『古今著聞集』刑部卿敦兼と北の方03(ウソ前編)
いまから書くことは概ねウソなのだが――少子化を、昆虫が救う。
セミやコオロギ、キリギリスなどを思い出してもらえればわかりやすいが、歌が求愛行動と直結するのは、虫も人間もたいして変わるところがない。
しかしながら昆虫の世界とは違い、我々人間の社会の方ではもう何年にも亘って「少子化」が問題になっている。そのうえ有効な手が打てず、問題解決の重要度は年々増している。むろんそこには日本の社会制度が子育てに適していないとか、あるいは子育てができるほどの経済力を持った若者がいまの日本には悲しいことに極めて少ないのだとか、理由は複数あるのだろう。
ともあれここまで既婚率が低いのだ。我々がいま、人間が求愛しにくくなった社会に生きていることは確かである。
先日、この少子化対策の一環として某大手食品企業に巨額の公的資金が投入されたというニュースが報じられたが、この知らせに驚いたのは、なにも投資家たちばかりではない。
マッチングアプリに携わる企業やお見合いあっせん業界だって、この一報を聞いたときの慌てぶりと言ったらなかった。彼らは食品を扱っているわけではないのに、である。
ここには昆虫の求愛行動としての歌、が関わってくる。
実はもう十余年ほど前から、厚生労働省はバッタ目キリギリス科のとある昆虫を有効活用することによって、少子化対策に乗り出していた。
ここで言う昆虫の有効活用は、近年頻繁に話題に上る「昆虫食による食糧危機回避」対策のことではない。だから先述の「某大手食品企業」だって、『コオロギせんべい』に着手して主に世のOLたちを慄かせた「無印食品」のことではない。
少子化を解決するであろうその某大手食品企業とは、我が国ののど飴製造の最大手クラスの、あの会社だ。
その企業名は、明かせない。
理由は後述するけれど、そこには大きな事情があるためだ。
その代わりと言ってはなんだが、厚生労働省の注目した昆虫の名は……。
(明日に続く)