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『竹取物語』イントロ03(古典ノベライズ前編)

(過去掲載分 ↓ から続き)

 下校時の高校正門前でトラックに轢かれた結果、わたしはこの『竹取物語』っぽい世界に転生してきたようだった。
目の前の意味不明なミラクルには、そういう理解をしておいた。

「轢かれたのが、学校帰りで良かった!」

 だって学校指定のカバンの中には、古典の教科書が入ってたから。
 無敵(チート)の模範解答を手に、なるべく前向きに、この世界で生き抜くと決めたんだ。
 古典の教科書に従って、おじいちゃんが竹を取るたび「最近竹の中から黄金が出てきてウハウハなんじゃ」と言っていたので「あ、それ、わたしの起こしたミラクル」みたいに適当なことを言っていたら、とうとうホントにわたしのおかげと老夫婦は認識したっぽい。
 いままで以上に、下にも置かずに育ててくれた。
    *
 ミラクルは、竹から出てくる黄金だけじゃなくて、わたしの体にも起こった。
 わたしは若竹が伸びるみたいに、あっという間に成長した。
 3ヶ月も経てば、なんと身長はおじいちゃんたちに追いついたんだ。
茶色い頭巾を取ったおじいちゃんの、薄毛の頭のてっぺんが見えるほどまでに。

「食べ物が、体によぉく合ったのかねぇ」

 理由なんか知らないけど、そうなっちゃったんだからしょうがない。
 古典の時代とか伝説の世界って、そんなもんなのかもしれないし、などと古典の教科書を持っているわたしはメタフィクショナルにそんなことを考えた。

(明日に続く)

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