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理性も自由も声高に #10 旅 インド③

チャンディガール。知っている人は知ってるし、知らない人は全くしらない街であろう。もっと言えば建築をかじったことがある人なら当然知ってるし、別に興味がなければ行く必要もさほどない場所だ。インド人に「Which city did you went?」と訊かれて「Chandigarh.」と答えたらほとんど「Oh, it’s beautiful city.」と返ってくる。

チャンディガール。それはデリーから電車でたった3時間で行ける街。

レジェンド中のレジェンド、建築家、ル・コルビュジェによって計画された、計画都市である。ほぼ何もないゼロから都市全体を作った壮大な計画。建築大学院をストレートで行くことができないくそ雑魚学生もどきとは言え、インドに来てここに行かないわけにはいかない。

ル・コルビュジェ・・・フランスの建築家。ドミノシステムを始めとし、近代建築五原則を唱えた、モダニズムの巨匠。工業化、自動車が普及する当時の未来に向け、過度な装飾を否定し、合理的な建築や都市を目指した作品で知られている。ちょっと前に世界遺産になった東京・上野の国立西洋美術館を設計した偉いお方です。

学部ギリギリ卒の多少建築齧った程度の知識では、とりあえず合理的な建築を発案したんだなというイメージしかなかった。それは、実際この街を見てみて、正しかったし、一方で、理解不十分であった。

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とりあえず、街や建物の紹介。道路も碁盤の目のように直線的で綺麗。交差点は必ず環状交差点で信号もある!クラクションがうるさく、排ガスがやばいのを除けば、インド特有のごたごた感はない。間違いなく清潔でbeautiful cityである(※インド比)。

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政府美術館。入館料、撮影許可合わせてわずか20ルピー(約35円)。これもコルビュジェによる設計。コルビュジェの合理性が垣間見える。壁が展示壁なのはごく普通たが、壁の端ギリギリに梁を乗せ、展示物の上に直接天井を載せないことにより、展示物の照明のように太陽光を入れている。その梁の上に屋根を支える梁があり、

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これがわざわざ斜め方向なのは、横から入ってくる直射日光を間接照明のごとく柔らかい光に変えたり、強烈な西日を遮ることを兼ねているという、すごいディテールである。こういうやり方があるのかと、すごく納得させられた。

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さて、この街で最も行ってよかったと思ったのは、この街でも特に有名な建築である、議事堂、高等裁判所などの政府機関セットとなったキャピタルコンプレックスである。これもコルビュジェによる設計。政府の施設なので、政府の観光案内所に集合し、ツアー(無料)で入る。地球の歩き方によると3回目のツアーは2時からとなってが、3時になっていた。

ここでは打って変わって、パワーを感じられる。

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高等裁判所。中には入れなかった。とりあえずでかい。けど、右下の小さな半屋外空間にある、鉄骨で薄いコンクリートの屋根を支えていく地味なストロングスタイルも気になる。

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反対側には議事堂(奥)。

二本の塔みたいなものがある。これは議事堂のホールである。確か「太陽の塔」、「月の塔」みたいな説明であった。ほう。

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うってつけはこれ。対峙する裁判所と議事堂の間にある広場の中間点にある。でかい。名はオープンハンドモニュメント。自由の象徴で、竣工時にはコルビュジェ自らここで演説したそう。なんと風で「手」が回転するクレイジーな仕様。

議事堂内部は撮影スケッチ不可で滞在許可わずか10分であったが、ホールまで登っていくスロープ、森の木々のようなちょっと暗い列柱空間に差し込む光が素晴らしいものであった。水面を反射する丸い反った屋根をもった外観を載せておこう。

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太陽、月、回転する自由の手。想像していた合理性とは別に好き勝手やってんなと感じた時、何故か「自由」という言葉が降ってきた。

合理性とは別に縛りつけるルールではない。何かと闘うためには、強烈な言葉を使ってもいいし、強い造形をしてもよい。広場がすぐに街から見えてしまわないために、土をてんこ盛りに盛ってところ変わって、視界を遮っても良い。アーメダバードでも、ドーシーという建築家はわりと同時期に洞窟みたいなものを作ってる。洞窟。太陽。月。大きな手。そこには、自由の獲得みたいなものを感じた。

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そう言えば、巨匠の線は思ったよりフニャッとしていた。色塗りも想像よりかはざっくばらん。でも手書きの線で伝わってしまう。技術もきっとあるけど、その前に気持ちの問題だろう。自由。何故かわからないけど、とても勇気が出た。




最後まで、ありがとうございます。糧になります。