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短夜の台湾飯 ルーローハン魯肉飯

 閉店前のスーパーマーケットに男はすべり込んだ。煌々と照らされる不夜城にも思える店がうっすら寂し気なのは、大窓のロールスクリーンがすべて下ろされているからだろう。

 足早に惣菜コーナーをサーチする男のなりは、濃紺のTシャツ、生成りのハーフパンツ、メッシュのスリッポンで、この陽気のせいだろう、軽く水シャワーを浴びてきたようだ。

 さて問題なのは、定番のいなり寿司すら残っていない、綺麗になにもなくなった惣菜コーナーの棚だが、こうなることは予想していたので、通り過ぎるように精肉コーナーへと向かった。

 ひき肉が激安になっていた、何か思いついた男はすべてのひき肉をすべてトレジャーハントしたいところ、二パックだけ買い物かごへ放り込み、野菜コーナーに行く途中、無料の牛脂をついでに買い物かごへ入れた。

 チンゲン菜が欲しかったが、小松菜が安いのでそちらを買い物かごへイン。ガラガラの無人レジで会計を済ませた。

 家に戻ると米を炊飯器にセット。本日作るのは家に調味料もあったので、ルーローハン(のような料理)だ。ルーローハンは台湾の定番の丼ぶり飯だ。コンビニのルーローハン弁当で味は知っているが、本場の味は知らない。ネット検索したレシピを見比べて、おそらくこんな味というものを再現する。本国台湾でも料理名やレシピが地域によって色々あるようだ。

 台湾の飯というと、その昔、TV番組「ウリナリ」で結成されたミュージシャンのブラックビスケッツが「ブラビ飯」という、ご飯にラードと醤油をたらすだけの飯を宣伝してたのを思い出す。ボーカルのビビアン・スーが台湾出身でローカル飯として紹介されたような記憶がある。当時コンビニで限定販売もされていた。

 ルーローハンは分かりやすく言えば日本の肉そぼろのようなものだ。
それっぽく作りたいなら、豚ひき肉に、酒、みりん、しょうゆ、砂糖、しょうが、にんにく(チューブでOK) そして八角(中華食材のコーナーにある)を入れて焦げないように煮る。これだけで、それっぽい味になる。

 TV番組「陸海空 世界征服するなんて」の台湾の旅で、バイキング西村が
魯肉飯(ルーローハン)を食べてシーチキンみたいだとコメントして、それに対し相方の小峠に味音痴とツッコまれていたが、豚肉は長時間煮込むと繊維だけ残ってシーチキンのような食感になるのだ。

 さてルーローハン風のレシピはというと、豚ひき肉を鍋に入れて牛脂、ごま油少々、ニンニク、しょうが、オイスターソース、フライドオニオン、紹興酒、しょうゆ、みりん、氷砂糖(はちみつ、砂糖)、ピーナッツ粉(ピーナッツペースト)、一味とうがらし少々、そして八角、五香粉(ごこうふん、ウーシャンフェン)を入れて焦げないように煮る。余裕があれば、ゆで卵を殻をむいて一緒に煮る。八角のおかげで調理中は中華料理っぽい風味が漂う。

 付け合わせの小松菜(チンゲン菜)は耐熱皿に水を少し入れて電子レンジで2、3分温める。面倒でなければ軽くゆでる。付け合わせは、カブやダイコンの浅漬けでも良い。出来合いの玉子焼きを添えても旨い。

ピーッ

さて出来たようだ。
あつあつご飯を丼に盛ってひき肉と小松菜をドサッと大盛りにする。
後はかっ込むだけ、

「いただきます」

豚バラ肉を煮込んだ方が脂が効いてそれっぽくなるが、
これはこれでさっばりめの味が良い。
シャクシャクと小松菜が口の中をリセットする。
かっ込み飯なのであっという間に平らげた。

「ごちそうさま」

残りは後日、味噌を少量足し味変して食べるとしよう。
そして今宵は食後の禁断缶チューハイで余韻を楽しもう。

どうぞよろしくお願いします。