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歴史小説「Two of Us」第4章J‐24

割引あり

~細川忠興&ガラシャ珠子夫妻の生涯~

第4章 On A ”SABO Tea Room” About Some Last Scenes 


J‐24

 寛永十四年拾壱月末(1637年12月)、江戸城大奥の春日局(かすがのつぼね)から、肥後藩隠居の八代城松江の北の丸に住まうガラシャ珠子のもとへ、密書文が届けられた。

 春日局とは、明智家元家臣斎藤利三の娘、である。地元九州の民でさえ、この八代城に夫婦として居するのがガラシャ珠子であるとは知る由もなかったのだが、斎藤福は三条西公家養女を経て、徳川三代家光の乳母と成り、老中稲葉氏の血縁でもあるため、三代家光と細川忠利を繋ぐ連絡網として、情報を守秘・通達なども兼ねていた。

 夫細川忠興は、ただちに当主嫡男忠利を八代城本丸へ呼び出し、少数の帯同者と共に秘密裏に北の丸茶室にて、三者会談を持つ。

 お福(春日局)からの報せの最重要事項は、二つ。

 一つ目は、珠子の姉上お岸の婿殿である明智佐馬之介秀満の嫡子、肥前富岡城城代三宅藤兵衛重利が、百姓一揆制圧の際、拾壱月拾四日討ち死にされたとのこと。
 つまり、ガラシャ珠子にとっての甥っ子の他界である。

 もうひとつは、富岡城含む島原・天草一帯にて、過酷な年貢取り立てに反乱を起こした一揆軍が、天草フランシスコ四郎(益田ジェロニモ時貞)を中心に、半島の原城に篭城しているが、一揆軍はポルトガルの軍備による援軍待ちである事。これに対抗する官軍である幕府軍は、新たな国交先ネーデルランド(Holland、オランダ連邦共和国)の援軍を要請する予定、とのこと。
 つまり、これは単なる一揆ではなく国際的な宗教戦争にさえ関わってしまう大規模な内乱に成っているのだ。

 そしてこの島原・天草の一揆が、最後の大規模紛争である。

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