見出し画像

山と街(登山記録) 神戸・菊水山~摩耶山編

「人生は登山と同じだ」

世間でよく耳にするこの言葉、もしかしたら辛い教訓ではなく人生のヒントなのかも___

私は登山が好きです。ですがピークハントには興味が無く、横に横に稜線を辿っていく縦走、トラバースが好きなのです。

一つの山の頂点を目指すことよりも、山あり谷ありな道程を娯楽を交えて進んでいく方が自分の性に合っている気がします。

そんな登山観?を、抱く私が二年前から挑戦しているのが六甲山系全山縦走です。兵庫県神戸市から宝塚市まで公称56kmあるこの縦走路は、都会からのアクセスが抜群に良く、自分のレベルに合わせて無理なくチャレンジできるコースに恵まれており、老若男女を選ばない歩きやすさが定評です。

おまけに目印が多くて迷わない!2分の1にしてストイックにひたすら進むもよし、数回に分けて自然と岩場をゆっくり楽しむもよし、牧場のアイスや山荘のピザを目指して歩くもよしなバラエティーに富んだ縦走路なんです。毎年開かれる縦走大会にはなんと約4000人の登山者が集うのだとか!(公式より)六甲山系は関西人にとって都会のオアシスそのものなのです。

菊水山ー待ち望んだ春山

先日、そんな六甲山系は菊水山から摩耶山を縦走してきました。距離にしてだいたい18kmでしょうか?縦走初心者の私は全山を3回に分けて挑戦中で今回は第二弾。

早朝、雲から晴れ間がわずかに覗いているような、とても快晴とはいえない空模様でした。ですがここ最近の週末の天候の悪さを考えると文句なし、絶交の登山日和でした。登り初めも兼ねて清々しいスタートです。

朝8時、鈴蘭台駅から沿線を南下、登山口を目指して道なりに進みます。

画像1

登山口から少し高台に登っただけでベットタウンが一望できます。丘陵にひしめき合う人々の暮らし。その間を縫って走る神戸電鉄。物語を予感させるこの景色からスタートします。

画像28

天王吊り橋からの眺め。有馬街道です。

画像22

今回の登山の友は、健脚の遺伝子を受け継ぐわが妹。話が合う分友人と違ってかなり世の中のB面的(つまり我らしか興味のないことおもろいこと)トークを炸裂させるため、毎回一癖ある登山になるのです。

画像2

美しいツツジがお出迎え。森林に映えて何だか妖艶。

画像13

「蜜よう吸ってたなあ。」話題は昔実家に咲いていたツツジの花について。思い出話も花開きます。

画像22

全体的に山道はどこも綺麗に整備されていて、特に菊水山は街が近いこともあり、軽装でお散歩するご近所さんがどこからともなく出現します。犬の散歩や、コンビニついでの出で立ちの人まで。近所に「普段使いの山」があるなんて素敵ですね。

画像15

時には散っていく椿の侘しさにも触れます。こうして肌で季節を感じられるところが山歩きの楽しみ。待ち望んだ春山の風景に何度も足を止めては写真撮影します。登り初めということもあり気分上々、タイムロスもご愛嬌です。

画像22

画像23

新緑の青もみじよ、視力を上げてくれ〜。

鍋蓋山~摩耶山ーマイペースは難しい

六甲山系名物のぷちクライミング。日帰りハイキングにアルプス登頂の憧れを重ねます。(後日調べで花崗岩だと知る。マグマだったのか!)そもそも六甲山系を踏破するという称号欲しさに挑戦しているのですが、最終的な目標は実は赤岳に登る事なんです。まだまだ先は長いですが…。

画像3

日常使いの筋肉が悲鳴をあげだすこのあたり、それでもずっとくだらないことを話題に笑っていた私達。そう、冒頭でも紹介した毎度恒例「世の中のB面的な話」が白熱します。

だれも注目しない、けれども私達の中でホットな話題を掘り下げ、時には討論し、絆を深めあいます。今回のテーマは「何故こだわりのある人はセブンイレブンを選ぶのか?」「スマホ世代の脳からみる精神構造」「キャンパー=チャラい論は何故か?」「ソフトエレガント顔とは?」「『好きじゃないねん。例えたら学校の先生と同じやねん』の話」等……

そんなたわごとをゆっくり語っている我々の背後から迫りくるはトレイルランナーたち。険しい道をロードラン同然に走り抜けていくその姿は勇敢で、特にサンダルで走る屈強な男性にはギリシャのスパルタそのものを見たような。(自撮り棒も意味ありげに見えてしまった)あのスポーツにはまってしまったら抜け出せない何かがあるのでしょう…。

そんなランナーに押されず私達はマイペースで行きます。

画像17

画像17

摩耶山山頂までもうすこし。ここで私と妹の間で感覚の差が生じます。

妹「もうちょっと!すぐそこ(が頂上)やって!」

私「まだまだやで。まだ一時間くらいはあるで!」 

心理学的にはポジティブシンキング・ネガティブドゥーイング、三歩進んで一歩下がるくらいが仕事においても課題においても無難なんだとか。しかし妹は楽観主義大胆派タイプ、私は悲観主義慎重派タイプ。妹は異国の地でパスポートを無くしてもノリで切り抜けた人。私はコンビニで悩みすぎて30分放浪する女。性格が丸っきり真逆な私達。何事も中庸が大事ですね!

画像24

画像18

計算されてない無作為な根、伸び行く枝葉、こんな光景を見ると言葉もなくただ恍惚としてしまいます。

摩耶山山頂「星が掬める場所」

登山口から歩くこと約5時間。ようやくランドマークの電波塔が見えてきました。本日のゴール、掬星台はこれを超えたあたり。三角点を過ぎて広場に向かいます。

画像5

画像18

画像24

広場に出るとこの絶景が!港町神戸だけでなく阪神一帯が見渡せます。最高のご褒美だ~!自分の脚で辿り着いた先に見える景色はいつだって格別です。

運よく展望台前のベンチが開いていたのでここでお昼にします。

じつは妹の誕生日が二日後。お土産にお手製キャロットケーキを。ローストナッツとレーズン、スパイスを効かせて大人な味に。仕上げに水切り豆乳ヨーグルトのクリームをのせて。ぺろりと二キレ平らげてくれました。

画像6

画像20

私は残り物の鯖と味噌を押し込んだ握り飯w。やはり山登りには米と塩気だ。

ここは「星が掬めるくらい」見晴らしのいい場所。なんて素敵な名前だろう。標高690mだなんて思えない、天国に近い居心地。周りにはピクニックをする人、おにごっこをする子供たち。ベンチで眠る登山客。

広場の奥には千手観音のマネをして記念撮影をする大人たちが。後ろに広がる港町は絵画の様に静かで、いつもの日常がまるで 「人が作った神聖な場所」かのよう。この場所なら「いろんなこと」から安心できる気がします。

画像25

食事を済ませボーっとしていた私達。肌を刺すような暑さで我に返ります。まだ2時頃でしたが下山します。

青谷道ー山から街へ

画像21

「お山は足元がでこぼこしてるから気をつけてね~」と先生。平和な風景。

画像26

なんじゃこりゃ!その名もマザーツリー。いつかの台風によって倒れたのだそう。もはやモニュメントのよう。

画像26


思いがけない障害物も過ぎ下山する事数十分、素敵な門構えのお茶屋さんに吸い込まれるように寄り道。土山産の甘い緑茶とほうじ茶ラテをいただきます。鼻に抜ける爽やかな茶葉の香りと甘さ、おもてなしの精神に癒やされます。

画像26

画像27

門をくぐった先に現れた予想外の避暑地。驚きのせいか、突如強烈な鼻炎に襲われる妹。ティッシュが足りません。

画像7

お茶屋を後にし急な山道を下山すると、ものの数十分であっという間に街の景色が。

画像27

12月の愛宕山以来の登山だったこともあり、肉体に鞭打つ場面が多くて既に足がすくみそう。そんな険しい山道もこれにて終了、次第にタウンウォークへ移行していきます。そう思うと何だか寂しいな~。不思議といい記憶しか残っていなくて後味爽やか。山を三つ越えてきたというのに!!!

縦走体験とライフプラン

「人生は登山と同じ」とよく言われます。それは教訓として助言されることが殆どです。しかし、気づいたのです。

無理して高見を目指さずとも自分のペースで横に横に進んで行く、そんな人生観でキャリアやライフプランを立てても十分面白いのではないでしょうか?

何度も現れる同じような景色にも違った自然の造形美があって、先の見えない辛い登りも回を重ねれば自信に繋がる__

そんな風に好きな縦走に人生を重ねられたら、もはや登山=教訓でなく生きるヒントになるのでは?!2021年記念すべき登り初めで、新たな人生の歩み方を悟ったような気がします。

勿論独りよがりの登山だったらこんな心境にはならなかったはずです。ありがとう妹よ!そしてhappy birthday!

画像28

後編へ続く(編集中)





























この記事が参加している募集

#最近の学び

181,634件

#一度は行きたいあの場所

52,721件