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ボツから学ぶ 思考法。

こんにちは!中村です。
今日は「ボツから学ぶ」というテーマで書いていこうと思います。
皆さま、よろしくお願いします。

長年こういう仕事をしていると、
まあ山のような「ボツ企画」というものが出来上がるわけです。
もともと私は 店舗ビジネスの業態開発とか繁盛化を仕事にしていて、その道では一時期 業界誌の執筆連載もしていたくらい、そっちの専門家要素が強い仕事をしていたのです。

特に飲食店経営についてはたくさん携わってきました。
今はコロナ禍で、飲食店経営は大きな変革が必要になってきましたが、
私自身、飲食店経営には思い入れが強くて、なんとかならないものかと今でもいろいろ考えているわけです。

私の仕事でいうところの「ボツ」とは、大きく分けて2種類あります。
1つ目は「企画流れ」というボツです。
実際にその企画を運営する顧客が、資金的な理由や人的な理由などで「やりたくてもやれない」と判断したものですね。
これはある意味「仕方ない」と私は思っています。

もう1つは、「私たちの ”別提案” を受け入れられない」という時に生じるボツですね。これ、ちょっとわかりにくいですね(汗)…。できるだけわかりやすく伝え直しますね。

私は仕事の依頼を受けると、いつも一番先にこう聞きます。
どんな効果を出したいですか?」と。
つまり、「いくら売りたい」とか、「何個売りたい」とか、「利益をいくら出したい」とか、「こういう仕組みをつくりたい」とか、
「離職率を◯%減らしたい」とか、「応募者数を◯人にしたい」とか。
私の目標ではなくて顧客が「どうなりたくて依頼しようとしているか」を明確にするのですね。そしてそこを「共通認識」としての「なりたい姿」に設定するわけです。

なぜそれを明確にする必要があるかというと、
結果レベルで「同じ絵」を見て進める必要があるからという点と、
もうひとつは「物理的に難しい要望をする顧客がいるから」なのです。

例えば、よくあるボールペンと ほぼ同じ機能のボールペンを製造販売している中小企業経営者がいるとしましょう。
当然大手メーカーのものほど売れてはいないわけです。しかも価格は大手の同等品よりちょっと高い。それだけ聞くとなかなか厳しいですよね。

そんな彼の要望は
「これをネットを使って毎月100万本売れるようにしてください!」
ということだとします。

これが現状のままでは「物理的に難しい要望」というやつです。

だけど、私たちは 繁盛化のスペシャリスト ですから、
真剣に彼の要望を現実にするための企画を練るわけです。
そして今回の話しで例えると、
何かそのボールペンの優位になる独自の強みをつくろうとするのですね。

そして考えた企画を提案。例えばそれが新しい機能を追加するとか、
新しいデザインと商品名にしてRe発売するとか、ベネフィット主体で新たな告知活動を展開するとか、その経営者が手にしたい結果を得るための具体的な戦略を企画書にまとめるわけです。
その提案を「受け入れられない」となった場合に「ボツ」が生まれるということです。

このパターンは結構ありますね。
変えられない。変化できない。でも結果が欲しい。・・要するに「今のままで結果を大きく変えたい」ということなのでしょう。これは繁盛させられない人の思考パターンで、意外に多いのです。
「変化させること」が重要なのではなくて、「欲しい結果を出すこと」が重要だと考えるから、時に「変化」が必要という論理ですが、
私たちの企画が「変化ありき」にならないようにいつも考えています。

話をもとに戻しましょう。

こうして「ボツ企画」は積もっていきますが、主に顧客側の判断や問題なので私たちは一切口外しないし口外できません。まさにデッドストック(死蔵企画)になってしまうわけです。

でもこのデッドストック(死蔵企画)。まったく無駄かといえばそうではないのですね。
私はそのボツを掘り返して、学びに変える方法をいつも実践しています。

ケーススタディー   「カレー専門店」。

今回の記事のサムネイルに使ったこの「中村カリー」というカレー屋さん。
この「中村」のところが別の名前でしたが、noteではあえて私の苗字の「中村」を使って書いていますのでご了承を。

どんな案件だったか。

この案件は飲食店(実店舗&EC)の業態開発案件です。
立地は名古屋のとある都心型モール。東京でいうとコレドとかグランスタのような感じ。
経営企業は外食中小企業。店舗数は当時20店舗ぐらいだったかな。ほぼ郊外型店舗で都心型出店は初めてでした。

「カレー専門店」というジャンルは決まっていて、メニューも価格もコンセプトもデザイン設定も決まっていない状態でした。
ただ戦略的には 実店舗の複数店舗出店を考えてはおらず、通販で「カレー」を仕掛けることがメインの目的。
それを確立するための直営店舗という位置付けで始まりました。

業態開発における中身はまあいろいろありましたが、総じて順調でした。
キーワードは「名古屋」「手作り・手仕込み」「無添加」「完全国産素材」「創作だけど懐かしさもあるメニュー」「しかも女性の来たい度(期待度)高め」などなど。

この案件は結局「ボツ」になったわけですが、その理由は「物件契約を他社に奪われた」からなので、その業態開発に問題があったわけではありません。
むしろ業態開発はなかなか斬新でおもしろいものでした。売れる予感がしていたし、その会社のメニュー開発力も充分。
いいコンセプト。いいメニュー。いいデザインと、三位一体で進んでいたのです。

でも実現しなかったからこそ。

ここからが本題です。
いくらいい調子で業態開発が進んでいても、実際には「できていない」わけで、今やその店がうまくいったかどうかは分かり得ない。

だからこそ私は、逆にその店が「うまくいかなかったとしたら」をシュミレーションして、考えられる問題点を抽出するようにしています。
まさにそれが「ボツ案から学ぶ」という形のベースです。

ここまで何時間も何十時間もこの業態を繁盛させることを考えて、そして地域をリサーチして、顧客を考え、その顧客を想定してロールモデルを考えて、そして商品力と衛生力とサービスレベル&ホスピタリティレベルとアトモスフィアグレード(空間演出)を徹底的に考え抜いて、
そして集客戦略も販促計画も考え抜いていても、
それがうまくいかない可能性があるのがビジネスです。
どんなビジネスにも「絶対」はないのです。

その結果を「想像する」「イメージする」ことこそが、
このボツ企画ケーススタディのキモです。
想像するだけじゃなく、「失敗する可能性」を考えて、その可能性を引き起こす要因を考えることに意味があるのです。

例えばこのケースの場合、
実際に20代の女性スタッフがこんな問題提起をしました。

女性がおしゃれだと感じる空間は、逆に男性の”入りにくい”を生んで、計画数値の男女客数比 40:60(男:女)という数字は、20:80になるのでは?

もしそうなると、おそらく総客数が減って 目標の売上を20%くらい下回る可能性もありました。

その「想像」が正しいか正しくないかもそれは大事ですが、
それ以上に、
それを考えて「ひとつの定義付け」のヒントにすることがデカい!
それを考えて、想像することそのものがデカい!
実在しないビジネスの結果を考えることそのものがデカい!

そしてその結果、
このボツ企画を考えていた時間やリサーチしたりデザインしたりした時間が
「生きる」ことがデカい!

やはりビジネスとは、
成功を想像できるかどうかが重要です。
うまくいかない可能性を撲滅することが重要です。
「きっとうまくいかないだろうな」と思ってやる仕事はほとんど失敗します。
「成功する」というその姿をいかに想像できるようにするか。
そのために論理は必要でしょう。
そのために戦略が必要でしょう。
そのために分析が必要でしょう。

飲食店の経営者さんは、
お客様に 美味しいものを快適な空間で素敵なサービスの中で楽しんでいただくことをプロとして考えてくれればいい。

では私たちは?
そのビジネスが経営者さんの欲しい結果をもたらせるように
具体的に業態戦略を考えて実際に表現するプロです。だからこそ「ボツ案」を掘り起こして考えてみることに価値があるのですね。

他の仕事でも?

例えばデザイナーとか、ライターとか、
成果物が明確な仕事をしている人で、ある程度事前に「考える」仕事の場合はこの方法を使えると思います。

ただいきなり制作に入る直感的な芸術家タイプの仕事の場合は、
まさにその直感が重要なのでボツはボツにしかならないのかもしれませんが。

ボツをボツで終わらせない。
ボツを考えた時間を有意義にする。
それが可能な仕事であれば、どんな仕事にでも応用できるのではないでしょうか。

#想像することに価値がある

それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう。

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