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天国に一番近い島での経験

前回の「美しすぎる街」クィーンズタウンから向かったのはニューカレドニア、世代的に「天国に一番近い島」などでずっと憧れの国であった。

到着したときは嵐だったが次第に波は落ち着き、思い描いていた海を平和に満喫していた。でもコロナは突然やってきた。

早朝ホテルの部屋のドアを「ドンドン」とノックされ「退去命令!空港閉鎖!」とフランス語で云われた。なんて言ってるのか全然わからないので、とりあえずフロントに行ってみた。

「観光客一人がコロナに感染したようだ。空港は今日で閉鎖されるので急いでチェックアウトしてほしい」とのことらしい。もう1泊する予定だったのでせめて夕方の最後の便に乗りたいと伝えると「その便は混雑してひょっとしたら乗れなくなるかもしれないから、今行った方がいいよ」と言われた。隣にいたアジア人のカップルは到着したばかりのようで呆然としていた。

部屋に戻り慌てて荷物をスーツケースに詰め込み再びフロントに向かった。あらゆる人種の宿泊客は取り乱すこともなく、落ち着いて運命を受け入れてるようだった。

でも一人だけフロントに金切り声で文句を言ってる女の子がいた。多分フランス人で友達同士でバカンスにきていたようだった。

その彼女が私をみるなり「はっ」と大げさに息を飲み、鼻と口をおおった。一緒にいた男の子が「よしなよ」という感じで彼女の服をひっぱり外に連れて行った。

一瞬の出来事でなにがなんだかわからなかったのだが、だんだんフラッシュバックのように頭の中で巻き戻し再生がはじまった。

「私、いま差別されたんだ」 胸にズンと痛みが走った。

パートナーは離れたところにいたので気づいてなかった。そして今までこのことは誰にも言っていない。なんだか言えないのだ。

幼い時から空気が読めないところがあるようで「いじめ」にはよくあった。でもその痛みとは違う。全然知らない人から何もしていないのにという衝撃は、たった一瞬でも私にとってそれなりにダメージがあったみたいだ。

その後「Black Lives Matter」を始め、色々な差別問題が報じられた。いわゆるR&Bが好きで黒人音楽のルーツなどの知識はあったつもりだったけど、今まで私は何もわかってないことがよくわかった。

『天国に一番近い島』で思わぬ経験をした。約1年でようやく私の中で消化できたようで、今では良い経験をしたなと思えるようになった。「ビリーホリディ」や「ルイアームストロング」の悲しい明るさに改めて感動できるようにもなった。

でもいつか「一切の差別のない未来」が来ることを心から祈っている。





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