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Saucy Dog

6/10

 昨日、人生ではじめてライブに行った。Saucy Dogのワンマンライブ初日、武道館。

 慎ちゃんの甘く優しく力強い歌声が好きだった。過激でも騒がしくもなく、包み込んでくれるような優しさのある曲の雰囲気が好きだった。

 そしてなにより、Saucyの歌詞は、曲は、私の気持ちを言語化して、代弁してくれていた。

 私は気分が下がっているとき、あえてハイでポジティブな曲を聴いて忘れよう!上がろう!とは思えない。聞いてみても、曲にまで嫉妬して、イライラして、鬱陶しく思ってしまう。

 だから、特に恋愛について、悩んだとき、不安なとき、うまくいかないとき、寂しいとき、分からないとき。よく1人でSaucyの曲を聞く。
 メロディーと歌詞に浸って、縋って、身を任せて、そうするともっと沈む。もっと悲しくなる。もっと相手のことを考えてしまう。もっと後悔ややるせなさが溢れてきてしまう。そして、そんな沈んだ自分と曲が相まって、さらに落ちる。

 Saucyの曲で思い出すのは、悩んでいた自分や辛かった自分や、苦しかった時間ばかり。つらかったな。

 別れそうになってどうしたらいいか分からなくなったときには「リスポーン」

 一度別れたときには「今更だって僕は言うかな」

 「あたしの前だけで弱さを見せて 無邪気な顔で読んでみて あなたの瞳独占させて 誰も見ないでいて欲しかっただけ」、私がいなくても変わらなそうな元カレといるのがつらかったときには「シンデレラボーイ」

 遠距離でも「愛してるよ、おやすみ」って電話をする2人を描いた歌詞に嫉妬してしまうから聴けない「魔法にかけられて」

 やっぱりつらい思い出ばかりがセットになっている。
 しかもそれに紐づいて、曲を聞くと元カレのことまで思い出してしまうのが本当によくない。

 だから、実は、ライブの直前までは聴きたくなくて聴けなかった。ライブも、楽しみな反面、ああ、思い出しちゃうから嫌だなぁ、なんて思ったりしていた。


 そんな中ライブに行ったわけだけど、本当に本当に、最高だった。

 人生で初めてライブに行ったのだけど、今までの21年間どうして行かなかったんだと自分を責めたいくらいには素敵な時間で、大切な記憶になった。
 いつも自分がイヤホンで聴いているあの声が、音楽が、目の前から、生で、直に聞こえてくる感動、やばかった。

 セトリのネタバレになるので曲のことは書かないけど、なにより私が感動したというか喰らったというか体感したのは、「全身全霊で生きる姿の輝きは半端じゃない」ということだった。

 ライブ中、3人は会場にいる14400人に音楽と気持ちを届けるために、全力だった。3時間、ほぼ休みなく、沢山の曲を、本気で、生きたまま届けてくれた。

 MCでは控えめなのに、めちゃくちゃ気持ちよさそうにベースを弾く秋澤さん、最高にイカしてた。

 アコースティックパートでは、ゆいかちゃんのたっぷり気持ちのこもった歌声と歌詞で泣いた。終始あたたかい笑顔に滲み出る人柄が、魅力的すぎた。

 そして、離れた席にいてもしっかり胸にくる声量と、響きと、熱量で歌い続けてくれた慎ちゃん。
 本当に生歌だなんて信じられないくらい、とにかく歌がうますぎて綺麗すぎて、圧倒されっぱなしだった。ライブならではのアレンジも最高で、何回も鳥肌が立った。ぞくぞくした。
 たまに歌詞を飛ばしたりしていて、ああ、本当に歌ってるんだってやっと実感できて、それがまたよかった。

 武道館のライトをいっぱいに浴びて、慎ちゃんの歌う横顔と首筋に流れる汗がスクリーンに映し出されたとき、本当にドキッとした。美しいって思った。人間を見て、美しいと思ったり感動したりしたことってほぼなかったけど、本当に綺麗だった。

 生きていて、こんなにも人が「息つく間もなく全身全霊で200%の力で誰かのために頑張っているところ」を長時間見続けたことがあったかな、と思った。なかったかもしれない。

 もちろん自分の周りの人を含めてみんな毎日頑張って生きている。
 でも、日常から切り離された空間で、とんでもなく多くの人の期待と責任を背負って、しかも自分の言動がダイレクトに14400人に影響する状況でなんて、日常的な「頑張る」とはなにか違うと思う。というか、「頑張る」という表現がきっと間違っている。

 とにかく、自分達の音楽を、気持ちを本気で届けようとする3人の放つ輝きはとんでもなかった。本当に本当に、見惚れてしまうくらいにかっこよかった。

 そしてくさいことを言うようだけど、素直にこんなことを思った。

 私は武道館に立つことはできない。
 でも、自分のやれることを自分のステージで頑張って、3人みたいに輝きたいな、頑張る私を見て、かっこいいなって思ってくれる人がいたらいいな、と。

 そして、冒頭で、Saucyの曲はつらい思い出や元カレと結びついているから聴きたくないときがあると書いたけど、それに対する考え方もライブを通して少し変わった。

 つらいとき曲に浸っていちばん下まで沈むことが、前を向き直すために必要だった。
 負の感情を言語化してくれる曲を聞くことで、自分の本当の気持ちに気づけた。
 Saucyの3人や会場にいる多くの人にも、自分と同じように辛い過去があったはず。
 曲が、3人が、聴いているすべての人が、私のつらい気持ちに共感して寄り添って支えてくれていた。

 だから私は、Saucyに感謝するべきだったんだと、今になってやっと気づけた。
 曲を聞くとつらい過去を思い出すかもしれないけれど、曲は私を支えてくれた存在であり、私を苦しめたものじゃない。聴けないと避けるべきじゃない。
 私が強くなればいいだけ。

 本当に最高だったなぁ。大切な思い出、宝物。もっと好きになった。

 また行きたい。

 次行くときには元カレのことはもっと振り切っていたい。
 そして欲を言えば、新しい大切な人を思いながら聴けたらいいな。


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