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少しずつ「ぬいぐるみ」って自覚するんだ

私は大きなUFOキャッチャーの前でやきもきしていた。

あと、100円も使えば落ちそうなぬいぐるみが目の前にあるのだ。
しかし、夫が食品の袋を下げで来るのが見えている。
あと一回、挑戦する時間もないかもしれない。

夫がやってきて、私の様子をみて察してくれたので、夫に任せることにした。

「まずは掴んで、落として、押して…」

夫の読み通りぬいぐるみは出口に来た。
なのに

「え、最悪。これじゃ落ちてこないよね?」

出口にはぬいぐるみが大渋滞していた。
私はぬいぐるみの足を引っ張り出した。

すると、大きなぬいぐるみが5体出て来た。
私達がとったのは珍獣オカピのようなぬいぐるみで、他に色違いのオカピのようなやつと、キツネのよつなぬいぐるみが、それぞれ2つずつ。

妙にリアルなつくりのぬいぐるみ達を床に並べ一瞬ぼーっとする。
出口に詰まっていたのだから、全部もらって帰ってもいい気がしたが、全部は要らない。
私はオカピのようなぬいぐるみの大きさにバラつきを見つけ小さなぬいぐるみを抱きかかえた。
それから、やはり比べて小さい方のキツネのようなぬいぐるみも抱えて

「これ!これとったって言う」

と夫に言った。
夫は、わかったわかったといい、店員さん呼んでくるよと言った。
要らない子達は戻してもらわなきゃいけないから。

夫が大きな出口から出ていった。
私が見送っていると、抱えていない方のキツネのよつなぬいぐるみがハッとしたように歩き出した。
その姿は野生のキツネと遜色なくて、私はボーッと「あれなら、逃げても野生で生きてけるかぁ…」などと考えた。
考えた後に、ハッとした。あの子の体の中は綿である。野生で生きていけるわけがないのだ。
こんな人間勝手な放置など、あってはいけない。
そう思って追いかける。
私の腕に抱えられたキツネのようなぬいぐるみがキューキュー鳴いていた。

スタスタと歩いていたぬいぐるみも、その声で立ち止まる。
そしてこちらを向いて伏せの姿勢になった。

『こうしてると、犬みたい…』

私は私が抱えていたキツネのようなぬいぐるみの鼻先を伏せているぬいぐるみにつけてやった。
2匹は満足そうに一瞬目を閉じたように見えた。

大きなキツネのようなぬいぐるみは自分の足で倉庫のようなUFOキャッチャーのある場所に戻った。
私はその後ろからテクテクついてきい、私の後ろからやって来た夫に

「扉閉めて!逃げちゃうかも!」

と言った。
キツネのようなぬいぐるみは、おとなしくオカピのようなぬいぐるみの側でぬいぐるみをしていた。

少し見上げるような高さのあるUFOキャッチャーを見ながら、私はこんなことを言った。

「まだ、入れられたばっかりだったのかもね。ぬいぐるみになりきって無かったのかもね…」

下の方の潰されても何も感じていなさそうな、そういう質感のぬいぐるみ達に比べ、上の方の光が当たっているぬいぐるみは、謎の生々しさがあった。埋め込まれた目に力を感じるのだ。

「そっか、自覚していくんだね…」

私は腕に抱えたキツネのようなぬいぐるみを、この先「ぬいぐるみ」にしてやれるのだろうかと考える。オカピのようなぬいぐるみは、みな、もう「ぬいぐるみ」だった。

薄暗い倉庫のような場所で、ライトに照らされる四角の中。
せめて、大切にしてあげようと思った。



という、夢を見たんだ。

そう、これはユメモ。夢メモ略してユメモ。

沢山見ていたが解けなったのはコレだけ。

私がユメモを書くのはただの趣味だよ。
夢に入り込み過ぎるのも、夢を遠ざけ過ぎるのも、私にとって良い事とは思わない。

たまに感覚キャッチだったり、ちょっぴり不思議な夢の世界。

サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。