食の選択肢を広げたシンプルな原則

「まだこんなに減らせたのか」という衝撃を、今も覚えています。

アーユルヴェーダに出会う前、もう行き場がないと思えるほど"極まった"食生活を送っている感覚でいました。自分なりのベストな食事を探求し、食材のセレクト、バランス、食べる量…10年以上の経験と学びを駆使して食事をしているような状態です。

しかし、そのとき感じていたのは選択肢が限られているということでした。食べるものがほとんどリスト化され、冷蔵庫の中はいつもヨーグルト、鯖のパウチ、りんご、ブロッコリー、鶏肉…と変わり映えしない内容で、食事はまるで機械的。どうしても「楽しい」や「嬉しい」という感情が生まれなかったのです。

今考えてみると、人生の大半の時間を費やす「食事」が、なんとなくグレーがかった実感のないもので、目的も意味もなく過ぎ去ってしまっていた数年間は、もったいなかった部分もあるなと感じます。その分、気付けることが山のようにあったので宝でもあるのですけれど・・・。

食べ物の選択肢が、アーモンドや大豆製品、高栄養食品などを含めて合計10〜20種類ほどに限られていた当時、「なぜそれを選んでいるのか?」と聞かれると、「体にいいから…」「栄養的に最適だから…」といった返答で、その声は少し小さく、ハリのないものでした。

そんな食品に対する柔軟性を失っていた中で、アーユルヴェーダに出会い、驚いたのは「まだ減らせるものがあった」ということです。このとき減ったのは選択肢ではなく、"制限となっていたもの"でした。

必要だったのはシンプルなガイド

これまでの食生活は、やはり手探り状態でした。「これだ」と思える考え方や教えに出会えず、「まだどこかにしっくりくる方法があるかもしれない」と、両足が地に足つけられず、探しものを続けなければ居られない状態です。

栄養、人体解剖、生理、運動、心理…と探求する中で、「欲しかった答え」は見つかりませんでした。自力で実験を繰り返す中で、結果として固定観念がどんどん分厚くなり、「お米や油は太る」「タンパク質をたくさん摂った方がいい」、そして根底には「食べると太る」が植え付けられていたのです。

自分で自分の人生経験を防いでいる方向へ進んでいたように思います。


そこで制限を解放するきっかけとなったのが、まさにごくシンプルな、必要最低限のガイドです。根本を押さえつつも、自由さをもたらすような、安定して身動きのとりやすいガイドが助けになりました。

これまでの指標は「カロリー」や「栄養バランス」が主でしたが、その時には食材がまるで数字に見え、「親和性」を感じられませんでした。アーユルヴェーダのガイドは、その冷たい壁のような感覚を溶かしてくれました。


アーユルヴェーダの絶対原則

いくつかある原則の中で、私が最も日常で役立てているのは「反対のものがバランスをもたらす」という考え方です。

私たちはつい、自分を乱すものを頼りがちな性を持っているようです。
「こっちを選んだ方がよいとわかっているけれど、つい」というように・・・。

しかし、もし自分自身が自然な状態であれば、人間の本性として「バランスをとるものを欲する」ようになっています。そのときに必要な味を自然と欲し、休養をとるようサインが出たり、いつも反対のものがバランスをとるように向こうから支えてくれているのです。

ですがもし、急な坂道のように多忙な生活を送っていたり、”同じ味”ばかりを食べているとき、その坂は平穏とはかけ離れていき、転覆しかねません。

私たちが心がけるべき最善のことは、自然の作用に反しないことです。自然はいつも中庸に向かっています。冷たい水は常温に、葉っぱは全体のバランスがとれた場所へ伸び、人の体は平温へ向かいます。

自然に抵抗すると、力みが生まれ、歪み、硬くなり、植物でも病気を起こします。

食べ物はそれぞれ自然の産物であり、"バランスを与える"作用があります。その知らせとして「味」があるのです。その味を、人間の感覚は本来知っていて、必要な時に必要な味を求めるサインを発します。

例えば、食べ過ぎた翌日には苦いものやグリーン野菜を欲し、活力が枯渇しているときには甘いものへ引き寄せられる感覚がしたり。


このような「自然の知恵」を引き出すシンプルなガイドです。


必要最低限のガイドラインで広がる選択肢


アーユルヴェーダのガイドは、人間をよく捉えていて、まさに先人たちの知恵の結晶である威力を日々感じます。シンプルなガイドによって、自由な食生活とライフスタイル、人生経験の広がりがおこります。

完全にフリーだと、実は迷ってしまったり。細かくフォーカスしていくほど身動きが取りにくくなったり。そのどちらでもなく、人間本来の状態を保ち、最大限に活かす知恵

その一つとして、「反対のものがバランスをもたらす」という原則を日常で感じ、実践してみてくださいね。



それでは、また次回に。

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