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電車内は物語に溢れている

電車の中でも、大体の人がスマホをいじっている現代。

私は、車内で画面の文字を読むと酔ってしまうので、ただ目を瞑るか、周りの人間を観察するか。

先日、久々に電車に長い時間乗った。
人の多さに辟易しつつ、周りを観察していた。

そんな私の目に飛び込んできたのが黒のスパンコールを全体にあしらったバレーシューズである。
履き主は後ろ姿。
線の細い女性だった。
何やら大きめのファイルを開いている。
チラリと見えたそれには音符が並んでいた。

私の脳内で突如、ミラーボールが回り出す。
そしてDJのコールがかかるのだ。(私はクラブとかに行かない人なので想像の世界である)

「スパンコォォォーール!!」
「いえーーーーいっ!!」

会場の熱気は凄まじく、焚かれたスモークが生き物のようにうねっている。
それに反射するミラーボールの七色の光。
そして負けない光を放つのが舞台の上のスパンコールがついたバレーシューズである。

人も少なめになってきた明るい朝の電車内で私の脳内だけパーリーピーポー集う夜の世界である。

太陽の光でキラキラちかちかしているバレーシューズは、履き潰されているであろうクテクテさをものともせずに輝いている。

『私が彼女を惹き立ててあげてるのよ!』

そう言わんばかりのキラキラに、一人小さく頷く私。
そのまま素敵に輝いてくれよなと、思った。


電車の中は、物語(妄想)のネタの宝庫だと思う。

隣に座るサラリーマンを勝手に戦友とし、降りるたびに『がんばれ!』と見送ったり、大きな黒いカバンを持つ人を見掛ければ火サスが始まる。
私に見えるように(相手はきにしてないだけ)小説を傾けるおじさんはスパイかもしれない。私は素早く開かれたページの文字を読み取り、秘密のコードを受け取らなくてはならない。
私の隣に座る純朴そうな男の子の視線の先にいる彼女は、ずっと憧れていた学校の先生である。
彼女は元教え子に気が付かないが、彼はそれでも彼女を見つめ続ける。なんて、妄想をする。
目の前の席に座る人の眉間のシワ具合から、日々眉間にシワを寄せる癖があると分析。そのシワはどうして刻まれる事になったか想像する。
持ち物、身のこなし、服装……様々な視覚情報が溢れている。
そこに、視覚では確認できないものを好き勝手に肉付けする。

私だって誰かに分析されていることだろう。

たぶん『あの人たまに笑ってるけど、一人で何笑ってるんだろう』は思われている。それから『あの人、背中の筋肉ないな…猫背〜』も思われてる。『あの人、手…大きくて長い』これは、手フェチならそう思うはずだ。私の手はデカくて長い。
それと『変なキーホルダーつけてる人いるな』はあるかな。持ち物がちょっとね。笑



他の人は電車に乗り慣れすぎて、人を見るのもウンザリしているのだろう。スマホの画面だって見え放題してるのに、誰も気にならなそうだ。
私は頭の中で、溢れるほど、物語を創りながら『知らないことだらけだ』と思っていたのだった。


あなたは電車に乗り慣れすぎている人だろうか?
それとも、私みたいに物語を創りし人だろうか?

なんにしても、時間通りに来てくれる電車って有り難いね。
様々な人がそこにいて、みんな少しずつ影響しあっている。
そういうことを日々の中から掬って、大切にしていきたいと私は思うよ。

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