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小説講座を受講してみて

去年の夏から受講していた小説講座、このたび無事に全ての課題を提出し、修了することができました。


講座の内容は、6回与えられる課題に対して短い小説を書いて提出するというもの。課題ごとに、小説を書く上での基本的なルールやアドバイス、テクニックや心構えをテキストで習ったあと、出題されるお題に対して短編小説を書いて提出します。すると数日後に作品への講評が返って来るので、よく読んだら次の課題に取り組む、という流れです。

小説を書くための裏技や近道があるわけではないですが、毎回、課題に対する講評を読むことは、とても面白い経験でした。自分の書いた小説を第三者に読んでもらってコメントをもらえるというのは、小説を書き始めた人にとって学ぶところの多い経験だと思います。なんせ、自分でものを書いていると、果たしてそれが面白いのか退屈なのか、全くわからないのです。本当に、全く、わかりません。


自分のことを客観的に批判することは何においても簡単なことではありませんが、殊に創作という分野になると、その傾向は一層強まります。
自分では上手く書けたなと思って提出すると、思いがけない鋭い批判をいただいたり。こりゃあ稚拙に過ぎてしまったかなあと思いつつ提出すると、思いがけず発想を褒めていただいたり。自分自身に下す評価って、アテにならないものだなあと思います。もちろん1人の講師の意見が絶対というわけではありませんが、自分と異なる視点で批判してもらえることで新しい着想を得ることができ、プラスになる経験でした。


自分が書いているものが面白いのか退屈なのかはわからないのですが、しかし物語を創作するというのは、それだけで非常に面白い行為で、退屈しません。脳みその普段使っていない部分がドクドクと動いているのを感じます。この面白さを知って味わえて、そして続けたいと思えただけでも、この講座を受けた甲斐がありました。


本を読むときは、すでに書かれた本の中から何を読むのかを選ばなければなりません。それだけでも随分と広大な世界だと思っていました。

しかし自分で本を書くとなると、さらに一層、全くの無制限の世界へと放り出されるのです。全てを選ぶのは自分です。何を書いても良くて、そこでは何が起きても良い、というのは他ではなかなか味わえない圧倒的な自由ではないでしょうか。

真っ白なキャンパスを前にして気持ちが昂るというよりは、広大な草原で途方に暮れるような気持ち。はたまた、宇宙にひとりぼっち、みたいな超常的な大自然を前にした慄きさえ覚えます。そこは一切制限のない世界なのです。ゆえに着想を得て、書き始めるまでが一番難しいように思います。自分の発想の貧困さに打ちのめされます。何をしても良いというのは素晴らしいけれど、簡単なことではありません。全人間性が試されているように感じます。ここが一番頭を絞ります。しかし書き始めるとこれがなかなか面白い。

書いているうちに、思ってもみなかった方向へと物語が進んでいくことがあって、自分で書いていながら「一体この話はどう終わるのか、物語の最後を知りたい」という感覚を抱くというのが不思議であり、そして高揚感を感じる瞬間でもありました。先を知りたいという気持ちは書き進める推進力になります。

大方を書き終えるまでは、全くの手探りで面白さの中に苦味も感じます。しかし概ね書き上げてから手を加えて修正していく時間はとにかく楽しくて、ここが一番面白い工程だなと感じました。
とは言え、少し手を加えるだけで物語の意味が大きく変わるので、修正といっても気は抜けません。手を加えながら、ようやく自分が何を言いたかったのかが見えてくる気がします。

去年、初めて新人賞に応募したときの作品は、自分の経験を元に書いた物語でした。そのため今回の小説講座を通して、空想の世界を書いたり、自分の経験とは全く異なることベースにしてフィクションの世界を書くことに挑戦することができたことは、とても良い練習となりました。

今までの自分の経験によって、私の思考や思想が形作られてきたのですが、しかし思考とは自身の経験を書くことによってのみ表現されるものではないようです。自身の経験を語るから自分の思想が現れるのではなくて、どんな小説的シチュエーションにあっても自分が書くと、人物の行動から、言葉の端端から、どこからともなく自分の思想というものが立ち現れてくるのだなと、基本的なことかもしれませんが、書きながら初めて気がつくことができました。


まだまだ課題の短編小説をいくつか書いただけなので、大きなことは言えませんが、しかし小説を書くというのはとても面白いことです。書くことは、一人でできるというのが何とも魅力的です。自分の全人間性を使っての挑戦なので、書きながら自分という人間の成長にも繋がるのではと思います。面白い小説を書くために、本を読むことはもちろん大切でしょう。しかしそれ以上に、毎日の生活や経験全体が書くものを大きく左右するのだろうなと感じます。突拍子もない経験をするという意味ではなく、何でもない日常でも目を凝らして生きるという意味で、毎日を味わっていきたいです。

今年もまた新人賞に応募しようと、構想を練っているところです。
これからも続けていきたい面白いことが見つかって、嬉しいです。



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