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『宇治拾遺物語』絵仏師良秀02(ウソ前編)

 いまから書くことは概ねウソなのだが――妖怪・火車(かしゃ)は、もう地球をまるごと乗っ取っている。


 火車と言えば、悪行を重ねて死んだ者の亡骸を奪いに来る妖怪だ。正体は猫又だという話もある。
 江戸時代後期の雪国の生活を伝える、かの古典『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』にも、「火の玉二つが飛んできて、棺から亡骸を奪おうとしかけた」という趣旨の記述が残されているし(これは本当)、「絵仏師良秀」の載る『宇治拾遺物語』も同様に、火車の話を収録している(これも本当)
 しかも火車については、雪国・新潟のみならず、岩手や山形、群馬、あるいは愛知や鹿児島にも、近い伝説が残っている。
 ちなみに経済的に赤字のことを「火の車」というが、これはそれほど火車から受ける責め苦が厳しいということに由来する(そう、本当!)


 水は、状態変化をしながらも永遠に世界を巡っている。
 これに対して、火にはどこか刹那的な儚さがある。マッチ売りの少女が見る幻影は束の間の幸せであるし、その作中には流れ星への言及もある。花火は言うまでもなく一瞬のアートだし、京都五山の送り火だって、2日3日といつまでも続けるものではない。
 世界には延々と天然ガスの燃え続ける大穴や火山もあるにはあるが、さすがに地球丸ごとを乗っ取るようなイメージはない。


 しかしながら、火車は妖怪だ。
「妖怪の火は、いつまでも燃え続けてしかるべきであろう」
 そう考えて、炎をよじらせながら燃え続ける火車をCGアートで描いた画家が、平成を生きたことをご存じだろうか?

(明日へ続く)

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