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どうして本を売りたいのか

古書を販売するために、古物商の申請をしてきました。子どもの頃から本屋さんに憧れていて、学生時代は古本屋さんや新刊本屋さんでアルバイトをしていたのですが、いよいよ憧れが現実になります。

パートナーと開く飲食店の一角に、私の本屋さんスペースを設ける準備を進めています。9月ごろにはオープンしたいなあと、ぼんやりと予定が見えてきたところです。


本を売ることになるにあたって、どうしてこんなに本と読書が好きなのかなあと考えていました。

単純ですが、私が本を好きなのは、本のことを信頼しているからだと思います。本を読んで何か利益を得ようとか、目的があって本を読む訳ではないのですが、読書をすることは良いことだと思うのです。私にとって「これは良いものだ!」と自信を持って信頼できるのが読書です。もちろんすべての本が素晴らしいわけではありませんが、そこを含めて、本が好きです。


短い文章しか読まない現代では、一冊の本を読むという行為は、もう流行らないかもしれません。反射神経で情報を読み取り反射的に言葉を投げつけるような時代では、読書なんて効率が悪いでしょう。時代遅れかもしれません。自分と異なる考えを見つけるやいなや攻撃することしかできず、議論をすることができない人が増えている中、答えを出さずに時間をかけて考えたり、異なる意見を吟味したり、自分に非はあるだろうかと内省していては、叩き潰されてしまいます。


でも読書で身につけられるのは、そういう時間と手間のかかるような考える力だと思います。分からないことに手軽なラベルを貼って分かった気にならず、考え続ける力。分からないことを分からないと言えるような、しなやかさ。物事を多面的に見る力。そして自分の知らない世界があることを知り、想像する力。

読書をしてすぐに考える力が磨かれるわけではありません。それでも本を読むと必ず何かが変わります。お金にはならないかもしれないけれど、自分で自分の人生を楽しむ能力は磨かれます。

私にとって読書はそういうものです。


全人類にとって必要なものではないかもしれません。でも私にとっては心から必要なものです。なくなってほしくないです。だから本を売ります。


読書によって身につくような思考力は、いまの社会では評価されないものかもしれません。でも私は効率の良さよりも、答えのない問いに立ち向かうような思考力が評価される世の中になって欲しいです。だから本を売ります。

他者を攻撃するだけでは議論は生まれません。しかし論破することよりも、話し合うことにこそ意義があります。他者と話し合うためには想像力と思考力が必要です。だから本を売ります。


世の中を良くする方法は様々で、たくさんあります。みんながそれぞれ自分にあった異なるやり方を模索し、実践するのが良いと思います。その中で私にできる方法が、本を売ることなのです。


本を売ることで、本との良い出会いが生まれてほしいです。



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