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楽器は音楽に従う

「半年以上きらきら星をやっています」

たまに耳にしたり、実際にそういう生徒さんが訪ねてくる話。1人や2人じゃありません。僕はこれはおかしいと思っています。

もちろん、完璧に弾くというのにはきりはなくて、実はブラームスのコンチェルトであろうと、きらきら星であろうと気をつけることは同じ。例を挙げれば、弓をきちんと当てる、横に動かす、無駄なく止める、次の音の用意をする…

つまり、それなりの完成度を求めるならきらきら星に時間がかかるというのはもっともなのですが、それで半年費やすならもっと単純なことから積み重ねた方がいいでしょう。

おそらく、きらきら星は単純なので、なんとなく弾ける人が多い、なんとなくでも音が出て曲というものが感じられたら親御さんも喜ぶ、という考え方だろうと思います。

もっとも、メソッドによっては「ララミミファファミー」を「A0A0E0E0E1E1E0ー」と歌わせてやるそうです。
E線の1の指がファの#だと誰が決めたんでしょうか?ポジション次第で全然違う音です。

何れにせよ、子どもたちの頭の中にヴァイオリンを弾くときの回路がしっかり作られないという点であまりよくないことです。

もちろん音を出す喜びが最初の出発点なのは間違い無いのですが、もっといい音、こんな音、と望んでいかないといけませんし、「いい音」というのは「そのときその場所にふさわしい音」であることが多く、「単純ないい音」って実は「ヴァイオリンを正しく鳴らした音」そのものです。つまり、曲のことを知ることや楽器を構える姿勢が必要。

そうなると、単純なモノマネやご褒美のシールで芸を仕込むという扱いは感心しません。

何年もこういった環境でヴァイオリンを手にした子の軌道修正をするのに困惑していたのですが、最近新しくレッスンを始めた幼稚園児の子は、一旦最初から一切のごまかしなくやり直していくことができて、どんどん自分で予習してくれるようになりました。親御さんも一緒に手拍子で歌う、ドレミで歌うというように順を追うという時間を設けてくださったようです。あくまで音楽先導。ヴァイオリンの扱いは音楽に従うという根本の整理がうまく伝わったのかなと思います。もちろんヴァイオリンの魅力が先導する音楽もあります。でもそれも音楽あってこそ、です。

一切のごまかしなく、というのは子供のレッスンにおいて本当に難しいことです。音が出ていて本人も弾けていると自信を持っているなら「褒めてもらえる」と思っていたりするので「もうちょっとこうすると、もっとこうできるよ!」と提案してもご不満なお顔になる子が多いです。子供たちの根拠は大人の想定の外側にあったりします。すごくピュアだとも思いますが、決まっていることは受け入れてもらわないといけません。その子が望んだとしても赤信号を紫信号にしたり、納豆の名前を豆腐にしたりはできません。どうやっても楽譜の仕組みを変えることも、楽器の仕組みを変えることもできないですから。

今回お話ししている子は弓の持ち方がベイビーグリップという子供向けの弓の持ち方で始めた子で(これもうまくいく子と、大人の持ち方に移行できない子がいます)、確実に移行するためにどういう筋肉や感覚が必要か何段階かのステップに分けて持ち方の移行を始めました。
これもうまくいけばどんどん広めたいなぁと思います。

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