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サラバ青春、いつまでも儚くそこにいて

もう誰かから勧められた音楽を、毎日のように聞く日々は来ないかも知れない。
好きなひとのために8センチのピンヒールを履いて背伸びした日々は、もう繰り返されない。

いつまでも終わらない過去との戦いに終止符を打ってくれたのは、間違いなく彼女たちだ。

「過去に勝てない」ということを受け入れられないことほど、苦しいものはない。

だから、過去と今、未来は別のものだと。感情をそのまま冷凍保存して比べることなんて不可能なことなんだからと教えてくれたのは、絶対に彼女たちなのだ。

突然だが彼女たちは、いわば「サンドイッチ」のような存在である。

ご飯を選ぶ気力がないときに選ぶ、超普通の、ハムチーズとレタス、たまごのミックスサンド。サンドイッチは、現実を受け入れている味がする。

そのときには特別だと分からない、過去になった瞬間に「特別」と感じるものがつめこまれた曲。背伸びをしているようにみえて、それでも今を受け入れているよと主張する音。

無心になってコンビニでサンドイッチを手に取るように、気づけば彼女たちの音楽を、わたしはプレイリストから選んでいる。

彼女たちの曲を散りばめて書いたショートストーリーを書いてから1年、こんな日が来るなんて、思いもしなかった。

彼女たちは、過去になる。でもそれは、終わりではない。
過去として、完結してそこに存在し、きっといつまでも輝き続けるのだ。

「過去には勝てやしない」なんてことを、身をもって証明してしまうのか。いつまでもいじわるで、ずるいんだから。

彼女たちは、平成の夏とともに卒業してしまうらしい。
いつまでも続くと思っていた音楽は、どうやら平成とともに卒業してしまうらしい。

終わってしまって、儚くて。更に敵わなくなってしまった。この音楽と正当に比べて勝てるものなんて、この先わたしの中に生まれることは、きっともうない。


読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。