マガジンのカバー画像

世界放埓日記

54
運営しているクリエイター

2018年5月の記事一覧

海を照らす光

正午を過ぎた都内の公園、まるでだだっ広い夢の中に浮いているような気分になりながら大学まで歩いていると、見知った顔に何人も出会うのです。

大学を卒業してから久しく会っていなかった先生や、留学していたはずの先輩、そういった彼らとすれ違い、驚いたり笑ったりしながら手を振り合い振り向くと、そこにはかつての同級生がおりました。

「今就職活動をしているんだ」
そういって彼は重たそうな鞄を持ち直しました。

もっとみる
プルーストとアシマン

プルーストとアシマン

「両思い」って単語を使うことに、いつから恥ずかしさを覚えるようになってしまったのでしょう。
「恋人」「彼」といった言葉なら臆面もなく口に出せるのに、「両思い」って単語を舌先に乗せるだけで今の私は体の芯からきゅっと締め付けられるのです。
映画「君の名前で僕を呼んで」は平日にもかかわらず座席の多くが埋まっていました。
ティーンの頃に、他者によって糊を解きほぐされた湿ったシーツの感触を知った人なら、きっ

もっとみる