離島でまちづくりを12年やってみて、結局、資本主義に迎合するのか?の話

大学時代には建築が好きだったんですが、卒業時にはまちづくりを志しました。

それは、大学を卒業する2007年当時から、日本の総人口は減っていくし、それに応じて空き家もどんどん増えていくことがわかっていながら、建築業界(特にハウスメーカー)が、無秩序に「売れればなんでもいいや」という姿勢で建て売りをどんどん売っていくということに対して、「人の人生をも包含する建築の考えってもっと高尚なものなんじゃないの?!」という思いを抱いたからです。
本来もっと社会に望まれる形(空き家を有効利用するなど)があるとわかりながら、お金儲けのために魂を売ったんだな。資本主義なんてクソ喰らえ!と、建築や経済活動そのものに、嫌悪感・憎悪を抱きました。

そして「僕が考えた最高のまちをつくりたい」、もっと言えば「僕が考えた通りにしたらもっとまちはよくなるのに!」「僕ならもっと社会にとって良いことができる」という思いを持ちました。
だけど、当時のまちづくりに関わる仕事といえば、ディベロッパーか公務員ぐらいしか思い当たらず「どれも違うなー」と感じて就職活動もせず、フラフラしていた時にたまたま出会った姫路市の離島家島で、2011年から移住し、活動しています。

活動をし始めた時、コミュニティビジネスとかソーシャルビジネスという分野や概念がもてはやされ始めた時期で、その代表事例は「フローレンスの病児保育」であり、お金を稼ぐことだけを目的にしていたら絶対に企業はやらない・できないからこそ、非常に意義のある活動という事例でした。
それは、僕が目指すあり方であり、お金のためじゃない・社会的意義がある、そして、それを成り立たせるための仕組みがある。

そのフローレンスが、昨年末からなんだか騒がしい。僕は当事者でもなんでもないので、何もわからない。
参考リンク↓

だけど遠目から見て、あのソーシャルビジネスの代表事例=お金儲けが一番ではなく社会的意義を最重要としていた(と見えていた)フローレンスは変わってしまったのかも知れないと感じた。

僕は2011年の移住以来、(営利事業としては)長らく1人で活動してきた。
お金を稼ぐことを一番の目的とせず、地域が存続するための方策や活動が重要であると考えて。
それはそれなりに楽しくやっていたし、まあ物珍しさもあってメディアなどにもよく取り上げてもらった。
だけど、相変わらず家島の人口はどんどん減っていくし、自分が社会的インパクトを残せているのか、本当に「僕が考えたまち」の実現に向かっているのかわからなくなった。
ボランティアで移住促進などの活動をしているけど、それでも残念ながら、人は減っていく。
果たして、この島の暮らしをどのようにして持続することは出来るのだろうか?持続するためには何より人を増やさないといけない。

僕があれやこれやと色んな活動をするうちに自分1人では回らなくなって、営業しているカフェを誰かに任せたいと考え、募集したら、運良くシェフが移住して来てくれた。
シェフにはもちろん給料を支払わなければならない。僕と同じように「自分の好きなことをやれてるんやから給料なんかなんぼでもええやろ?」というのは、あり方として違うと思った。
そうなると、お金儲けも考えないといけない。なにより、給料を払うことができれば、この人口が減り続ける家島に人を増やせることがわかった。

あれ?お金儲けって大事??
クソ喰らえと思っていた経済活動。

調子にのって、宿泊事業も忙しくなるだろうと踏んでマネージャーを募集した。
運良く来てくれて、機嫌よく住んでくれているようだ。

会社としては全然儲かっていない。
僕の給料より、社員の給料の方が高い。それでも家島に人が増えるなら。
なんなら、もっとお金儲けに振り切って、もっと人を雇うことで、どんどん移住してきてもらった方がいいのでは?そんな思いが燻る。
「フローレンス」もそんな感じで変化してしまったのかなと勝手に感傷に浸る。

最近よく「令和の虎」を見ちゃう。
売上あげてなんぼ、儲けてなんぼ。の世界感。経済至上主義。
あそこにたてば僕なんて超しょぼしょぼ経営者。経営者の風上にもおけない、何を甘いこと言ってんだと言われるだろう。
その価値観も理解できる。だってやりたいことの実現にはお金がかかる。誰もお金をくれる訳ではないから自分で稼ぐしかない。

昔、誰かに「どうやったら島に人が増えるかな?」と聞いた時、「30万払うって言うたら来たい人いっぱいおると思うよ」と言われた。
えらい現実的だなと思って、なんかそうじゃないだろうと心のなかで否定したけども、改めて今、その言葉を反芻している。僕らが向き合っているのは現実でしかなかった。

今、漠然と"怖いな"と感じてているのは「資本があるから、その資本で家島のまちを好きにしていいよ」と言われたら、僕は、もっといっぱい旅館をつくって、レストランをつくって、何かの体験施設をつくって、移住してきてくれる人のための家をつくるだろう。
うーん。それは、僕が学生時代に一番嫌悪していた人たちの姿ではなかったか。

離島のまちづくりは頭を擡げながら続く。

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