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サマースクールDay2の様子をお届けします|北欧デンマーク流の探究学習を学び・実践する「なめりかわ未来学校(サマースクール)」

対話×体験で探究力を育むデンマーク流の学習を、異年齢で実践するサマースクール「なめりかわ未来学校」。
2023年8月25日~28日の4日間に渡って富山県滑川市で行われたサマースクールのプログラムの様子を全7回に渡ってお届けします。
今回は、サマースクールDay2の様子をお伝えします。

<公開中の記事>
【1】共同記者会見の様子
【2】オリエンテーションの様子
【3】サマースクールDay1の様子(前半)
【4】サマースクールDay1の様子(後半)
【5】サマースクールDay2の様子


なめりかわ未来学校Day2

Day2は、8月26日(土)に中滑川複合施設メリカ3階ホールに集合しました。

この日のテーマは、“「まち」に出て、改めて滑川と出会おう! 「私のつくりたい滑川」を起点に、アイディアを深めよう” 。実社会との触れ合いを通したアイディアを得ることを目的に、チームごとに滑川市内で自分たちが興味のある場所を巡ります。

これから出かけるコースを設計した滑川市の上田教育長が、各スポットでインタビューに応じてくださる方の魅力を紹介しました。

参加者はDay1で発表した「私のこころざし」を忘れないようにしながら、子どもたちが主体となって、小学生から大学生まで異年齢のメンバーが入った4つのチームに分かれ、コースを選びました。

チーム名とコース、インタビュー相手(その人の魅力)は次の通りです。

  • チームモンキー
    訪問先:移動時間最短! じっくりインタビューコース

  • チームからす
    訪問先:新たなまちづくりの秘密にせまる まちなか てくてくコース

    • 中滑川複合施設メリカ:メリカ管理人 樋口さん

    • 朱雀堂:店主 柿澤さん(空き家を活用してお店をオープン! 瀬羽町を楽しいまちなみにしたい!)

  • チームマンゴー
    訪問先:2つの博物館に行ってみよう ミュージアムコース

  • チームにぎわい
    訪問先:駅周辺を楽しく にぎわいづくりコース

チーム名は、「全員が好きなもの」や「しりとりの何番目」など、「自分たちを表すもの」をチームメンバーで相談して決めました。

これまでのオリエンテーションとDay1は、一緒に申し込んだ仲の良い友達と行動することが多かった子ども達。Day2は初めて話す相手とチームを組むことになり、初めは緊張した面持ちでした。

また、外に出る前に「自分たちを紹介するもの」「インタビューで質問してみたいこと」「訪問先へのお礼の仕方」を相談。中には、「なめりかわ未来学校」を紹介するため、WelcomeキットとしてDay1に配布されたスケッチブックや白地のうちわに絵やステッカーを駆使して作っていた子もいました。

「チームモンキー」の訪問の様子

滑川市役所で水野市長にインタビュー

「チームモンキー」は滑川市役所と中滑川複合施設メリカを訪問します。まず、市役所へ歩いて移動しました。土曜のため閉庁日でしたが、市長室で水野市長が待っていてくださいました。

滑川市役所の市長室にて

ここからは、水野市長へのインタビューの内容をお伝えします。

<子どもたちからの質問>

ー市長になったのはどうしてですか?

水野市長:「滑川市を良くしたい」という想いがあったからです。

18歳で県外に出て民間の会社で働き、25歳の時にUターンして市役所職員になりました。市職員時代、最後に在籍したのは都市計画課。「10年後、20年後の将来的な滑川市をどう作っていくか」を考える機会が多かったです。

「地域の声を市役所に届ける側に立ち、滑川市を良くしていきたい」という想いがあり、46歳の時に市役所を辞めました。市議会議員選挙に立候補し、1期目は無投票選挙で初当選。年4回で4年間、計16回の議会で質問し、それを広報誌にまとめ、地域でポスティングしながら住民の意見をヒアリングしました(2期目は初の選挙戦でトップ当選)。

54歳の時、3期目で無投票当選したものの、市長選に出馬して現職に敗北しました。その後は民間企業で4年間勤務。次の市長選に出馬するか迷っていた時、想いを察した奥さんが背中を押してくれたのがきっかけで、ラストチャンスのつもりで再度出馬したところ、市長に当選しました。

市長になって1年半(5キロ痩せました)。市民の声を聞きながら、「笑顔溢れる素敵な街にしたい」という想いがあります。

市長としての想いを語る水野市長
手元にあるのは「なめりかわ未来学校」と書いたうちわ

ー選挙の緊張感はどうですか?

水野市長:とても緊張します。子どもの頃は人前で話すタイプではなかったんです。

ー市長になって嬉しいと感じる瞬間は?

水野市長:市民の方から、「市役所の雰囲気が変わってきた」「窓口対応が明るくなった」と言われ、嬉しかったです。

ー市の税金収入と支出はどのくらいありますか?

水野市長:予算130億円のうち、税金収入は1/3程度の50億円。他は国や県からの補助金や借金です。支出は、動かせない経費として毎年100億円ほどは必ず出ていきます。

ー毎年必ず出ていく、動かせない経費とは何ですか?

水野市長:扶助費(乳幼児医療費・児童手当などの育児や介護にかかるお金、障がいのある人・生活困窮者等を福祉の面で支えるお金)、学校教育費、総務費、市職員の人件費、土木費など。このうち、人件費についてですが、市職員数は人口1,000人に対して職員4人の配分で、他市町村に比べて少ない(全国ワースト2の)ため、増員予定です。

ー大切にしていることは何ですか?

水野市長:報連相(ほうれんそう)を大切にしています。「普通なら聞いて嫌だと思う報告を最優先にしてほしい」と伝えています。また、同じ失敗は2回しないようにと常々話しています。

市長の1番大切な仕事は、決断することです。そして、その決断の責任を取らなければなりません。みんなのために、滑川を1つにまとめて良い街にしていきたいと思っています。

高校生からは少し踏み込んだ質問も
1人1人が考えてきた質問を話す様子

このほかにも、水野市長は子どもたちからの質問に丁寧に答えてくださいました。そして、子どもたちは話を聴いた感想を水野市長に伝えました。

<子どもたちの感想>

  • 市長になるまで辛いこともあったことを知ることができて良かった

  • 市長はもっと仕事が楽だと思っていたけど、想像していたよりバリバリされていた。みんなに伝えて市長の仕事が大切だと分かってもらいたい

  • 面接では1人1人の顔を見るなど、コミュニケーションを大切にされていることが分かった

  • 民間企業や県外での経験で市長の視野の広さを身につけたことを知った。立場が上の人は神経をすり減らすと聞いたので、体を大切にしてほしい

この後、「話を聴かせてくれたお礼に」と、「チームモンキー」のみんなはジャンボリーミッキーの踊りを披露し、水野市長を喜ばせました。

「カズー」の伴走でジャンボリーミッキーを披露
水野市長(中央)と「チームモンキー」のメンバー、上田教育長(右)

中滑川複合施設メリカで管理者にインタビュー

中滑川複合施設メリカに戻った「チームモンキー」のみんなは、メリカの指定管理者である一般社団法人「ばいにゃこ村」代表理事の樋口幸男さんに話を聞きました。

メリカは災害時における避難施設としての活用やまちなかにおける賑わい創出と交流人口の拡大を目的とした複合施設です。300名収容のホール(避難スペース)、備蓄倉庫、調理スタジオ(炊き出しスペース)、防音スタジオ、キッズコーナーなど多様な機能を備えています。

災害時における避難施設でもあるメリカ
樋口さんの話を聴く様子

館内を案内してもらった後、樋口さんのこれまでの歩みを聞きました。

樋口さんは、子どもたちに「頑張っていることは、自分で発信しなければ人に伝わりません。発信することによってファンができます。夢を叶えるためには、必ず仲間が必要です。仲間を増やしてください」と話しました。

<子どもたちの感想>

  • 知らないことばかりだったけど、1から10まで詳しく教えてもらった

  • メリカではキッズコーナーの馬でしか遊んでなかったけど、防災施設としてもいろんな人が来ればいいと思った

  • 「頑張っていたらみんながついてきてくれる」という言葉に自分も思い当たることがあった。そういった想いでされているのがすごい

  • 人柄に惹かれた。情熱を発信し続けることが大切だと思った

「チームからす」の訪問の様子

「チームからす」は、中滑川複合施設メリカで樋口さんの話を聴いた後、滑川市瀬羽町にある雑貨店「朱雀堂」を訪れました。

瀬羽町を歩いて移動する「チームからす」
朱雀堂の外観

朱雀堂で店主にインタビュー

朱雀堂は、美濃焼の食器をはじめ、アクセサリーや衣類、雑貨など200~300点が並ぶお店です。

店主の柿澤沙帆さんが、2021年3月に短大卒業後、4月にオープンしました。店内での販売だけでなく、瀬羽町を舞台に「瀬羽祭」というイベントを開催するなど、周辺のお店と協力しながら地域を盛り上げています。

店主の柿澤沙帆さん
柿澤さんが企画・制作した瀬羽町マップ

<子どもたちからの質問>

ーお店を出す前は何をされていましたか?

柿澤さん:短大生でした。短大で経済・経営学を学んでいた時、コロナ禍になり、進路について考えた末に自分の店を持つという選択をしました。

ーどうしてこの場所にお店を出したんですか?

柿澤さん:瀬羽町は私のおじいちゃん・おばあちゃんの家が近く、慣れ親しんできたまちです。この通りにお店を出せば親孝行になると思いました。この通りは商店街で、向かいにはハンモックカフェAmaca(アマカ)さんのお店があるため、お客さんが来てくれると考えました。

ー何でこういったお店を出そうと思いましたか?

柿澤さん:周囲に食器だけを扱うお店がなかったので、出してみたいと思いました。

ー朱雀堂ができた経緯を教えてください。

柿澤さん:ここは元々、オーナーがゲストハウスにしたいと思われていた場所です。けれど色々あって途中で断念され、店内に骨董品がたくさんある状態でそのままになっていました。私が借りることになってからは、それらの骨董品を処分(売却)するところから始めました。

ー滑川市をどうしたいと思われていますか?

柿澤さん:それを考えるのは、滑川市に住んでいるみなさんじゃないかな。

インタビューの様子
柿澤さんに質問する「チームからす」のメンバー

インタビューの後、子どもたちは、店内を興味深く見て回っていました。

<子どもたちの感想>
・食器、服、アクセサリーなどいろんなものがあってすごいと思った
・昔の壁がそのまま使われてていいなぁと思った
・空き家だった場所がこんなに綺麗になってすごいと思った

見ているだけで楽しい美濃焼のカラフルな小皿
アクセサリーやヘア小物
店内を見学しメモをとる子ども達
興味深く眺める様子

「チームマンゴー」と「チームにぎわい」の訪問の様子

そのほか、「チームマンゴー」が訪れた滑川市立博物館とほたるいかミュージアム、「チームにぎわい」が訪れたほたるいかミュージアムと滑川ショッピングセンターエールの様子を写真で紹介します。

<チームマンゴー>

滑川市立博物館で学芸員の米村さんから話を聞く様子
ほたるいかミュージアムで館長の小林さんから話を聞く様子

<チームにぎわい>

ほたるいかミュージアム
ほたるいかミュージアムで館長の小林さんから話を聞く様子
滑川ショッピングセンターエールで理事長の高木さんから話を聞く様子

市内訪問の後、メリカで感想を共有

2か所のスポットを訪問した後、中滑川複合施設メリカに戻ってきた全チームの子どもたち。

戻ってきた頃にはそれぞれチームメンバーとすっかり打ち解け、仲良くなっていました。一緒に移動し、同じものを見て学ぶかけがえのない体験を共有することで、心の距離がグッと縮まります。

休憩時間にそれぞれ触れ合う様子
ステージで仲良く遊ぶ男子

休憩後はチームごとに「訪問先で学んだこと・面白かったこと」と「もっと面白くできると思ったこと」をまとめ、全体に向けて発表しました。

付箋に書き出す「チームからす」のメンバー
模造紙にまとめる「チームにぎわい」のメンバー
「チームにぎわい」の発表
ホタルイカミュージアムとエールについて

<今日の感想>
・ホタルイカミュージアムの館長がたまたま館長になったと聞いてびっくりした(子ども)
・博物館で昔と今の違いが面白かった(子ども)
・市長室に初めて入り、市長の前でジャンボリーミッキーを踊れて楽しかった(子ども)
・インタビューで子どもが自分のこころざしをハキハキ伝えていたのが良かった(大人)

明日は、今日学んできたことを基に、「自分たちがワクワクする滑川市の姿」を4コマ漫画に描きます。その「ワクワク」が形になることを象徴するかのように、メリカ3階ホールの窓からは鮮やかな虹が見えました。

メリカ3階ホールから見えた鮮やかな虹

ご案内

次回の記事では、なめりかわ未来学校Day3の様子をお伝えします。

・サマースクールDay3の様子をお届けします|北欧デンマーク流の探究学習を学び・実践する「なめりかわ未来学校(サマースクール)」

Day3は、これまで体験してきたことを基に、自分たちのワクワクする滑川市の姿を4コマ漫画に描きます。次回もお楽しみに。

<公開中の記事>
【1】共同記者会見の様子
【2】オリエンテーションの様子
【3】サマースクールDay1の様子(前半)
【4】サマースクールDay1の様子(後半)
【5】サマースクールDay2の様子

テキスト・写真:なめりかわ未来学校協議会/
        株式会社プロジェクトデザイン 古野知晴


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