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陽気な室外機との暮らし

わたしは室外機に一目惚れをしました。
その明確な恋心に不安を覚えるほど、好きになってしまったのです。

室外機と初めて出会ったのは4年前のことです。

人間関係でひどく悩み、落ち込んでいるわたしに、

「オッス!元気か?オラ、おめぇの暗い顔を見るためにここに立ってるんじゃねぇんだゾ!おめぇもオラみたいに笑え!」

と声をかけられたような錯覚に陥ったのです。

一目惚れした室外機です。

本来はこの様な姿をしているのですが
当時、わたしの目に映った室外機は完全に笑顔でした。

にっこり。

恋愛感情って僅かながら、謎めいた錯覚だとか誇大妄想で作られている部分があるじゃないですか。
その“僅かながら”の中に有る、ちいさな愛から猛烈に誕生した、人間と室外機の恋なのかもしれません。

この陽気な雰囲気を纏った室外機に恋をしたわたしは、スマホを取り出し、人の目も気にせず、何枚も何枚も何枚も写真を撮影しました。

「スマホの画像フォルダを開けば、いつだって彼に会える…」
それくらいで満足できるのであれば、それを恋とは呼びません。それはただの憧れだったり、好きのスタートラインに立ったばかりの濃度の薄い恋です。

“本物の恋”というのは、ふわふわ甘くてとろける、生クリームたっぷりのパンケーキみたいなものではありません。

本物の恋を抱えた人間は、狂気に満ちています。

本物の恋を抱えた人間は、一歩間違えれば大事件になり兼ねない猛毒を孕んでいるのです。

本物の恋を抱えた人間は、高速道路で速度オーバーしながら危険物を輸送している大型トラックそのもの。

そして、その姿こそが、わたし自身なのです。

「この陽気な室外機ともっと一緒に過ごしたい、いつだって、ずっと側にいたい、あの笑顔を永遠に、自分だけのものにしたい…」

次第にこのような束縛心が芽生えてきたのです。

しかし、よそ様の室外機を自分のものにすることはできません。
仮に、誘拐したいと思っても、地面や壁と一体化しているので連れ去ることは不可能です。

わたしはただ、道の反対側から彼をただ眺めることしかできないのです。

陽気な室外機への思いを抑えきれなくなったわたしは近所の文具店で粘土を購入しました。
そして、約3日間をかけて、「陽気な室外機人形」を完成させたのです。

彼の名前は「オッスくん」

わたしのnoteのアイコンはこの陽気な室外機人形「オッスくん」です。

普段は机に飾って毎日眺めたり、カバンに入れてお出かけをしたり、実物のオッスくんと記念撮影をしたこともあります。

めちゃくちゃ愛おしいですね。

こうして、わたしの恋は無事に実りました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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