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手話通訳だけでは生活できない現状

手話通訳者の人材不足が叫ばれて数十年経つ。ろう者が手話通訳の必要性を訴えて「手話通訳派遣制度」が実施され、また専門職としての「手話通訳士(技能認定)試験」の導入も1989年(平成元年)に始まった。
ちなみに、これは厚生労働省認定の試験であり、国家資格ではない。手話通訳者と手話通訳士は別の立ち位置となっている。

~2023.9.24 NHKの「ナナブンノイチ」で放送された番組~
『85分の1。厚労省の調査では、聴覚・言語障害がある人は約34万人。一方、手話通訳士の資格をもつ人は4千人。85人に対してひとり。裁判などの公的な通訳はこの資格がなければ担えない。だが、資格試験が難関の割に通訳の報酬は低いことが多く、なり手は少ない。表現者を目指すろう者の女性を手話通訳でサポートする現場などを取材。聞こえない世界で交わされる「手話」という言葉への“気付き”』


1989年に始まった通訳士試験は、回を重ねるごとに過去問題集ができたり、出題方法が変化してきたりと、受験者のニーズを組み入れて変わってきている。

私の頃は2日間続けての試験日で、1日目は筆記試験、2日目は実技試験だった。
2日目は先に終わった人が内容を漏らしては困るとのことで、終日建物の中に缶詰め状態だった。
妊娠8か月の私には体力的にも辛かったな。。(絶対に受かってみせる!との意気込みで、なんとか1度目で合格できた)

現在では日を改めて2日に分けていて(学科と実技)、会場も全国で4か所に増えている。受験料は22,000円。
いま保育士の人手不足問題では、年1回の試験を増やしてほしいという意見もあるそうだ。
通訳士試験も年2回になったら受けやすくなるのかな。
たしかに不合格だった場合、来年また受けるモチベーションも下がってしまうのだが、それほど専門的な知識が必要だということ。

そんな難関を突破した通訳士の現状は、やはり年齢の問題がある。
国リハなどの学校で、手話を学び資格を取る方は若手も多いが、個人で地道に学習を重ねなければならない通訳への道は、非常に根気のいる分野なのだ。
参考までに↓

手話通訳士としての働き方は「専属で団体・企業に入る」や「行政の職員となる」というのが理想的なものかもしれないが、多くは別に仕事持っていて、空いた時間に「登録派遣型」として依頼を受けるというものだ。

この登録先は行政や聴覚障害者団体に付随する派遣事務所などが多い。
いくつでも登録できるし、1年単位なのでしばらく休止することもできる。
ただ、1年単位の契約雇用であり、社会保険もなし、労災もなし、依頼される仕事はほとんどが1週間前まで決まらない。

このような環境(手話通訳士・派遣型)だけでは、当然食べていけない。かといって他の仕事を並行する場合、通訳依頼があったら断らなくてはならない。依頼が少なければ通訳現場を経験することもできない。よって技術も落ちる。という負のスパイラル状態なのだ。

ひとりひとりの通訳者の努力によって、現在の制度が保たれている状態。これは質も落ちるし、何より一番困るのは聴覚障害者なのだ。



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