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ビジネスホテル殺人事件

あれは私が24歳の時のこと。
『原田伸郎のめざせ!パーゴルフ』のロケのため、
ビジネスホテルの一室に前泊していた。
壁の薄い、古いビジネスホテル。部屋も少し薄暗い。

22時をまわっていただろうか?
部屋でゴロゴロしていると、いきなり悲鳴が聞こえた。

『きゃーっ!』

何事だ!?
あまりの声に飛び起き上がると、
隣の部屋から女性の泣き声にも似た悲鳴が聞こえてきた。

『イヤーーーっっ!』

大変だ!
私は心臓がバクバクしてきた。

もしかしたら、男に暴力を振るわれているのかもしれない。
これは、激痛に耐えかねた女の断末魔の叫びだ。

どうしよう?

女が男に殴られている。これを見過ごして良いものなのか?
すると、女の声が聞こえなくなった。

『え?もしかして、死んだ?』

私は怖くなり、耳を澄ましてみた。
どうやら話し声がする。

良かった!生きている!
するとまた、女の絶叫が!

私は怖くなり、フロントへ電話をかけた。
プルルルル、、、。

『あ、もしもし。隣の部屋から悲鳴が聞こえてます!
多分、男の人から暴力を振るわれています。
事件になってはいけないので、急いで来てください!』

『お客様。承知致しました。
えっと、左隣ということは〇〇号室でよろしいでしょうか?
・・・あ、見に行って頂きありがとうございます。
では、ホテルの者が隣の部屋へ伺います。ありがとうございました。』

良かった!
これで助けられる!

おや?また声がしない。
女の人は大丈夫なんだろうか?

そうだ!壁にコップを当てると聞こえるんじゃない?
昔、ドリフの番組でよくやっていた。

私は備え付けのコップを袋から出して、
声の静まった隣室側の壁に付け、耳を押し当てた。

『・・・・・』

聞こえない。
あのコントはウソだったのか?

とにかくフロントの人が来るまで、
私はしっかりと見守っておかなければいけないのだ。

再度コップに耳を押し当てた瞬間、
大絶叫が聞こえて来た。

『あぁっっっ!気持ちいい〜っ!』

え、、、?

気持ちいい、、、?

気持ちいいということは、もしかして、もしかして、、、。

『イヤーーーっ!!!』

今度は私が絶叫した。

どうしてくれるんだ!
気持ちいいなら気持ちいいと最初から叫んでくれていれば、私も理解できたのだ。

変な声を出すもんだから、私はフロントに電話をし、
更には壁にコップまで押し当ててしまったじゃないか!
これではただのヘンタイである。私は怒りで震えた。

隣では、まだ激しいやりとりが続いている。
フロントから報告の電話が無かったことは、言うまでもない。

だから、壁の薄いビジネスホテルなんてキライなんだ。。。

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