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不登校を英訳して自分の心を確かめよう。

【想定している読者層】
・不登校に関心のある方


1.記事の結論

 不登校に対して持っている無意識的な理解を見直す手がかりとして英訳することが有効です。

2.不登校への理解は終わらない

 不登校に対してよくある理解は「選択の結果」でしょうか。
 この理解は既に過去のものですが(『不登校は終わらない:「選択」の物語から〈当事者〉の語りへ』貴戸 理恵 )未だに根深いものであると思います。

 もっと言うと、未だに「サボリ」や「病気」という理解が多くを占めていることも現実です。

 さらに言うと、「不登校」という言葉でなんとなくグルーピングすることで分かったような気になってしまうことも否定できません。

 この記事で考えたい事は、各自の理解に優劣をつけることではなく、「自分がどう理解しているのかについて理解すること」です。

 この仕事は一筋縄ではいきませんが、英訳を眺める事で少し見えてくることがあります。

3.不登校の英訳

 代表的なものをざっと眺めてみます。

①Truant
②School absenteeism
③non-attendance at school
④not attending school
⑤school refusal

 きちんと説明しますので、英語が嫌な方もお付き合いいただけると嬉しいです。

①Truant はサボリのことです。

②School absenteeism は学校を明確な理由がないか無断で継続的に欠席している事です。

③non-attendance at school は学校に出席していない人達のことです。

④not attending school は学校に出席していない人のことです。

⑤school refusal は学校を拒否している人のことです。

 これらを眺めていただいて、「読めない」「見たことない言葉だ」「分かりにくい」「何が違うんだ」等と感じた方は、その感覚を大切にして欲しいと思っています。

 多くの方々は学校で英語を学んでいますので、ある程度読めるし、見たことがある言葉が多いはずです。それでも分かりにくいということは、その言葉の意味は抽象度が高い言葉だったり、意味が厳密な言葉だったり、限定的な使われ方しかしない言葉だったりします。ひとまず、限定的で強い意味を持つ言葉だと感じてください。

 例えば、Truant は普通知らないと思います。だから、強めのサボリです。

 absenteeism も無断欠勤を指しています。強めの言葉です。

 non-attendance と not attending も何が違うかよくわからないと思いますが、だからこそ使い方の区別があります。「non-」はカテゴライズする言葉ですので「出席してない人」のことになります。「not」はそこまでの意味合いはないので「出席していない」のことになります。

 refusal は強めの意味を持って拒否という事になります。

 皆さんは不登校の訳語として採用するならどれにしますか?

4.私が採用した言葉

 私は ④not attending school を選択して執筆したことがあります。
 ある当事者の方と不登校という言葉がスティグマ化しているということについて議論したことがあります。そこで、代わりになる言葉について考えました。

 その結果「学校行かない」でいいんじゃない。ということになりました。

 この言葉では、不登校を選択している感じが出てきますが、実際行けないわけでもないし、行きたくないわけでもない。ある時、ある瞬間、あるタイミングにおいて、ただ「学校行かない」ことになった、というニュアンスがあります。

 不登校の皆がサボリではないし、拒否しているわけでもないし、理由がある場合もあればない場合もあるし、病気かもしれないし健康かもしれない、そもそもひとくくりにすることが難しいのです。

 それで、not で表現された英訳を採用した経緯があります。単に執筆することだけを考えれば何でもいいのですが、一応説明できるように考えたということですね。

 ちなみに、not attending schoolと表現した時、あるアメリカ人の方から、「これは不登校のことですか? 不登校のことであればTruant という言葉があります。」と指摘されたことがあります。私は「あなたから見ればそりゃそうだろう」と思いながらも押し通しましたが、果たしてそれで良かったのか、今でもそわそわした気持ちになります。

5.不登校は日本独自

 そもそも国によって学校の制度が違いますので、日本で言う不登校は日本独自のものです。なので、英訳する事が難しいのは当然であって、適切な訳語が見当たらないのも当然だと考えています。

 ただ、この記事で考えたいのは、自分の心の中で、不登校をどういうイメージで捉えたいという気持ちがあるのかを確認することの大切さです。

 これは、不登校当事者との接し方や、自分の言動に影響を与えます。

 だからこそ、なんでもいいから手がかりとして、自分の気持ちを明確にしておく必要があるものと思っています。

 最後までお読みいただきありがとうございます。