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KNOSIS KOUBOU@渋谷club asia 2023.12.01(Fri)

彼は一体、この瞬間にどれほど命を捧げているのか。
我々は果たして今この瞬間に、全身全霊をかけているのだろうか。
そんなことを自問自答するライヴとなった。

"世界が終るまでは~"

ステージ上の4人が、聴き覚えのある曲をアカペラで歌い始めた。WANDSの「世界が終るまでは」だ。
突然歌い始めたメンバーに対して笑いが起きつつ、ライヴを待ち望む観客もすぐに乗っかり、アカペラの輪が徐々に広がっていく。
たっぷり時間をかけて歌い終わると、WANDSで温まったフロアからは歓声があちこちから上がる。
双方、準備は万端になった。

一曲目、「星砕」の開始と共に、脇目も振らず一目散にフロアにダイブするRyo(Vo.)。彼にとってライヴとは、最初から100%、全力で挑むものなのだ。
獲物を狩る猛獣のような目で曲の開始部分を歌ったかと思えば、途中のメロディアスなパートでは何かを届けるような切なげな表情で、遠くを見つめて歌い上げるRyo。そのギャップが本当に美しく、今でも脳裏に焼き付いている。
彼の表現する儚げな世界に全員で浸っていると、"動け!!!"の咆哮で現実に引き戻される。そのままラストのブレイクダウンで先ほどまでの世界は崩れ落ち、再びフロアは混沌と化した。

"KNOSISです。全員しねと思ってやってます。なぜなら自分がしぬ気でやってるからです"

音楽に対する思い、ライヴに対する思いを吐露するRyo。

"俺はここに、しぬ覚悟で来てます。君たちはどうですか"

そう笑顔でフロアに語りかける。これが俺の生き様だが、君たちはどう生きるか。そう我々に語りかけてくるのは宮崎駿ではない、Ryo Kinoshitaだ。
我々に問いかけを残して始まった「厄災」では、観客は自分の生きた跡をここに刻むように全身全霊で体を揺らし、彼の思いに応えていた。

"やれるっしょ?"と言い放ち「神喰」がスタート。もちろんやれます。観客の全員がそう心の中で宣言したに違いない。体が引きちぎれそうなほど腕を回し脚を蹴り上げ、気づけばフロアは飢えた肉食動物の檻となっていた。

12月、KNOSISはギタリストにcoldrainからsugiを迎えている。KNOSISとcoldrainはファン層も被っていることから、観客の中にはsugiを見られることに興奮している人も少なくない。
なので当然sugiに対する野次も飛び、彼が"うるせー!"と一蹴して笑いが起きる場面もあった。

sugiへの野次に笑いつつ、Ryoがマイクを握った。
"体が戦いを求めてます。戦えよ渋谷!!人生かけて戦えよ、渋谷!!"
この瞬間、彼がエレン・イェーガーに見えた人は何人いただろうか。

"カバーやります。モッシュしてえ奴、ここしかねえから"
そうして始まったのが、ファンにもお馴染みになった「Davidian」だ。続く「March Of The Pigs」では"回れ渋谷ー!!"と叫びモッシュとサークルの豪華2点セットを実行可能にしてくれた。

続くはこれまた音源化が期待されて止まない「火脂」を投下。全身を震わせメロディックに歌い上げると、"あちぃ!!"と叫びRyoが服を脱ぎ捨てた。
観客もあちぃよ!!と返すが、"嘘つけ!!"と言われてしまい、そんなじゃれあいに思わず微笑んでしまう。

火脂で轟轟と燃え盛っているフロアに「狂火」を注ぎ、更に炎の勢いを強くしていく。深紅の照明とフロアの熱気も合わさり、会場全体が止まることなくヒートアップする。

ここでRyoと共にしぬんだ。ラスト「忌鬼」では、それまで灼熱地獄だったフロアに最後の燃料投下をする勢いで、Ryoも観客も全員で頭、腕、脚を空中へ振り上げる。"渋谷、何が欲しいんだよ?"というRyoの問いかけには、もっとKNOSISをくれよ!!!と全員が思ったことだろう。

全8曲を披露しKNOSISはステージを去った。
Ryoはしぬ気でやっているとMCで語ったが、KNOSISを見る度に「比喩ではなく、本気でそう思っている」と実感する。
彼のステージ上でのパフォーマンス、表情、目つき、すべてに命を感じるからだ。これはKNOSISを生で観ないと伝わらないだろう。ライブレポを書いている身からすると、文面で伝えるべきなのだろうが、正直文面だけで分かった気になってほしくないとも思う。そのくらい、彼のステージは命そのものなのだ。
同時に、彼の問いかけによって、果たして自分は今この瞬間に自分の人生を生きることができているのだろうかとも自問自答する。
次にKNOSISを観た際には、自分は生を実感することはできているのだろうか。それを確かめるために、我々はKNOSISのライヴに通い続けるのだろう。

<セットリスト>
1. 星砕
2. 厄災
3. 神喰
4. Davidian(Machine Headカバー)
5. March Of The Pigs(Nine Inch Nailsカバー)
6. 火脂
7. 狂火
8. 忌鬼

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