見出し画像

人口減少社会における対応策

私の備忘録として、朝日新聞2024年7月18日(木)のくらし記事から一部を抜粋し、めぐらせた思考をまとめました。


若者の経済不安 見つめなかった対策

〈タイトル・小見出し〉
若者の経済不安 見つめなかった対策
山田昌弘・中央大教授(家族社会学)に聞く
「大卒・大企業勤務」前提 格差広がり未婚化
教育無償化・育児支援の拡大…全部やらねば

〈リード〉
日本の少子化が止まらない。1990年、前年の出生率が過去最低の「1・57ショック」が社会を揺るがし、少子化問題が大きくクローズアップされた。しかし、30年以上経ったいま、状況は悪化している。

朝日新聞 2024年7月18日(木)
くらし

少子化の原因は国の見通しの甘さにある。
この30年を振り返り、人口減少社会における対応策を考えてみる。

30年間の少子化の要因

価値観の多様化もあるが、結婚した夫婦は子どもを一定数生んでいることから、若者世代の賃金が上がらないことが結婚を妨げ、少子化を生じている要因の一つであると考える。
また、団塊ジュニア世代がバブル崩壊後の就職氷河期に大学卒業を迎えたことにより、正規雇用の機会を得られなかったことも影響していると考える。

パートやアルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規雇用労働者は2023年で約37%。コロナ下の2020年、21年を除き、2010年以降、ゆるやかな増加が続いている(総務省「労働力調査(詳細集計)」より)。

1986年から施行された労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)により、労働者派遣が合法化された。
労働法の雇用の原則は、労働者の「直接雇用」だが、これに相反する労働者派遣はなぜ合法化されたのか。

参考:https://www.zenroren.gr.jp/jp/kintou/part/part.html
全労連「パートなどの非正規労働者」

理由は、バブル崩壊に伴い、日本的経営の見直しを図った財界の意向とそれを可能にした労働法の規制緩和。結果として、労働者の家庭生活や企業内での技能形成にもマイナスの影響を与えた可能性が高い。

旧・日経連は1993年12月に「新日本的経営等プロジェクト」を発足させ、バブル崩壊後の日本経済の再点検を行うとともに,従来の「日本的経営」をグローバル化に対応する人事・労務管理に転換させるべく調査・研究を開始した。
プロジェクト発足後2年後に提出された『新時代の「日本的経営」』(以下,95年報告)は,日本的経営の中核的人材であった長期安定雇用と年功型賃金に該当する労働者層を削減し,非正規雇用部分を増加させることで,「雇用のポートフォリオ」体制を構築しようと提言した。
(中略)こうした正規雇用と非正規雇用を柔軟に使い分ける体制が経済界による「雇用のポートフォリオ」=非正規雇用活用戦略の出発点である。
正規雇用の縮小と非正規雇用の拡大,そして非正規雇用拡大の内実としての派遣・請負労働の増大の背景には,90年代半ば以降本格化した。
(中略)
財界の非正規雇用活用戦略=「雇用のポートフォリオ」戦略とそれを可能にする労働法制の規制緩和がある。こうした財界の意向に支えられた非正規雇用の拡大は,本来的に雇用が不安定であり所得も低いことから,労働者の家庭生活や企業内での技能形成にもマイナスの影響を与える可能性が高い。雇用契約上不安定で生活困難をもたらす非正規雇用の増大は,非正規雇用という雇用階層に人々を固定化し,世代を超えて貧困の連鎖をもたらすという問題性を抱えているのである。したがって,雇用機会の平等や世代間における貧困の連鎖を防止する観点から,不安定・低所得な雇用形態としての非正規雇用の拡大をとめ,安定雇用をその中心とする,企業の人事労務体制の構築および社会政策上の規制が求められる。

https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/17963/kenkyu0320200330.pdf
出典:一橋研究 第32巻2号
「非正規雇用の拡大とその問題点
~労働基準の切り下げに関する一考察~」
永田瞬

配偶者控除の見直しが必要

労働条件や賃金、雇用の機会の公平性などにおいて、ジェンダー不平等、いわゆる男女間格差がある中で、女性は結婚後、出産、育児、介護の負担を家庭内でより多く背負う税制度が取られてきた。
日本の所得税にかかる配偶者控除および配偶者特別控除は、家庭の役割を女性に押し付けている。現代のジェンダー平等に即していないため、改善すべきだと考える。

配偶者控除が創設されたのは昭和 36 年。専業主婦世帯が最も典型的な家族累計だった時代。現在では、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回る。当時の価値観である「男性は仕事、女性は家庭」は、時代にそぐわないどころか、女性の就労の機会を阻んでいる。

改正を重ね配偶者控除額を増やしてきた。
平成6年11月に現行の配偶者控除になる。「消費税率の引上げに伴う少額納税者への配慮から、課税最低限を構成する基礎的な人的控除を引上げ」を行った。
①控除額の引上げ(一般の控除対象配偶者 35 万円→38 万円、老人控除対象配偶者 45 万円→48 万円、配偶者特別控除の控除額 最高 35 万円→最高 38 万円)、②配偶者の所得要件の引上げ(35 万円以下→38 万円以下:年間給与収入で 103 万円)と現行と同様の規定となった。
(中略)
その後、平成15年に配偶者特別控除の上乗せ措置を廃止した。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20141104011.pdf
(参照:立法と調査 2014、11 №358(参議院事務局企画調整室編集・発行)より)

税制度は国の方針を示す

余談だが、先日、1970年代に米国で男女平等を戦った女性弁護士の映画「ビリーブ 未来への大逆転」を見た。
米国最高裁判事となった女性、ルース・ギンズバーグの物語で、「税制度がこの国の在り方を決めている」というセリフに共感した。

出典:GAGA★GENDA GROUP

人口減少社会における対応策

個人的な意見だが、配偶者控除の撤廃と家庭内での役割を男性も負担することが必要だと考える。
そのためには、男性の労働時間も短縮されるべきだ。
女性が社会で働くためには、融通の利く働き方が可能であることと同時に、家庭の負担を男性も担うこと。
もちろん「男性は仕事、女性は家庭」という古い社会通念も変えていく必要がある。

1 配偶者控除制度の廃止 「年収の壁」を取り払うこと
2企業はあらゆる従業員に対し、正規雇用同様に社会保障制度に加入させること。
3最低賃金を引き上げること。
4企業の売上を伸ばす必要がある。そのための支援策を実施。
5発注者は下請け業者に対し、公正な対価の支払いをするべき。

政府はあらゆる労働者から公正に税金を徴収し、社会保障制度を安定させること。
社会状況に合わせた修正を加えること。

将来への不安を無くすために

将来への不安から家計の金融資産は増えており、日本銀行調査統計局(「参考図表2024年第1四半期の資金循環(速報)」2024年6月27日)によると2024年3月末で2199兆円となっている。

将来への不安とは何か。
教育費、住居費、老後の年金生活費ではないか。
そこに安心を与える社会保障制度を組むことで、今の手取りを生活に使うことができるようになれば、消費も増えるはず。

団塊ジュニア世代の年金問題「社会保障2040年問題」

団塊ジュニア世代は非正規雇用率が高く、未婚率が高いため、老後生活のための十分な年金制度の恩恵を受けられない可能性が高い。
その結果、生活保護の受給が増えることが予想される。
人口減少の今、それらの高齢者を支えなければならない未来の現役世代の負担増が問題だ。
少しでもその負担を軽減するためには、今から手を打たなければならない。
そのため、社会保障費負担の増額はやむをえないと考える。

配偶者控除の撤廃は国民からの社会保障費の徴収を増やす。
増やした財源を原資に、未来への投資として、将来不安を軽減するための教育、住居、年金への支援策に回すべきと考える。

団塊ジュニア世代が就職氷河期に切り捨てられたことにより、少子化は加速したと考えている。もし、あの時、新卒採用制度を見直し、派遣労働者の合法化が行われていなければ、今の人口減少はこれほど加速していなかったかもしれない。
当時の企業の倒産は免れなかったかもしれないが、同時に新しい企業を生む可能性を失ったともいえる。

国の政策の失敗を国民への消費税負担として強いているのは納得がいかないが、このような状況下で借金を増やし続けている国家財政が健全であるとは言い難い。
若い世代への負担を減らすためにも早急な改善策を打ち出すべき。

この記事が参加している募集

サポートいただければ、嬉しいです。まずは本を1冊発行することを目標にしています。その夢の実現につかわせていただきます。どうぞ、よろしくお願いします。