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90年前の若い女性
岡本太郎
「芸術は爆発だ!」の発言でも知られた世界的な芸術家です。
![](https://assets.st-note.com/img/1645251941733-ACiK3P6FwB.png)
この岡本太郎の母の岡本かの子は、小説家でもあり歌人でもあり仏教研究家でもありました。彼女は1939年に亡くなっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1645256093904-aj4fyB5jIA.png)
ブルゾンちえみ(現在藤原史織)さんになんとなく似ておられますね、
その岡本かの子がその当時(90年ぐらい前)の女性気質を風刺した文章があります。
現代若き女性気質集
![](https://assets.st-note.com/img/1645259103904-ERgt59Kuky.png)
現在と見比べてみるのも良いのではないかと思いまして、その中のいくつかを紹介します。(もう著作権も切れています)
ご存命ならば100歳を軽く越えるご年齢の当時の若い女性の事、
1930年代は満州事変が起き五・一五事件、二・二六事件と軍部の不穏な動きがあり、ヨーロッパではナチスが政権を握った時代。
決して楽しめる時代ではなかった様に後から産まれた私たちからは思うのですが、その時代を生きた90年前の若い人の令和の世に生きる人と変わらない息吹が文章を通じて伝わり、ごく新鮮に感じられます。
作品名:現代若き女性気質集
作品名読み:げんだいわかきじょせいきしつしゅう
著者名:岡本 かの子
出典 https://booklog.jp/item/7/004538 (青空文庫)
○彼女はじっとして居(い)られなくなった。何か試(こころ)み度(た)がっている。自分を試(ため)して見度(みた)がっている。自分の市場価値を。
○「恋など馬鹿(ばか)らしくて出来(でき)なくなりましたわ」と言う。「けれども愛の気持ちだけは失い度くありません。」
○彼女に取ってスピーディで無いものは魅力(みりょく)が無い。それで退屈な時は、せめて街の自動車を眺(なが)める。
○「結婚? そうね。出来るだけ我儘(わがまま)をさして呉(く)れる男か、それとも絶対的に服従させられる強い男とならばね。」
○チョコレートを食べられる暇(ひま)さえある職業だったら職業というものは何という好もしいものでしょう。
○女に向って機嫌(きげん)を取るような男も嫌いなら、見下げて権柄(けんぺい)づくな男も嫌い。
○「お金入れの口を開けてみて、お金が一文(いちもん)も無いときは何だか可笑(おかし)くって可笑くって、あはあは笑うのよ。たとえ困るのは知れ切っていても、若さのせいか知らん。」
○来年あたりのことまで見当がつくけれど其(そ)の先は考えても判(わか)らない。考えると頭が痛くなるから止(よ)す。
○ついでに洗う洗濯物が無くて、お湯にどっぷり入るときくらい嬉(うれ)しいことはない。
○「どうしてこう心配事が出来ない性分(しょうぶん)だろう。もっとも心配事があると直(す)ぐレコードをかけて直ぐ紛(はぐ)らかしちまう癖(くせ)があるんだけれど。」
○ラグビーを見ているときだけ男の魅力を感ずる。
○「自分ながら利口(りこう)過ぎるのが鼻につくから、少し馬鹿になる稽古(けいこ)をしようと思うんだけど。」
○お金があると、ついお友達と円タクに乗ってしまって。
○大概(たいがい)な事は我慢(がまん)が出来るけれど。鈍感(どんかん)なものだけはトテモ堪(たま)らない。
○ジャズの麻痺(まひ)、映画の麻痺、それで大概の興味は平凡なものに思える。始終(しじゅう)習慣的に考えているのは「何か面白(おもしろ)いものは無いか知らん。」
○フレッシュの苺(いちご)クリーム、ブライトな日傘(ひがさ)、初夏は楽しい。
○折角(せっかく)ハイキングに行っても、帰って来て是非(ぜひ)銀座へ寄らねば何となく物足(ものた)り無い。
○偉くなろうなぞとはちっとも思わない。空虚な気がする。それより刹那(せつな)々々の充足感。
○そりゃ時々はくさることもあるわ。希望の飛行機が経済的事情にぶつかって、うまく飛行が運ばない時の気分のエアポケット。けれども理由を運動の不足になすり付けてしまって、せっせとスポーツすれば癒(なお)る。
○「一生に一度は真剣(しんけん)な気持ちにさせられるものにぶつかってみたいと思うことは、そりゃあたし達にだって、ちゃんとあるわ。」
○「流行なんてつまんないと思うんだけれど、やってみれば悪い気持もしないものね。」
○「いざとなって決心すりゃ、裸のモデルにでも平気でなれますわ。そして食べて行きますわ。」
○彼女の笑いは、全く自然に見えるほど洗練(せんれん)されている。けれども彼女は、腹の底から笑った味を知らない。
岡本かの子の作品は青空文庫でぜひ一読あれ、
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