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【第9回】隣の会社が「青く見える」勘違い

いよいよ、転職にまつわる勘違いの「本丸」に迫ります。それは、「隣の会社は青い」と感じてしまう現象です。

「次こそは、いい会社で働きたい」という話は、特に転職回数が多くなると、つい口にしてしまう言葉です。

気持ちは分からないでもありません。転職した先々で、想定外の試練が待ち構えているのですから「いいかげん、勘弁してくれ!」と嘆きたくもなります。

時と場合によっては、自分とは全く関係のない、「不可抗力」と呼ぶにふさわしい事態も起こるので、なおさらです。

そこで、思わず口に出るのが、「次はもっといい会社で……」「今度はまともな職場で……」「定年まで働ける会社を……」という決まり文句です。

精神的につらい状況が続くと、どうしても「隣の芝生」ならぬ「隣の会社」青く(魅力的に)見えてしまいます。

ここで問題となるのが「いい会社」の定義です。さて、いい会社とは、いったいどのような会社を指して言うのでしょうか。

以下は、以前勤めていた会社であった実話です。ふたりのマネージャー「Aさん」と「Bさん」が、同じ時期に同じ部署に転職してきました。

とある日、AさんがBさんに言います。「この会社はひどいもんだ。特に社員のレベルが低過ぎる。こんなに質の悪い社員と仕事をするのは初めてだよ」

そこで、BさんがAさんに尋ねます。「今までいた会社のほうが、はるかに良かったということですか?」

Aさんは、更に語気を強めて答えます。「当然でしょう!この会社は、あらゆる面で劣っている。何とかしないと、大変なことになると思うよ」

今度は、Bさんが切り返します。「私にとって、こんなにしっかりした会社は初めてなんです。しかも、これほど優秀な社員と仕事をするのも初めてなんです」

さて、これはいったいどういうことなのでしょうか。同じ会社の同じ部署に、同じタイミングで転職してきたにもかかわらず、なぜ「Aさん」にとって「最悪の会社」が、「Bさん」にとっては「最良の会社」となるのでしょうか。

答えは簡単です。転職した会社の「良し悪し」は、過去に在籍した会社との「比較」に依存するからです。

別の言い方をすると、以前の会社と比較する以外に「正確な判断材料がない」ということでもあります。世の中に「絶対的」にいい会社など、存在するはずはないのです。

ちなみに、先ほど登場した「Aさん」は、結局半年足らずで会社を辞めてしまいました。その後どうされているかは、あいにく存じ上げません。

  次回につづく(毎週月曜日若しくは火曜日に投稿予定)
 
(本文は、弊著『四十歳を過ぎて初めて転職の二文字が頭をよぎったら読む本』<ブイツーソリューション>より一部抜粋編集し、シリーズ化したものです)

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