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子育てと両立する部下のために工夫したこと

6年前に今の会社に転職したときの部下だが、久々に彼女が主催するミーティングに出た。そこでしっかり場をしきっている姿を見て、とても頼もしく思った。6年前、直属の上司になった時は、彼女が育休から復帰した直後で、子育ての両立ができるか不安そうにしていた。一緒に仕事をするにつれ、彼女の強みは絶対うちのチームに欠かせないと思ったので、良い形で支援する方法を模索することにした。ご本人の努力や家族の支援、またいろいろと良い条件が重なって、今は、他の部門からひっぱりだこになるような貴重な戦力になっている。この間にしっかり実績も出してもらったので、もちろん昇給も昇格もしている。運よく条件が重なった点は多いとは思うが、上長としてどのような工夫をしたか、一つの事例として紹介してみようと思う。


自立自走する類のアサインメントへ

まず、仕事のアサインメントだが、育休明けでリズムがつかみづらいこと、突発的なことが起こる可能性を踏まえて、以下のような特性の仕事に役割の変更をした。

スケジュールのフレキシビリティがあること。半日や1日程度の遅延を吸収できるような領域で、かつ彼女にスケジュールを決める権限があるもの。
他の人と依存関係が少ないこと。ほかの人の業務の後続タスクのようなものだと他の人の遅延を彼女のところで吸収することになるので、Stand aloneで動く業務であること。
上長へ承認を取る負担が少ないこと。大がかりな資料をまとめて、忙しい上司の予定を抑えるようなものは控えて、メールで承認を取れるような案件。

このポイントだけ読むとやりがいがないものと思うかもしれないが、PDCAを高速で回すような業務は意外とこのクライテリアに当てはまる。家庭の事情があろうがなかろうが、そもそも自立自走してもらうのが理想形だからだ。

スキルアップは業務時間の中で

目標設定の際にスキルアップの項目は必ず入ってくるものだが、子育て中なので、業務時間外の研修とか自己研鑽は難しい。私自身、スキルアップは常に業務時間外で学ぶ必要性があるとは思っていないし、むしろ、業務時間内で実践から学べることはたくさんあると思っている。なので、会議のファシリテーションや後輩へのコミュニケーションの仕方など、日々の習慣付けや基本動作のアップグレードをスキルアップ目標として設定した。管理職の立場からすると、そういったビヘイビアの改善は、子育て中であろうとなかろうが一番有難いものなのだ。このような趣旨でスキルアップ目標を設定をしたことで、ご本人も劣等感を感じることもないし、肩の荷を下ろすこともできたようだ。

キャリアアップは深める方向で

数年たち、めきめきと力をつけてくれたので、そうなるともっと大きなチャレンジをしてほしくなるのが上司の心情だ。キャリアアップというと、上、横というベクトルがあるが、ご本人の意向もあり、深める方向に進むことにした。似たような業務だが、より複雑性が高かったり、課題解決力が必要になる業務にチャレンジしていただいている。深めるというのは習熟度を高めていく、ということなのだが、新しいものに取り組むよりもこれまでの積み上げの延長線上で仕事ができる方が、スケジュールや段取りの先読みができる。予見性を高めるほど、業務外で突発的な事項が発生してもリカバリーしやすくなるので、家庭との両立を重視したいライフステージでは適していると思う。また、そのような習熟度が高い人はもちろん組織としては重要な戦力になる。

環境づくりはクリエイティブなもの

これは、ご本人の意向やもろもろの制約条件を勘案してケースバイケースで作ってきた環境だ。たまたま運が良く条件が揃ったということもあるし、結果を出しているのは、もちろんご本人の努力や家族の協力の賜物でもある。そして、子育て中の男女それぞれに同じような取り組みが機能するわけではない。ご本人の志向性や制約条件などにより、用意する環境は異なってしかるべきだ。だからこそ、メンバーのそれぞれの事情に合わせて環境を整えるのには、創意工夫が必要だと感じる。職場や業務の特性など制約条件の中で出来ないことも多いが、よくよく突き詰めると、意外にできることもあるのだ。出来ることを発見する喜び、さまざまな要素をカスタマイズして、成長を促す環境づくりをするのは、管理職の醍醐味であると思う。また、無用なプレッシャーや先入観を取り外して、その時その時の状況に応じて前向きな目標設定をするのも創意工夫が求められる仕事だ。

もちろん、これはこれで時間と労力が取られることなのだが、さまざまなバックグラウンドの人が活躍する場を作れずに、「退職→採用→一から育成」というサイクルを繰り替えるよりはよっぽど生産的な取り組みだと思っている。


▼参考記事はこちらのマガジンにまとめています。


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