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歴史小説「Two of Us」第3章J‐32

割引あり

~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第3章 本能寺の変以後から関ヶ原合戦の果てまで
    (改訂版は日本語文のみ)
    The Fatal Share for "Las abandonadas"

J-32 
~ The other last nights of the ”Battle SEKIGAHARA ”~

 細川忠興の妹、伊也が疑問を投げかける。
「わたくしも、宇喜多家を頼りにしても善いのでしょうか❔」

「はい。どうか千世様と共に行動くださいね❓
 丹後は丹後で、戻ると大変です。田辺城には義父上の幽斎殿と従弟の興元殿がいますが、西側兵を多勢引き付けておく為、日々闘っておられるのです。一色殿も然り。
 宇喜多家に嫁いだ豪姫さまは、とても包容力の深い方。敵味方かかわらず、女子供をかくまってくださるでしょう。付いて行きなされませ」
 

「かしこまりました」
「千世様。お願いいたします。
 多羅と、つづく娘たち四男五男、侍女たちを導いてくださいませ」
「お役目おおせつかり、了承いたしました。
 珠子様。あなた様が義母上で好かった。。。」

 あなた珠子は、向かい合う席から立ち上がり、河北石見の傍に来た。

「河北殿、どうか二人の女性を指揮して、この玉造の門外へ導いてやってくださいませ。
 無事に玉造から遠のいたなら、今度はこの屋敷の籠城に、しんがりをお務めください」
 
珠子は深く頭を下げた。

「珠子殿。お顔をお上げくだされ。
 いつもは忠興殿と先陣切って切り込む身ですが、〈しんがり〉を務められるとは、まことに光栄至極。
 珠子殿は、お逃げなさらぬのですか❔」

「私は、残ります。
 夫忠興は出陣前にも現地からの書状にも、必ず告げております。
『細川家や珠子自身を辱める事態に遭うたれば、迷わず自害せよ。
 決して敵方と判断されし者には、屈するでないぞえ!?』
 と。私はこの忠興殿の信条を守り抜き、さらに自害はいたしませぬ。
 小笠原殿に介錯を。最後の最後までお祈りを捧げる所存でござります」

「最後の最後まで、生き延びる事をあきらめなさいますな。。。」
「はい。かしこまりまして、ござります」


細川ガラシャ珠子@大阪玉造屋敷


「オクとシモは、もうそれぞれに行先を決めております。皆が居なくなった後も、しばらく残った者の世話を。
 その時が来たら、逃げ延びる手筈は、万全ですね❓」
「はい。奥方様。オクもわたくしも整いました」
「二人で、この細川屋敷のこと、私たち夫婦のこと、最後の日のこと、、、覚えているだけ、書き残してくださりませ。」
「有難きご使命、いただきました」
「イト、、、清原マリアは最後まで付き添います。私の後始末です。
 以上で、皆さまお一人お一人にお伝え申しましたが、ご意見や腑に落ちぬこと、ござりませぬか❓」


 誰も、異論はなかった。誰もあなた珠子の決意を翻せないこと、皆が知っていた。
 静まり返り、身動きさえしない中、あなた珠子だけが皆の側で、〆の言葉を述べる。

「困難な事象に遭遇してこそ、人の徳はもっとよく磨かれ、美しい光彩を放つように成るのです。
 皆さまそれぞれの道標を、目指してくださりませ」

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