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これから目指す生活は

思えばパリに来てからずっと、「なんとかお金を稼ぎ出してパリ生活を続けること」が目標だったのかもしれない。

こっちに来て雑誌の仕事がしたいなあとぼんやり思っていたのが、念願叶って実現できたり。取材して写真撮ったり文章を書く仕事がしたいなあと言っていたら本当にその通りのお仕事を紹介してもらえたり。ファトグラファーのアシスタントをしたいと行動したら、結果がちゃんとついて来たり。こうやってこの5年を振り返ってみると、驚くほどに運が良く、いつもいろんな素晴らしい出会いとタイミングに恵まれて、やりたい仕事ができて来たと思います。20代初めの頃に親友と「お互い30歳までに人生でやりたいことを見つけて、40歳までにそれで食べていけるようになろうね!」と言っていて、これまで「自分のやりたいことを見つけて邁進する」ことを胸に、挑戦を続けてきました。でもこれは、表の顔。

パリに着いてからずっと金銭的にキュウキュウとしていました。渡仏前に2年間アルバイトを何軒も掛け持ちして貯金して来たけれど、特に最初の1年は出て行くお金の方が多く、心に余裕のない日々を送っていました。フランス語も英語もできないので賄い目当てに日本食レストランでアルバイトをしながら、勉強と両立できず焦る毎日。色々あって、家族にお金を貸してあげないといけなくなったことも重なり、心の視野が狭くなっていたんだと思います。語学学校のクラスメイトの多くは、両親から支援してもらっているのに、私は全て自分でまかなって、しかも家族に仕送りまでしなくてはならない。金銭的に立ち行かなくなった時には誰も頼れないと自分を追い込んで、他人と比べて自分のことを可哀想がって性格が淀んでいきました。(その後この時貸したお金は返してもらえました。)

ある時友人と話していて、レストランの話題になった時のこと。彼女が友達と行ったと言うレストラン、「そこ私も行きたかった〜!誘ってよ〜!」と言うと、「ごめん、お金ないと思って誘わなかった、、」と言われ、ハッとしました。私、そんなに貧乏なイメージを持たれていたんだ。

お金がないことに意識をフォーカスし過ぎていたら、それが自分の態度と行動、発言に表れる。それを受けた相手の対応が変わる。出会う人も変わる。自分のところにやってくる機会も回ってくるご縁も変わって、人生が変わって行く。

お金がないことにフォーカスした人生を送りたくない!

「住む場所は自分のお給料に合わせたところじゃなくて、こんな人になりたいと憧れるような人が住んでるところに背伸びをしてでも引っ越しするのが、お金持ちになる方法。まずは自分が属したい環境に身を置いてみること」そんな話をどこかで読みました。

その頃、又貸しで見つけた格安アパートに差し押さえ状が届いて急遽お引っ越しすることになったり、極小の屋根裏部屋を借りて閉所恐怖症になってしまったり、引っ越し先が見つからず友達の家のリビングのソファに住んだりと、転々としていました。落ち着きのない毎日。なんとなく生活が荒んでくると、暗い影が心の隅にやってくる足音が聞こえて来ます。このままではいよいよ貧して鈍してしまう。心機一転、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、家賃が高いけれど(と言っても今思えばそれまでの家賃の予算400ユーロが桁外れに低かっただけで、ここも立地を考えると決して高くはなかったです)、パリの中でも住んでみたかったエリアにある、小洒落たシェアアパートにお引っ越しすることに決めました。前の仕事を辞めたタイミングだったけれど、この時思い切って本当によかったです。そこからさらに、たくさん良い出会いがあり、人生の流れが良くなって、今ではようやくやりたい仕事をして経済的にも人並みの生活を送れるようになりました。

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先日インスタグラムのストーリーを見ていてふと目に止まった、神戸の知り合いの喫茶店店主さん。お休みになるとサーフィンに行ったり山登りをしたり小旅行をしたり。何だか楽しそう。サーフィンをしたことはないけれど、休日になるとサーフィンに出かける生活、なんだか素敵で羨ましい。自分の生活を自分で作り上げて、楽しんでいるエネルギーを感じます。

今、パリでやりたいことをしながら、比較的好ましい人間的生活が送れていると思うけれど、時々何だか違うなあ、とぼんやり思うことがあります。何が違和感を感じさせているのか?

「自分のやりたいことを見つけて邁進する」と言う表の目標に隠されていた、「なんとかお金を稼ぎ出してパリ生活を続けること」と言う真の目標が遂に達成されて、それだけでは物足りなくなって来たのかもしれない。

この5年間でいろんな人たちに助けられながら、随分成長して来たと思います。たまには素直に自分で自分を認めてあげよう。手放しで自分のことを褒めてあげよう。別にそうすることで、何か失うものがある訳でもないのだし。

休日にサーフィンをしている姿を見て羨ましくなる気持ちに、ただお金を稼いでパリに住むだけじゃない、次に目指して行きたい生活のヒントが隠れている気がします。

近頃人生の手綱を手放して、目の前のことをなんとかこなすことに注力し過ぎていました。お金を稼ぐことばっかり考えていた。自分の身近なことをゆっくり見直したり、お休みをとってちょっと遠出をしたり、きちんとやるべきことをきちんとする時間を取れていなかったようです。

折しも本日からフランスは2回目のロックダウン。生活を見直す時間はたっぷりあります。まずは荒れ放題のアトリエの大掃除から始めましょう。また新しい目標に果敢に挑戦していけるように。


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