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言葉に想う -『アルケミスト 夢を旅した少年』 -


旅をするのは簡単だ。けれども旅を始めるのは難しい。

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「少年」は「父親」に、世界を旅したいと告げる。父親は少年を説得できないことを知ると、全財産である金貨3枚を少年に渡して、旅に出ることを許可する。

少年は父親の目の中に、自分も世界を旅したいという望みがあるのを見た。それは、何十年もの間、飲み水と食べるものと、毎晩眠るための一軒の家を確保するために深くしまいこまれていたものの、今もまだ捨てきれていない望みだった。


( 旅をしていない人が、旅を夢見なかったとは限らない。 )

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少年は街で「賢者」と出会う。賢者は少年の持っていた本をパラパラとめくり、その本に書かれていることが、あらゆる本に書かれている「うそ」と同じであることを指摘する。

「人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」


( 人生をコントロールできなくなるのではなく、人生をコントロールすることをしなくなる。それが真実だ。 )

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賢者はメルキゼデックと名乗った。少年には知る由もないが、彼はエルサレムの王だ。

「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」


( 守りたいものが増える。その言葉は美しいが、それはきっと「旅すること」とは相容れない考え方だ。 )

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羊飼いである少年は、草原の上で回顧する。

彼の人生の目的は旅をすることだった。


( 過程は目的、足り得る。 )

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砂漠を渡るための資金を貯めるため、少年はクリスタル屋で働き始める。クリスタル屋の「主人」は、メッカに行くという夢を持っていた。

「わしの望みの全ては、お金をためて、店を始めることだった。いつか自分が金持ちになれば、メッカに行けると思っていた。わしはお金をため始めた。しかし、わしは他人に店を任せて出かけることが、どうしてもできなかった。...人々はいつもわしの店の前を、メッカに向かって通り過ぎて行った。...巡礼者のほとんどは、わしよりも貧乏人だったよ」


( 旅に出るのに必要なのは、旅の危険を受け入れる勇気ではなくて、現在の安息を捨てる勇気なのかも。 )

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少年は「前兆」を読むことに長けていた。少年の観察により、クリスタル屋はとても繁盛した。少年はさらにお客を呼び込むための方法を提案するが、主人は少年に語りかける。

「...わしは人生にこれ以上、何も望んでいない。しかし、おまえはわしに、今まで知らなかった富と世界を見せてくれた。今、それが見えるようになり、しかも、自分の限りない可能性に気がついてしまった。そしておまえがくる前よりも、わしはだんだんと不幸になってゆくような気がする。なぜなら、自分はもっとできるとわかっているのに、わしにはそれをやる気がないからだ」


( 上を目指さなければいけないと、誰が決めただろう。敷衍すれば、博識が無知よりも幸せであるということもないだろう。 )

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少年は砂漠で、錬金術師を目指す「イギリス人」と出会う。イギリス人は探し求めていた錬金術師と出会い教えを乞うが、自分がまだ何も実践していなかったことに気がつく。

「僕は硫黄を分解しなければいけない。それを成功させるためには、失敗を恐れてはならないのだ。...僕は本当は十年も前に始められたことを、今やり始めたのだ。二十年も待たなかっただけ、少なくとも僕は幸せだよ」


( 大事なことに、人に出会う時、それに見合う自分でいるということは大事なことだ。 )

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