![海獣の子供](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/12168755/rectangle_large_type_2_e009d17db1856f103aadcfd63b685476.jpeg?width=800)
「一番大切な約束は、言葉では交わさない。」
大好きな”海獣の子供”が映画公開された。
映画「海獣の子供」本日6/7より公開です!
— 五十嵐大介お知らせ (@igadaioshirase) June 6, 2019
映画「#海獣の子供」https://t.co/JOJkgjAV4J
主題歌 #米津玄師「#海の幽霊」https://t.co/syOAtcoLTL
サウンドトラック #久石譲「海獣の子供」https://t.co/eTIugmzZGU
原作 #五十嵐大介 https://t.co/mhruBoyc5T
映像と音を全身で浴びに来てください! pic.twitter.com/AmBt8bJpcY
大好きな大好きな作品で、いろんな人に観て欲しいなと思う。
アニメーション制作は『STUDIO4℃』、監督は渡辺歩。
音楽を久石譲が担当し、主題歌を米津玄師が歌う。
今日まですごく楽しみにしてきた。何回か応募した試写会にも外れたし、公開初日をうきうきで待ってた!
第一巻が発行されたのは2007年で、10年以上前の作品になる。
私がこの作品と出会ったのは、3年前。シェアハウスで共同生活をしていたころだ。月刊アフタヌーンで隔週連載されていた「ディザインズ」とNHKで放送された「浦沢直樹の漫勉」を観て五十嵐大介さんを知った。それから、なぜか雑誌に特集される漫画家の本棚や好きな作家がこぞって「海獣の子供」を本棚に並べているのを見て全5巻を一気に購入したのを思い出す。
五十嵐大介さんといえば、ハイパーな画力とあの漫画には独特のボールペンのタッチ。初めて雑誌でその絵を見た時には「下絵…??」と思ってしまった。正直。すみません。
だけどNHKの漫勉でその制作過程を見て、「ああ…漫画ってこんなに自由でいいんだな~」と思わせてくれた大好きな作家さんだ。それは慣例通りでなく、普遍的でなく特殊かもしれないけど、たくさんの可能性を秘めていて、『漫画ってこうだ!』と思う視野がこじあけられるように開いた瞬間をじんわり思い出すことがある。
大人になればなっていくほど自分が”何者でもない”ことを痛感するし、”何者かでありたい”と焦りながらも思う。でも子供のころって特別で、子供ってみんな神様みたいだなと思う。一つの出来事や事象が大人よりも随分解像度が高くて、一瞬一瞬が濃くて鮮明だ。だから断片的に思い出す幼少期はなぜかとても鮮やかで目が痛くなるような鮮烈な色なことが多いし、個人の見解だけど「現実に生きていると見るはずのないもの」を見たような記憶があったりなかったりする。
私のなかで主人公の琉花は、そんな色濃い一瞬を自分の足でしっかりと歩き、自分の目で真実を見て、自分の体で全部代謝しているような女の子だ。
純粋な子供らよりもより一層純粋がゆえに周りの子らになじめなくて、自分でも「のけもの、あぶれもの」感を素肌に感じている。子供”らしく”大人に愛嬌を振舞うこともできない(しない)し、むしろ攻撃的だ。琉花や琉花の父親に依存的でだらしない母親のことも、協調性がない自分を諭してくる教師の子とも信じてない。
そんな琉花がジュゴンに育てられた2人の子供に出会い、その子たちの前では子供らしく純粋に笑って・食べて・怖がって・不思議がって・怒っていられる。
子供の魂のまま大人の体に成長したアングラード
ジュゴンに育てられたとされる「海」と「空」からの”問題”を必死に解こうとしているジム
生と死を悟っている静かな海、手を引いて導く空。
物語を読み進めていくと、
どうしようもない悲しさとか、無力感とか、生命の誕生の喜びとか、母性とか、父性とかが一気に自分の中から湧き上がってくる気がする。
ぼんやり過ごしていた日々が途端に鮮明に眼球に映って、生きているということを体感させられる。
作者には、世界がどう映って見えているんだろう。そんな風にも思う。
海獣の子供は全5巻で完結するんだけど、最終巻まで読んでる頃にはこうして命は生まれそしてどこかに還ってい。ということを感覚で理解する。
私には漫画の内容を詳しく「ここがこういう意味で、これはどの暗示で」とかの説明をするのは難しい。それから”それ”を言葉にするには陳腐な気がするんだけど、それが必要ないくらいに漫画の中の海が広大だし綺麗で「白黒」の線なのに本当に鮮やかなんだ…。
だからこれを映画館で観られるということに奇跡と有難みを心から感じている。
以下はネタバレになってしまうから嫌な人は読まないで欲しいんですが、
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私はあの海、海岸線、陸と海の境目が生と死の境界線だと勝手に思っていて。
あそこを渡って陸に上がると命は生まれ、役割を終えた命はやがて海へと戻っていく。そんな風に感じました。
誰かが「生きていることも死んでいることも、そんなに変わらない」的なことを言っていた気がするんだけど、そう思うと生きることも死んでいくことも美しいなと思った。
最終巻。わがままな琉花の母親が新しい命を産み落とすシーンがある。
この母親もまた若い魂のまま入れ物だけが成熟しているようにも見えてとても魅力的なんだけど、出産の際に琉花に手を握って欲しいというシーンがある。そこでも琉花はなぜか冷めた表情をしていて「…うん。」と返事をするんだけど、頼まれてへその緒をハサミで切り落とすシーンがとても印象的。
「命を絶つ感触がした」
母体の中(海)生まれてくる命は、その繋がり(へその緒)を絶って陸へとあがってくる。なんだかこのシーンは涙が出てくる。なんでだろうな~。
…そういうことで、タイトルは5巻の巻末に載っているショートのセリフから。
「一番大切な約束は、言葉で交わさない」
ずっと好きな言葉です。
映画がたくさんの人に観て貰えて、漫画も読んでもらえるといいな~と思います。
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