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『古今著聞集』刑部卿敦兼と北の方03(ウソ後編)

(昨日からウソの続き)

 その代わりと言ってはなんだが、厚生労働省の注目した昆虫の名は、バッタ目キリギリス科の「セスジツユムシ」という。
 この昆虫が分泌している求愛行動を起こす要因になるフェロモンを採取し(その方法は社外秘)、のど飴に混ぜる(もちろん製造方法も社外秘)。
そのフェロモンには、別に歌を歌わせる効果はないのだという。
 しかしながら飴をなめれば普段の声に性的な魅力が加わる。そうして適齢期の男女同士が惹かれ合うという極めて都合の良い効果を持つ。ここには幼児が性犯罪に巻き込まれることを防止する効果もある。もちろん購入の際には身分証を提示する。成人しか服用できない。

 ここで余談なのだが、メジャーな昆虫であるイナゴはどうなのだろう? イナゴだって鳴く。別にイナゴだっていいんじゃないか? そんなセスジなんとかという聞いたことのない昆虫をわざわざ使う必要はないじゃないか。なによりイナゴの佃煮を食べる長野辺りでは、少子化が食い止められているのではないのか?
 そこで長野県民の既婚率を調べたところ、2005年には全国9位という高水準の既婚率だった。ところがだ。不思議なもので、そこから現在に至るまでにはなんと既婚率のワースト3に転落している。
 これを「長野の伝統食が若者に受け継がれていないためだ」と主張する声も聞かれるのだが、残念ながらそうなのか、そうではないのか、なにかを断定できるほどのデータを見つけることはできなかった。
 ただ一つだけ言えることは、間違えてトノサマバッタで作ったのど飴を食べると、人はひたすらジャンプをするようになる。そういう事例があったことだ。トノサマバッタは「キチキチ」と跳ぶが、求愛のためには鳴かないのだそうだ。
 ちなみに某大手食品会社の名前を先ほど伏せたのは、この「トノサマバッタ事件」に関して、3段跳びのアスリートへのドーピング疑惑に絡む進行中の裁判があるためだ。

 ともあれ少子化を食い止めるべく種々の昆虫を試した結果、セスジツユムシに白羽の矢が立ったのである。

 ちなみに今回、厚生労働省が「セスジツユムシ」を選んだことには、もうひとつ極めて大きな意義があると考える。
 実は例えばセミもコオロギもキリギリスも、求愛行動で鳴く習性を持つのはオスばかり。ところがこのセスジツユムシに関しては、なんと雄雌の分け隔てなくどちらも「チチチ」と鳴くのである。
 他国に比べてジェンダーレス化に後れを感じる旧態依然な日本だけれど、このセスジツユムシを日本の省庁が自発的に選んだことに関しては、各界の学者たちから概ね好意的に受け取られている。

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