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八潮七瀬
2018年7月6日 16:28
砂漠に吹く風は、日没と共に柔らかく変化する。夕暮れに青白く浮かび上がるモスクは、あたかもその身に太陽の熱を溜めていないかのように白く輝いていた。かといって、冷たい印象を受けないのは、優美な曲線と照明の加減なのだろう。蜃気楼の残滓から生まれいずる確固たる楼閣は、砂を孕みちりちりとした風を伴って、触れたら和三盆のように崩れてしまいそうに繊細だった。唐草模様の刻まれた天井を見上げながら、花模様に
2018年7月5日 11:36
男は海が七つあることを知らなかった。それなのにこれ程に海に愛されている。「君の故郷のトーキョーには、海はあるのかい」と彼は尋ねた。目の前には、彼の生まれ育った小さな街をずっと見守り続けてきた海が、日の名残りを受けて僅かに朱く染まっている。大航海時代、貿易港として栄えた街だ。旧市街の赤みのかかった煉瓦で作られた古い建物は、海に面して所狭しとひしめき合っている。「あるわよ」と答えながら、東京の