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サマースクールDay1の様子(後半)をお届けします|北欧デンマーク流の探究学習を学び・実践する「なめりかわ未来学校(サマースクール)」

対話×体験で探究力を育むデンマーク流の学習を、異年齢で実践するサマースクール「なめりかわ未来学校」。
2023年8月25日~28日の4日間に渡って富山県滑川市で行われたサマースクールのプログラムの様子を全7回に渡ってお届けします。
今回は、サマースクールDay1の様子(後半)をお伝えします。

<公開中の記事>
【1】共同記者会見の様子
【2】オリエンテーションの様子
【3】サマースクールDay1の様子(前半)
【4】サマースクールDay1の様子(後半)


「なめりかわ未来学校」Day1後半(午後)

前回の記事では、Day1の前半を紹介しました。

  1. デザイン思考をベースとしたインプット

  2. 産業機械メーカー・スギノマシン本社を訪れ、世界で闘う「超技術」を見学

  3. 事前課題として出されていた「わたしのこころざし」のグループ内発表と対話

ここまでが午前中に行われたプログラムです。

午後のプログラムは以下の通り。自然を学ぶフィールドワークを行います。

4. 早月川河口で川遊び
5. 早月川上流の「みのわ温泉村」で川の見学
6. 東福寺野自然公園での交流

早月川河口で川遊び

昼食の後、滑川市と魚津市の間を流れる早月川の河口へバスで移動しました。実はこの時、連日の猛暑とかんかん照りで、早月川はすっかり干上がった状態。

干上がった早月川(砂利の場所)、奥には海がある
通常時は色が薄い位置まで水があると推測できる橋脚

こんな早月川は、これまで見たことがありません。いつもはなみなみと流れる川ですが、この日は流れが全く無く、砂利や砂が見えています。

出発前に「おもしろい」を発見するポイントである「モヒカン」を学んでいた子どもたち。彼らの目に、この風景はどのように映ったのでしょうか。

川の水が枯れたことは、地元の新聞やテレビでもニュースになっていたほどです(日付は前日)。
参考:県東部の早月川で水位ゼロ続く|北日本新聞webunプラス
参考:酷暑と雨不足で川の水が枯れた… 急流で有名な早月川が1か月以上「水位ゼロ」 富山 | 富山県のニュース|チューリップテレビ

しかし、川の端にわずかに水が残っている場所があったため、そこで川遊びをすることに。

水に入る子、それを眺める子、魚を見つける子、周辺を散策する大人など、みなさん思い思いの時間を過ごしていました。

川の端にわずかに残る地下水が湧き出ているところ(奥に見える観覧車は遊園地・ミラージュランドのもの)
透き通ったきれいな水に喜び、早速入る子どもたち
川遊びに備えて水着をしっかり準備し、泳ぐ子も(この後着替えていました)

早月川上流の「みのわ温泉村」で川の見学

さて、川遊びを楽しむ中で、1つ疑問が生まれます。早月川河口にこれだけ水が無いということは、上流はどうなっているのでしょうか?

突然ですが、3択のクイズです。考えてみてくださいね。
①上流にも河口と同じくらい水が無い
②上流には河口よりもっと水が少ない
③上流には河口よりも水がある

ちなみに、子どもたちの予想は①が多かったです。この答えを探すため、バスで早月川の上流にある「みのわ温泉村」へ移動しました。

早月川上流にある「みのわ温泉村」
早月川上流を流れる水

上の写真の通り、早月川上流では水は少ないものの流れていました。干上がってしまった河口とは大違いです。つまり、先ほどのクイズの答えは「③上流には河口よりも水がある」ですね。

フィールドワーク中、一般社団法人 立山黒部ジオパーク協会の専門員、森内裕之さんが早月川の河口で水が涸れた理由を解説してくれました。

ジオパークとは、地球や大地を意味するジオと公園を意味するパークを組み合わせてできた造語で、大地に関わる生き物環境や地域独特の文化を併せ持つ、地球遺産と呼べる地域のことです。
参考:立山黒部ジオパークとは|立山黒部ジオパーク 高低差4000mロマン

森内さん:立山黒部ジオパークのエリアは約3,000mの立山から深さ1,000mを越える富山湾の深海まで、約4,000mの高低差があります。山と海の距離はわずか50㎞ほどと短いため、山から流れ出る川が急流となります。
特に早月川は全国でも屈指の急流河川です。水が一気に流れやすく、猛暑と雨が降らない日が続いたために水が枯れてしまったのだと言えます。
河川は広大な扇状地を作ります。早月川河口一帯の早月川扇状地は、平地が多く田畑にしやすい・家や工場が立てやすい土地だと言えます。早月川扇状地の山に近いところには、河岸段丘と呼ばれる階段状になった地形が見られます。
扇状地は水が浸み込みやすいため、伏流水(河川の底など地下に潜って流れる水。粒の粗い砂や土の場所によく見られる)が多くあります。
早月川河口で遊んだ場所に水が残っていたのは、伏流水が湧き出る場所があるからだと思います。川の表面には水が無くても、伏流水として見えない場所を流れているんです。

解説する森内さん(左から2人目)

子どもたちは、早月川河口で自分が立てた予想(仮説)を上流で検証でき、納得した様子でした。

こうして、自分の考えや疑問に思うこと、その理由などを、実体験を通して学ぶことができるのが「なめりかわ未来学校」の良いところです。子どもたちは、社会科や理科などの教科に留まらないことを幅広く学んでいました。

東福寺野自然公園での交流

自然を学ぶフィールドワークの後は、東福寺野自然公園に移動して思いっきり遊びます。

ここで出番が来たのが、声で奏でるアフリカ発の楽器「カズー」です。実はこの日の朝、市役所で一人ひとりに「なめりかわ未来学校」のグッズが配布されており、「カズー」はその中の1つでした。

みんなでカズーを吹きながら、東福寺野自然公園のメイン遊具の1つ、「ふわふわドーム」へと向かいます。音楽や体を使った活動は、年齢や背景が異なっても、互いに繋がるきっかけを与えてくれますね。

一人ひとりに配布された「なめりかわ未来学校」のウェルカムパック(写真では紫色のものがカズー)
「カズー」を吹きながら「ふわふわドーム」に向かう子どもたちと大本さん(右)
ふわふわドームの向こうに見えるのは富山平野と富山湾(右側)

子どもたちは今日のプログラムの中で最もはしゃぎ、ふわふわドームで飛び跳ねたり「カズー」を鳴らしたりしていました。

大人も子どもも、夏空に向かって思いっきりジャンプ!
「カズー」を鳴らす子と大本さん、外川さん

遊んだ後、たくさん汗をかいたみんなに、アイスのプレゼントがありました。これにはみんな大喜びです! 好きなアイスを選んでバスに戻りました。

東福寺野自然公園からバスに戻る道中
アイスはクーリッシュが人気でした

今日のふり返り

市役所に到着後は、「今日まだ1回も話していない人」と2~3人のグループを作って振り返りを行いました。「今日印象に残ったこと」と「明日もっと行ってみたい場所」について話します。

なめりかわ未来学校の特徴の1つが、参加者が「ミックスエイジ(異年齢)」であること。グループでのふり返りでは、大学生や高校生が話し合いの中心を務め、小中学生の意見を引き出していました。

グループでのふり返りでは、大学生が進行役を務めることも多い
「今日まだ1回も話していない人」とのグループでも、積極的に話す子どもたち

チェックアウト

プログラムの最後は、毎回チェックアウトを行います(最初はチェックインがあります)。

「私が思う滑川のすごいところ」を交えた今日の感想、「チェックイン」の言葉を、一人ずつ言います。今日一日かけて、滑川市内にある企業(スギノマシン)見学や川遊びなどのフィールドワークを通してすごいと感じたところはどこだったのでしょうか?

ここで、最初に手を挙げて話す人は「ファーストペンギン」と呼ばれ、最初の一歩を踏み出す勇気のある人とされています。

今日の勇気ある「ファーストペンギン」は、この子でした。

最初に発言し「ファーストペンギン」になった子

<私が思う滑川のすごいところ・今日の感想(小学生・中学生)>

  • いろんなところが見えた

  • 全体を通して住みやすいまち

  • 自然が豊かなところ

  • 休日に滑川で今日行ったようなところに行きたいと思えた

  • 海も山も自然豊か

  • 心地いい場所、心も体もリラックスできる場所がある

  • 工業が発展していて、技術がある

  • 自然があり、空気が綺麗

  • バスからの景色が綺麗だった

<私が思う滑川のすごいところ・今日の感想(高校生・大学生・大人)>

  • みなさんの素敵な笑顔を見て元気になった

  • いいまちかどうかは、その理由(エビデンス)を考えてほしい

  • 人前で喋るのはとても勇気がいること、他の人の発言に対しても拍手している姿が見られて良かった

  • 水が流れていない早月川を見て驚いた

  • 水が涸れると安全に川遊びができる

  • 地域においては仕事を作る視点も大事、スギノマシンさんがスーパーニッチリーダーとして活躍している

  • 「カズー(アフリカの楽器)」をまちなかでも楽しめる

  • みんながどの場所へ行っても全力で楽しんでいたのが印象的で地元についても詳しかった、もっと興味を持って詳しくなるとさらに良い

  • みのわに行ってみたら山が印象的だった、自然のままの多様な木が生えていた

  • 素敵な笑顔が輝いていた、一人ひとりが輝いていることと自然の両方があるのがいい

  • 明日からも元気いっぱいに笑顔で頑張ってほしい

8月初旬のオリエンテーションに参加できず、Day1のこの日から参加した2人に、解散後、参加の理由と感想を聞きました。

  • もえりさん(大学4年生):去年、大学の研究で滑川市・上市町の文化について調査した経緯があり、報告のため滑川市役所を訪れた際にこのプログラムを知り、参加を決めた。いろんな人と仲良くなりたい。滑川は海のイメージが強かったが、山が立派だった。コンパクトな市だから1日でどちらも回れて両方で遊べるのがいい。どこに行っても(遊具が無くても)、子どもたちが遊びを見つけて常にはしゃいでいて、元気さや子どもの可能性を知ることができた。

  • シンくん(高校3年生):受験勉強で勉強一色になっていたところ、叔父にこのプログラムの存在を教えてもらい、気分転換に参加した。今後の進路を考える上でも参考にしたい。スギノマシンは世界一の技術があるすごい会社だった。企業見学から自然遊びまで、幅広く体験できたのがとても新鮮だった。

2人とも滑川市外在住ですが、「滑川市に興味を持っていろんな場所を見て回るうちに滑川市の魅力をたくさん発見した」と話していました。

「なめりかわ未来学校」はまだ始まったばかり。異年齢、そして滑川市内外からの参加者が一緒に取り組むことで、どんな相乗効果が生まれるのか、楽しみですね。

ご案内

次回の記事では、なめりかわ未来学校Day2の様子をお伝えします。

サマースクールDay2の様子をお届けします|北欧デンマーク流の探究学習を学び・実践する「なめりかわ未来学校(サマースクール)」

Day2は、グループワークが始まります。4つのグループに分かれて目的地を話し合い、まちに出ます。次回もお楽しみに!

<公開中の記事>
【1】共同記者会見の様子
【2】オリエンテーションの様子
【3】サマースクールDay1の様子(前半)
【4】サマースクールDay1の様子(後半)


テキスト・写真:なめりかわ未来学校協議会/
        株式会社プロジェクトデザイン 古野知晴


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