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在日外国人のキャリアを考えるー日本政府に隠された在日外国人の実態#3

 こんにちは!法政大学キャリアデザイン学部1年の中野です。前回から全3回かけて「在日外国人の実態」をテーマに私のおこなった研究・調査に関してお話ししています。高校での卒業論文レベルですので、優しい目でご評価ください。最終回の今回は「学ぶ」に軸を置き、外国人のキャリアについて考えます。最後に研究の結果による支援策の提案も含めています。長くなりますが、最後まで読んでいただけると幸いです。

日本語支援の必要性とその課題
Ⅰ.日本語支援とその事例

 日本語教育とは、「日本語を勉強したい。」という希望を持つ「日本語を母語としない人」に日本語を教えることを指します。また、その際の日本語を教える人を「日本語教師」と一般に言います。日本語教育には、しっかりとした体系が確立されていないため、その枠組みははっきりしていない新しい分野。つまり、日本語教育学というのは手探り状態といっても過言ではないだろう。

 現在では、外国人労働者の受け入れに伴って、働く上で必要となった日本語支援だけでなく、事実上の移民政策となっている入管法によって日本には外国籍の児童や、日本国籍であっても外国籍の親をもつ児童などに対する日本語支援、日本語教育という点でも需要が高まっていると考えられている。

 神奈川県横浜市では、教育委員会を中心に、外国人児童に対する日本語支援を進めています。横浜市内にある大学の教育学部のオープンキャンパスでの模擬講義においても「横浜で教師になるとは」という題のもと、日本語支援の必要性を教職志望の高校生に説くなどそのニーズの高まりを感じられます。横浜市では現在、日本語支援を必要とする児童が増加しています。横浜市教育委員会が発表した令和元年5月1日現在での外国籍(外国籍を持つ児童)と、外国につながる児童(日本国籍に変更した生徒や日本国籍であるが外国籍の親を持つ児童)の生徒数を調査した結果では、令和元年度、前者が3658人、後者が6445人と合わせて1万人を超えています。

 このような現状に対して横浜市は、「本市の小・中学校に在籍する外国籍等児童生徒は、日本国籍を有する“外国につながる児童生徒”を合わせると 10,100人を超える状況(令和元年5月現在)です。また、その中で日本語指導が必要な児童生徒数は、2,700人を超えています。このような状況の中、平成 30 年に策定された「横浜教育ビジョン2030」では、「3横浜の教育の方向性」の重視する施策や取組に、「日本語指導」が多様な個性や能力を伸ばす視点として位置付けられています。」横浜市では早くに日本語教育の必要性を感じ、教育方針に組み込んでいるのです。

 更に、文部科学省の調査によると、平成28年度、神奈川県は、日本語支援を必要とする外国籍の生徒数は全国2位。そんな神奈川県に位置する横浜市には、全校生徒の約半数が外国籍の児童や外国につながる児童となっている学校がある。この学校の校長先生は、「多文化が共存することによって生徒自身が考えながら自分ができる方法でコミュニケーションを取ろうとすることでグローバルな視点を持った子どもに成長する。そのチャンスは日常に転がっている。」という考えを述べている。

 この学校の教師全員が様々な言語を話せるわけではありません。例えば、外国語で喧嘩が発生したときに、何があったのかを聞くことができないことも多々あるそうです。そういったときに、生徒自身でなんとかコミュニケーションをとり、生徒自身で解決しようとする。

 我々は社会に近づくにつれて、国際関係などで壁を作りがちではあるが、子どもたちは、そういった壁などを考えず、目の前の相手と向き合うことができる。その影響もあり、この学校では外国人が日本人と「共生」しているといえるのでしょう。我々にもこういった姿勢で外国人と接することが相互理解を行う上で大切になってくると私は確信しています。

Ⅱ.日本語教師の育成上の問題

 日本語教育に関する需要と必需性は高まっているうえに、これから先も更に日本国内に限らず、需要が拡大すると考えられます。しかし、日本語教育は新しい分野であるがゆえ、現実はかなり厳しい問題が存在。

 1つは、日本語教師の雇用条件や待遇が恵まれていないことや、他の教師以上に経験が求められるため、経験値のない場合、安定した給料を得られないなどの問題があります。日本語教師の3人に2人が非常勤講師として勤務しているといわれています。また、日本語教師の平均月収は20万円以下、年収は非常勤で180万~200万円、常勤で300万~350万円。あくまでこれは日本国内で就労する日本語教師を対象とした調査の結果です。しかし、日本語教師の需要は海外でも高まりつつあります。アメリカでは年収120万~180万円、アーストラリアでは80万~140万円と日本語教師の専門性に似合わない収入となっている現状にあります。

 他にも、日本語教師育成にも問題があります。日本における語学教育というはあくまで「進学のため」に発達してきたといっても過言ではありません。特に、英語教育においては長期間ネイティブ教師による直接教授をほとんど導入することなく、「入試の為の教科」として独自の発展をしてきている。そのため、日本語教育学に模範となるモデルが存在しないために、その育成はうまくいっていない現状にあります。また、「日本語を母語とする日本語教師(以下、母語話者)」は日本語を意識的に学んだことがないのにも関わらず日本語を教えているという問題もあるといわれています。つまり、母語話者は日本語を分析的に考えたことがありません。こういう教師をどのようにして「理想の日本語教師」へと育成していくかという問題があります。

Ⅲ.私たちにできる日本語支援

 前項で説明の通り、外国人に対して日本語を教えるということは、母語話者である我々にとっても容易にこなすことができることではありません。そのような現状を踏まえた上で、私たちにできることを考えていきたいと思います。

 第一に、学校教育において子どもに対する支援だけではなく、保護者に対する支援に着目をするということを提案したいと思います。学校教育においては、実際に学校に通う子どもに対してどのような支援を行うか、という点にばかりフォーカスされている印象にあります。学校の中でどのように学ぶのか、日本人との関わりをどうするのか、そのような支援が考えられています。その影響もあり、学校教育の現場においては近年その支援が整い始めています。しかし、これは学校に通うことのできている子どものみに関するものであり、実際には学校に通えない、何らかの理由で通うことのできない不就学児童が一定数存在します。

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 この調査は文部科学省が行ったものであるが、不就学の理由の中で注目したいのは、「日本語がわからない」「母国とは生活や習慣が異なるから」という2つである。母国とは生活や習慣が異なるというものの中にはもちろん食事に関するものなどもあるが、その中の一つとして、日本の教育制度や学校の仕組みが母国とは異なるというものも含まれています。これは特に、保護者側に関する問題です。しかし、文部科学省は市役所などで住民登録を行う際に、学校への就学案内は確実に行っているとしています。つまり、その就学案内が外国人児童の保護者には理解できていないという問題がここに存在します(そもそもその問題を国や自治体が気づけていない問題にも違和感を覚えるが…)。外国人児童と学校教育の問題に関しては、就学案内の段階で、保護者に対して日本語の支援を行う他、市役所職員もやさしい日本語での就学案内などそのような配慮は必要になるだろう。それに伴い、市役所職員への教育なども同時に必要となるのでしょう。

相互理解のための支援策
Ⅰ.支援を届けるための条件

 ここまで、外国人受け入れの現状やそれに伴う問題点を様々な面から考察して来ました。これらを踏まえ、異文化共生のための支援策を提案します。まず、この支援策を考えるにあたり、以下の3点をこれまでの研究を踏まえて必要であると考える条件として考えました。

①無償であるか、若しくは、限りなく無償に近いか
②いつでも受けられるか
③どこでも受けられるか

 これらの条件は、実際にこれまで挙げてきた日本語支援を必要とする外国人に届けるために必要であると考えられます。第1回で取り上げたビジネス的観点から考えればそれは容易に理解できるでしょう。主に、外国人労働者は、低賃金・長時間労働を強いられている現状があることは既に述べている通りです。そういった人々は金銭的余裕だけではなく、時間的余裕もなく日々を生きています。このような本当に支援を必要とする外国人に私たちの考える支援策を提供するための条件として、上記3点は必須であるだろう。

Ⅱ.動画配信サービスを用いた支援策

 近年の高度な情報化に伴い、動画配信サービスの発展はすさまじい勢いです。さらに言えば、今回のコロナ禍でそのニーズは急激に上昇しています。そのような動きの中で、近年話題となっているのが、教育系動画を用いた学習方法です。本年度2月に行った調査では約8割の高校生がこれらの勉強動画を使用している他、6月上旬に行った調査では約9割の大学生がこれらの勉強動画の存在を知っており、7割ほどが実際に使用しているという結果となっています。。

 この実態を活用し、日本語支援にかかわる動画を投稿することで、必要とする外国人が自由に活用することができる状態での支援が可能になります。また、YouTubeの勉強動画の大きな強みは、視聴する外国人側に金銭の問題が基本的にはかからないということです。ここで私は以下の内容の支援案を提案します。

動画配信サービスYouTubeを用いた
無償・どこでも視聴可能な日本語支援動画の提供

 このプロジェクトは、携帯1つとネット環境さえあれば誰でも実践できるものです。竹口幸志氏(2016)は、自身の論文で現在の状況に関して、「カメラの低コスト化,コンピュータの処理の高速化,インターネット回線の高速化,無料のオーサリングツールの普及,動画共有サービスの開始などにより,動画制作や動画配信は低価格かつ容易に行うことができるようになっている」と論じている。

 現代は、自由に配信し、それを自由に活用できるようになっています。また、携帯電話の進化により、スマートフォン内蔵のカメラでも十分な画質での撮影が可能になりました。こういった環境を活用することで、ちょっとした時間に、日本語支援を受けることが可能になります。現在、YouTube上には中国語講座や韓国語講座などの日本人に対する外国語に関しては支援動画が数多くアップロードされているものの、日本語支援に関してはほとんどない。YouTubeが普及し、教育系YouTuberという言葉ができるほどに注目を浴びている。そういった最先端で発信を行うことでどこかで求めている外国人の目に止まり、それが大きなネットワークを生むことにつながるだろう。

 動画配信サービスYouTubeを用いた日本語支援は、日本語を母語とする我々が明日にもできる支援策であり、これを提案します。ただ、このようなネット環境への依存を要する支援には少々問題があります。

Ⅲ.更なる格差を生まないために

 現代の教育改革では、インターネットを用いるなど、情報化に応じて変化し始めています。例えば、神奈川県内のある公立高校では、校内に学習用のネットワークを整備し、そのネットワークと生徒所有のスマートフォンなどの情報通信端末を授業等の学習活動で活用しようと試みています。

 他にも、文部科学省は2020年より学習指導要領を改め、現代にあった教育への変革を順次行っていくとしており、その1つとして、2020年より、小学校で5.6年次の外国語が必修となり、新しく教科書が作成されまし。今回の検定に合格した小学校外国語の全部の教科書にはQRコードが付いています。スマホやタブレット端末を使って自分の家でも音声が確認できます。小学校では学級担任の先生が外国語を担当する場合、電子黒板などの用意がない場合、このQRコードがインプット音源として重要になります。

              
 しかし、このようにネットやスマートフォンなどに頼った改革は、スマートフォンを持っていない生徒と持っている生徒との間に更なる教育格差を生んでしまうのではないかという懸念があります。私の提案する支援策も、ネット環境に依存するものです。このような観点から考えると、この支援策も日本語支援を必要とする人々の間にその支援の度合いの格差を助長する可能性を秘めているかもしれません。しかし、そんなことは一切ないと考えています。動画配信サービスYouTubeには広告を付けることで広告収入を得ることが可能になります。この収入を用いることで、無償の日本語講座の開設を行うことで、前述の格差を限りなく小さくすることができる。

 このような背景もあり、私たちは支援策として「動画配信サービスYouTubeを用いた無償・どこでも視聴可能な日本語支援動画の提供」を提案しました。

最後に

 今回は、全3回を使い、「外国人のキャリア」について考えてきました。私たち法政大学キャリアデザイン学部では、自分のキャリアを考える・見つめることだけにとらわれず、私たちを取り巻く環境や他者、地域のキャリアを考えることもまた求められることの1つです。現在行われている東京都知事選挙では、今回取り上げた外国人への支援を行わない、即刻停止を掲げる政治家もいます。ただ、現在の日本において、非正規労働者が多いのは1つの問題ではありますが、外国人労働者によって支えられている側面もあります。だからこそ、今、外国人のキャリアにおける支援の在り方を考えるべき時に立たされているのかもしれません。

 外国人に限ったことではありません。先日投稿した「LGBT」や「同性愛者」に関するnoteもまた、我々に突き付けられている問題です。ダイバーシティ宣言を掲げる法政大学には外国人留学生なども多くいます。私たちの周りにいる支援を必要としている人に手を差し伸べられる日本人が増えれば、日本における「多文化共生」も夢ではないでしょう。



 長くなりましたが、今回はここまでにします。是非、皆さんにも他者のキャリア形成に対する支援というのを考えてほしいと思い、このようなnoteを書きました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではぁ~!


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