレになる道をゆるゆると歩く方法

そのクリーニング店のオバちゃんは愛想が悪かった。

そのクリーニング店は一人暮らしを始めたときにたまたまみつけた店だった。
よくあることかもしれないが、「ワイシャツのクリーニングが安い!」というのが広告文句だった。

そこまで激安!というわけではなかったが、徒歩数分でいけるという個人的超好立地だったのが理由で、常連となった。
ただ毎度、クリーニングを受け付けるおばちゃんの愛想は悪かった。

おそらく家族経営で夫婦でやっていて、店番が妻の役目なのだろう。
数度だけ、男性の人に受付や引き渡しをしてもらったが、めっちゃ腰が低かった。

めっちゃ愛想が悪いのだが、まぁ特にクリーニング店にそこは求めていなかったので、そういうもんさと流していた。
ただ、たまーにワイシャツのボタンがバッキバキに割れて帰ってくるのが気になった。

経年劣化でクリーニングに耐えられなかったのか、とその時は思ったがあとあと考えるとプレスの仕方の問題なんだろう。

その当時はスーツ出勤でワイシャツを毎日着ていたので、毎週クリーニングにいっていた。毎度毎度、愛想が悪い。

ただ、ある時、いつも通り店にいって、ワイシャツを出して、会計をしているとそのおばちゃんが、話しかけてきた。

「今月でこの店を閉めるんですよ」

とのこと。え? と思って、話を聞くでもなしにおばちゃんは事情を語る。

どうやら、親の介護のためにこのお店を閉めなければならないらしい。
10数年店を続けてきて、夫婦共にいい歳だし、それも仕方ない、とのこと。

「お客さんには本当に店を開いた当時からずっと来ていただいて、本ありがとうございます」

と、涙ぐみながら、常連に配っているらしい、挨拶の新品のタオルを受け取った。

自分はどういっていいかわからなかったが、
「今月末までということなので、その間は使わせてもらいます」
といって、お店を出た。

奇しくも最後になり掛けで、笑顔で会話できた。

その帰りに道にふと思う。

わい、引っ越してきて数年だから、その客と絶対にちがうんだよな


最後まで読んでくれて thank you !です。感想つきでシェアをして頂けたら一番嬉しいです。Nazy