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本当にあったコワイ話

大抵の子供は、母親が大好きである。
どんなに叱られても、やっぱりお母ちゃんの存在は特別なのだ。
当然のことながら、私も母親が大好きだ。
感謝と愛情と、言葉では言い尽くせない深い想いがある。


他方、母親にとっても子供は特別だ。
私は娘を授かって、初めて自分の命よりも大切なものに出逢った。
今、自分が生きている理由は娘だけだと言っても過言ではないほど、
かけがえのない存在である。


そんな母と子の関係だが、私の祖母『タミちゃん』も御多分に洩れず、
やはり母親が大好きであった。
タミちゃんは5人兄弟の末っ子で、人一倍甘えん坊。
何よりお母ちゃんが大好きだ。


「うち、お嫁に行かんと、ずっとお母ちゃんと一緒にいるしな。」
タミちゃんは、いつもお母ちゃんにベッタリとくっついて離れなかった。
嫁には行かないと言っていたタミちゃんだが、年頃になり、
親の選んだ相手とお見合い結婚をした。
4人の子供に恵まれ、甘えん坊だったタミちゃんは、
妻として母として忙しい毎日を送るようになった。


子育てと仕事、家事をこなす毎日だが、あっという間に年月は流れ、
長女と長男はそれぞれ結婚して所帯を持った。
あともう少しだ。子供たち全員が結婚してくれたら自分の役目も終わり、
やっと肩の荷が下りる。
ある日の夜、タミちゃんが寝ていると、
枕元に大好きなお母ちゃんが出てきた。


「タミちゃん。迎えに来たえ。一緒に行こ。」


そうか。お母ちゃん、迎えに来たか。
お母ちゃんはよく「死んだら、迎えにいくしな。」
と言っていたことを思い出した。
あんなに大好きだったお母ちゃんである。タミちゃんは考えた。


「お母ちゃん。うちなぁ、今は行かれへんわ。
まだ結婚してへん子供が2人もおるやろ?
それ片付けてへんのに、置いて行かれへんわ。ごめんなぁ。」
申し訳ないと思ったが、やはり我が子を巣立たせてからでないと、
一緒にはいけない。
するとお母ちゃんは少し淋しそうな顔をして、「そうかぁ。」と言うと、
すうっと消えてしまった。


夢だったのか?
幻だったのか?
タミちゃんは朝起きて、いつものように忙しく家事をしていると、
一本の電話がかかってきた。


「叔母さんが亡くなった!」


えぇっ!?
タミちゃんは、驚いた。
叔母さんとは、お母ちゃんの実妹である。
今日の明け方、階段から落ちて亡くなったそうだ。


夜、うちがお母ちゃんのお迎えを断ったから、、、?
タミちゃんは呟いた。
「うちの代わりに、妹を連れて行かはったんや。」


我が祖母と曽祖母の話ながら、私は背筋がゾ〜っと涼しくなった。


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