小説📕噛み合わない母親

母を部屋に迎え入れた。
机に置かれた雑誌やお菓子やノートにペンを見てビックリしていた。
「こんなふうに家でも暮らしたいの？」と、言った。
「本当に何も知らないんだね、知ろうとしないんだね。こんなふうに暮らしているよ。勝手にね。家族の人に興味を持たれないだけ」
と強めに言った。
「そっか…。そんな事はないんだけどね。ごめんね…」
私の頭の中でブチッと何かが切れた。
「そんな事はないとは？」
「いつも心配しているよ」
「そーゆー風に見えないけど？」と、言うと
「悲しいね」と言った。

「家で出来る話じゃないの？さっきから会話になってないし」と、私は沸々と怒りがやって来た。そして、
「大体、イジメなんだよ。今でいうモラハラってヤツ。私の事だけ無視じゃん！私ってなんで食事に呼ばれないの？時間が決まってる訳じゃいんだから声かけてもらわないと分からないじゃん！」

「そうだよね…」
「そうだよねって、何なの？」
「言わなくても分かると思ってたから」と言った母に呆れてしまった。
「テレパシーでもあると思ってんの？
家族という理由だけで？何言ってるのか、コミュニケーションが上手くいかなさすぎて、
会話が疲れる」
「だって、お兄ちゃんは呼ばなくても来るから」
「だから？」
「その内皆んな揃うかなって」
「それで揃った時ってどれくらいあったと思ってるの？」
「分からない」
「何に関しても、お兄ちゃんが基準なんだね。ようは察して欲しいって？そういう事？」
母さんは頷いた。
「時間になったら呼ぶだけ。それをしたくないの？」
「だって、食べてるんだから音が聞こえるでしょ？」
「聞こえてなかったり、寝てたらどうするの？」
「……」
「もういいよ、帰って。疲れた…」
「また来るね」
「何しに？」
「迎えに」
「私はもう孤独は嫌だから。手紙も書かないし、ホテルも変えるよ」
母さんは何も言わずに帰っていった。
私は、一層のこと分籍しようかと考えていた。
分籍によって自分に降りかかる事に詳しいのは仕事上、兄さんだった。

兄さんは愛されて比較される事なく過ごしている。
妬まずにはいられなかった。
でも、いつも優しかった。
とりあえず連絡をしてみる事にした。