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私の旅路

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#ライフスタイル

私の旅路 part9

私の旅路 part9

旅人は夢の中へと潜った。そして、いつもと違う感覚が沸き上がった。  今までの夢は、幽体離脱のような客観的体験に比べ「今日は」リアルだと実感する。

足元から上がってくるヒヤッと凍るような寒気。

目の前は、暗がり。足元の悪い木々の根。深い海のような緑の森。

チクッと、刺さる針のような視線。周りには誰もいない。どこから見ている。

旅人は、竦みそうになりながら歩いた。歩くたびに視線は集まるようだ。

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私の旅路 No.5

私の旅路 No.5

次に訪れた部屋は、時計の針を気にせず喋り続けるお日様とお月様がいる場所だった。私は、お日様とお月様が互いの話題の重さでシーソーをしているように感じた。

また、なんて不思議な空間なのだろうか。徐々に明るさが変わるわけでもなく、彼らの話すタイミングによって傾く外界。

旅人には、ひっそりと魔のタイムサイクルが近づいていた。旅人の規則正しい軸は崩れ、たちまち一風変わった生活がやってきた。旅人は、お日様

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私の旅路 No.4

私の旅路 No.4

私は、いつの間にか旅に出ていたことに気づき、ここらで振り返ることも悪くないと考えたからだ。

そもそもの原点は、「不確かな存在や歪な言葉の日々から抜け出したい。」と願ったことがきっかけだ。その結果、想像を絶するような世界に飛び込んでしまっていたこと。

そして、鏡に映らないもう一人の自分を見つけてしまったこと。その見えない姿の自分と向き合えない私が嫌いだということ。これ以上は、考えても良いことが浮

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私の旅路 No.3

私の旅路 No.3

次に訪れた部屋は、とても寒かった。旅人は、寒さから起こる痺れを微かに感じた。先程の空間と違い、静かだ。

目の前に見えるのは氷山らしき吹雪いた白い三角の形があった。旅人の格好は、少し薄着だった。気付くと身体は冷えきり、所々、硬直し凍傷しかけていた。灰色の景気をした薄暗さ、日も出ていない。誰かが立ち寄りそうな気配もしない。大地には足跡がない。

一体、どうしたものか?動かせる部位を頼りに前に進んだ。

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私の旅路 No.2

旅人が始めに訪れた部屋は、見慣れない人獣たちが昼夜構わず騒ぎ、蓄音機が踊り回る場所だった。

その為、音は複数重なり合いまるでオーケストラの演奏かのごとく、バケツから溢れかえる嵐のようだった。旅人は、嵐の中で生活している内に精神が少しずつ磨り減り、とても人ではない気分になりかけていた。

それでも、楽しく謳歌する人獣たちを見て、心底恐怖に感じながらも尊敬した。こんな空間でよく生活できるなと感心した

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私の旅路 No.1

私の旅路 No.1

あるとき、私は旅にでていた。それは、「みえない世界を廻る扉を見つけてしまったから」かもしれない。

最初は、気味が悪かった。暗く、ジメジメとした重たい雰囲気だったから。怖くなり引き返そうと、身を反転したとき、何か崩れる音がした。とっさに逃げられないと直感した。恐る恐る、ゆっくりと前に、足を踏み出した。そして、扉を見つけた。正直言うと助かると思った。この場から抜けられると思い、藁にもすがる気持ちだっ

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