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短編小説

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#短編小説

【小説】先生の花

【小説】先生の花

(約10,400字)

 いまはもう草原と化したグラウンドの真ん中に、先生は、ただひとりで立っていた。

 その凛々しい姿を目にした瞬間、あたりに立ち込めていた蝉の声が、しゅわっとやんだ。考えるよりも先に、身体が動く。わたしは草を踏み分け、先生のもとへ走り出していた。

 近くまで来ると、わたしは先生を見上げる格好になった。

 草の青さをいっぱいに載せた風が吹き、先生の身体がゆらゆらと揺れる。そ

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【小説】地球の上であなたと

【小説】地球の上であなたと

(約13,000字)

 バンのスライドドアが開くと同時に、金木犀の匂いを載せた空気が車内に流れ込んできた。後部座席にいた僕は顔を上げ、こんな都会の街にも咲いているんだなと思った。
「ここで降りてください」
 運転席から、コバヤシが人の良さそうな顔で振り返って言う。
「ここで、ですか?」
 聞き返しながらも僕はシートベルトを外してカバンを肩にかける。
「はい。あなたが面会を希望した方は、今日この場

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【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ

【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ

(約9,800字) 2023/12/26追記

「月が出てる」
 半歩先を歩くダイスケさんが白い息を吐きながらそう言った。12月26日の月曜日だった。
 道路に積もって凍った雪を踏む、わたしたちふたりの足音が、静かな住宅街に響いていた。綿をちぎってばらまいたような雪がふわふわと舞っている。
 ダイスケさんの視線を追いかけて東の空を見上げると、山吹色のほそい月が浮かんでいた。下弦の月だ。
 夜空が瞬

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